山口
「あちゃー、降ってきたかぁ」
本日は大気が不安定なため、ところによって雨が降るでしょう。そう言ったお姉さんの予報は見事的中していたわけだ。最近よく外してるからと信じなかった私が悪い。お姉さんごめん。
そんなことを思っても雨がやむわけではない。お姉さんを疑って目に見える天気を信じた私には傘なんてものない。これは濡れて帰るしかないかな、なんて思ったときだった。
「あれ?柏手さん?」
山口と月島がいた。いや、来た。
話したことがあるのはもっぱら山口で、正直に言うと月島と話したことなんてない。きっと人見知りなんだろう。だから私の中では、山口とよく一緒にいるなーって印象。あとデカい。
「傘忘れたの?」
「そんな感じ。山口と月島はこれから部活?」
「今日は体育館の点検があるから休みなんだ」
「そっか」
バレー部にも休みはあるんだ。知らなかった。
そんなことを考えてたら、月島は1人で傘を開いて雨の中踏み出した。
「え?」
「山口、僕先に帰るから」
「あ、うん。じゃあね!」
どうしたのかと思う間もなく、月島はさっさと帰ってしまった。傘さすと金髪見えなくなるから、ただのめちゃくちゃ背の高い人になるな。正直ここから見てるだけだったら月島だなんてわかんない。
そんなことより、今日も月島とは話すことなく終わった。なんだ、避けられてるのか?
あ。
「山口、月島と一緒に帰らなくてよかったの?」
「うん。ちょっとよりたいところあるから」
「そうなんだ」
基本的に一緒にいるのをよく見るけど、案外そうでもないのかもしれない。
山口の事だから、よりたいところと言ってもお不良さんみたいな所ではないだろう。勝手なイメージだけど、山口が不良だったらビックリする。
「あのさ、」
「なにー?」
「よかったら一緒に帰る?」
「んー…え?」
今、一緒に帰るって言った?
「でも山口どっかよるところあるんでしょ?」
「急ぎじゃないし、雨降ったらやめようかなーって思ってたくらいだったから」
ちょっと展開に頭がついていかない。
え?なにそれ、それって一緒に帰るってこと?いや、そうだよ。
「季節の変わり目は風邪引きやすいから、そのまま柏手さんが帰るのをただ見てるのも不安だし」
「でも悪いよ」
「明日柏手さんが学校に来なかった方が俺はショックだよ」
えー。そんなめちゃくちゃ仲いいわけでもないのにそんな気にしてもらえるとか、山口気苦労で将来ハゲない?大丈夫?
「山口がハゲたら困るから、お願いします」
「なにそれ」
山口は私の言葉に笑いながら傘を開いた。
背の高い山口に合わせた、私が使ってるよりも大きな傘。
「ちょっと狭いかもしれないけど」
「いれてもらえるだけでも有り難いよ」
「そう?」
「うん。ありがとう」
鞄を前に抱えて山口の隣に並ぶ。
こうして並ぶと、やっぱり山口も身長高いな。
「俺こそ無理矢理っぽくなってごめん」
「山口に謝られることなんてなんにもないよー」
「じゃあありがとう?」
「それもちょっと違くない?」
「うん。俺も思った」
いくら私のものよりも大きいとは言え、たかが傘。傘の下は大きな空間ができるわけでもなく、今だかつてないくらい近い距離に男子がいる。男子と2人だけで歩くのも今回が初めてだけど、不思議と嫌な感じはしない。
それは相手が山口だからなんだろうか。
「大丈夫?濡れてない?」
「山口こそ大丈夫なの?」
「俺は大丈夫!」
「そう?」
いつもより少し高いところからする雨の音、傘の下特有の距離の近さ。女子の友達と2人で帰るのとはちょっと違う。だからといって月島と帰ったとしてももっと気まずくなると思う。
総合的に考えて、山口は近年稀に見る「いい人」ってやつなんだろう。
「インハイあるんだから風邪なんてひいてられないよ!」
「もうすぐだっけ」
「うん」
「平日?」
「そうなんだよね」
「休みだったら応援行けたけどなぁ」
部員じゃなきゃ公休にならないよなぁ。
「え、来てくれるの?」
「知らなかったら行けないけど、知ってて無視はできないでしょ」
知り合いがいなければ知ってても行かないけど、山口とは友達だと思ってるし。
「そっか、そうだよね」
返事を間違えたらしい。
いつも間違えちゃうんだよね。思ったのと逆を選ばないとって思うと、それはそれで間違いだったりするんだけど。
「友達の晴れ舞台は見なきゃ」
大きな舞台に立つような友達は今までいなかった。せっかくならちゃんと応援したい。
「…うん、俺も頑張る」
「当日は行けないけど、応援してるからね」
「ありがとう」
とは言ったけど、応援って何をするんだろう。ポンポンでも作ればいいのか?
