影山

「影山ー!」

寝起きでぼんやりする頭に、教室に響いた声は嬉しくなかった。

「なんだよ」

見れば案の定クラスのやつがいた。
日向並みのコミュ力の塊。

「日向が「今日部活ちょっと遅れるけどすぐ行くからな!待ってろよ!」って伝えてくれって言ってた」

無駄に似てる物真似は、こいつの影に日向がいるのかと思ったくらいだ。
つーか、

「は?」

日向のくせにバレーより優先するようなことがあんのかよ。

「日直」

ああ、日直な。
ペアの人に迷惑かけるわけにもいかないし、それはしかたねぇか。

「てゆーか寝てた?」
「おう」
「今5時間目終わったところだと思うんだけど」
「寝てた」
「それでテスト大丈夫なのかよー」
「うるせぇ。お前はどうなんだよ」
「寝てない分影山よりは頭いい自信はある」

そう言われて言い返せるわけがない。
事実、寝てる俺と起きてる柏手で今テストをしようもんなら確実に負ける自信がある。ぜってーしねぇけど。

「まぁテストの出来がどっちの方がいいかなんてどうでもいいんだけどさ、赤点は取らないようにしなよ?」
「おう」
「好きなもんがあるやつに限ってそれができなくなるのは定石だからね」

じょーせき?なんだそれ。

「あいにく人に教えられるほど頭よくないからさ、なんとかしなよー」
「ウス」
「でもまずは起きてノート取るところからしなきゃムリか」

授業起きてるとか、それこそ無理だろ。

「毎回授業聞いてもないやつに教えるなんて絶対ヤダもんなー」
「お前に教えてもらわねぇからいい」
「いや、一般的な意見だと思うよ?」

でもそうだな、ノート取ってないと復習もできないか…

「ノート貸してくれ」
「ねぇ今話聞いてた?」
「教えろとは入ってねえだろ?」
「そうじゃなくて…」

なんだ?こいつ。日向より変なやつだな。

「なぁ、ノート」
「わーかったよ!仕方ないなー」

斜め後ろの机から持ってきたノートは、思っていたよりも女子っぽかった。

「汚すなよ?ノートの上で寝るなよ?」

…こいつ…

「なぁ」
「なに」
「俺、お前の名前知らねぇ」
「はあ?!なんてやつだ!知らない人から物借りるって!なんてやつだ!」

なんでこんなテンション高いんだ?大丈夫か?

「いいか?私はお前の斜め後ろにいる柏手鳴子だ!覚えとけ!」
「お?おお…」

なんかスゲー勢いで自己紹介された。

「明日朝イチで返してよ」
「わかった」

あ。俺も自己紹介した方がいいのか?

「おい」
「今度ぁなんだい」
「影山飛雄」
「…知ってるよ。授業中白目向いて寝てることもね」
「んなっ!?」

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