…それは違う気がする。
「あ、」
「そっち?」
「うん。ごめんね、送ってもらって」
「気にしないで」
「じゃあありがとう」
「どういたしまして」
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「あちゃー、降ってきたかぁ」
本日は大気が不安定なため、ところによって雨が降るでしょう。そう言ったお姉さんの予報は見事的中していたわけだ。最近よく外してるからと信じなかった私が悪い。お姉さんごめん。
そんなことを思っても雨がやむわけではない。お姉さんを疑って目に見える天気を信じた私には傘なんてものない。これは濡れて帰るしかないかな、なんて思ったときだった。
「あれ?柏手さん?」
山口と月島がいた。いや、来た。
話したことがあるのはもっぱら山口で、正直に言うと月島と話したことなんてない。きっと人見知りなんだろう。だから私の中では、山口とよく一緒にいるなーって印象。あとデカい。
「傘忘れたの?」
「そんな感じ。山口と月島はこれから部活?」
「今日は体育館の点検があるから休みなんだ」
「そっか」
バレー部にも休みはあるんだ。知らなかった。
そんなことを考えてたら、月島は1人で傘を開いて雨の中踏み出した。
「え?」
「山口、僕先に帰るから」
「あ、うん。じゃあね!」
どうしたのかと思う間もなく、月島はさっさと帰ってしまった。傘さすと金髪見えなくなるから、ただのめちゃくちゃ背の高い人になるな。正直ここから見てるだけだったら月島だなんてわかんない。
そんなことより、今日も月島とは話すことなく終わった。なんだ、避けられてるのか?
あ。
「山口、月島と一緒に帰らなくてよかったの?」
「うん。ちょっとよりたいところあるから」
「そうなんだ」
基本的に一緒にいるのをよく見るけど、案外そうでもないのかもしれない。
山口の事だから、よりたいところと言ってもお不良さんみたいな所ではないだろう。勝手なイメージだけど、山口が不良だったらビックリする。
「あのさ、」
「なにー?」
「よかったら一緒に帰る?」
「んー…え?」
今、一緒に帰るって言った?
「でも山口どっかよるところあるんでしょ?」
「急ぎじゃないし、雨降ったらやめようかなーって思ってたくらいだったから」
ちょっと展開に頭がついていかない。
え?なにそれ、それって一緒に帰るってこと?いや、そうだよ。
「季節の変わり目は風邪引きやすいから、そのまま柏手さんが帰るのをただ見てるのも不安だし」
「でも悪いよ」
「明日柏手さんが学校に来なかった方が俺はショックだよ」
えー。そんなめちゃくちゃ仲いいわけでもないのにそんな気にしてもらえるとか、山口気苦労で将来ハゲない?大丈夫?
「山口がハゲたら困るから、お願いします」
「なにそれ」
山口は私の言葉に笑いながら傘を開いた。
背の高い山口に合わせた、私が使ってるよりも大きな傘。
「ちょっと狭いかもしれないけど」
「いれてもらえるだけでも有り難いよ」
「そう?」
「うん。ありがとう」
鞄を前に抱えて山口の隣に並ぶ。
こうして並ぶと、やっぱり山口も身長高いな。
「俺こそ無理矢理っぽくなってごめん」
「山口に謝られることなんてなんにもないよー」
「じゃあありがとう?」
「それもちょっと違くない?」
「うん。俺も思った」
いくら私のものよりも大きいとは言え、たかが傘。傘の下は大きな空間ができるわけでもなく、今だかつてないくらい近い距離に男子がいる。男子と2人だけで歩くのも今回が初めてだけど、不思議と嫌な感じはしない。
それは相手が山口だからなんだろうか。
「大丈夫?濡れてない?」
「山口こそ大丈夫なの?」
「俺は大丈夫!」
「そう?」
いつもより少し高いところからする雨の音、傘の下特有の距離の近さ。女子の友達と2人で帰るのとはちょっと違う。だからといって月島と帰ったとしてももっと気まずくなると思う。
総合的に考えて、山口は近年稀に見る「いい人」ってやつなんだろう。
「インハイあるんだから風邪なんてひいてられないよ!」
「もうすぐだっけ」
「うん」
「平日?」
「そうなんだよね」
「休みだったら応援行けたけどなぁ」
部員じゃなきゃ公休にならないよなぁ。
「え、来てくれるの?」
「知らなかったら行けないけど、知ってて無視はできないでしょ」
知り合いがいなければ知ってても行かないけど、山口とは友達だと思ってるし。
「そっか、そうだよね」
返事を間違えたらしい。
いつも間違えちゃうんだよね。思ったのと逆を選ばないとって思うと、それはそれで間違いだったりするんだけど。
「友達の晴れ舞台は見なきゃ」
大きな舞台に立つような友達は今までいなかった。せっかくならちゃんと応援したい。
「…うん、俺も頑張る」
「当日は行けないけど、応援してるからね」
「ありがとう」
とは言ったけど、応援って何をするんだろう。ポンポンでも作ればいいのか?
…それは違う気がする。
「あ、」
「そっち?」
「うん。ごめんね、送ってもらって」
「気にしないで」
「じゃあありがとう」
「どういたしまして」