金田一

雨は弱まることなく振り続けてる。ものすごい豪雨って訳ではないけど、霧雨みたいなかわいいものでもない。いや、雨にかわいいもなにもないけど。

「あれ?金田一?」
「…柏手か?」

中学の時の同級生がいた。

「久しぶりー!また背伸びた?」
「いや、それはわかんねぇ」

高校はどっか部活の強いとこに行ってたはず。
正直な話、金田一とは別に仲がいいわけじゃなかった。同じクラスだから話すし、クラスが離れれば話さなくなるような関係。友達は金田一とよく一緒にいる人が好きだった気がする。

「柏手の家ってこっちだったのか?」
「いや、なんか引っ越した」
「スゲー短距離じゃね?」
「うん。中学の学区内で引っ越しとか別にいらなくない?って思った」
「だよな」
「あ、金田一どっち?」
「こっち」
「じゃあ途中まで一緒に帰ろー」
「おう」

雨の中立ち話なんてナンセンス。どうせなら歩きながらの方がいいと思って2人で歩き始める。

「で?学校どうよ」
「部活しんどい」
「そっかー」
「柏手は?」
「通学時間長すぎつらい」
「え」
「引っ越したら遠くなったんだよぉ」
「マジか…」

まぁバス停遠くなったってだけなんだけどね。バス停までの距離が大事なんだよ。逃したら電車間に合わなくなるからね。

「無理すんなよ」
「え?」
「柏手体育苦手だったろ?」
「…よく覚えてたね」
「体育祭で派手に転んで保健室に担ぎ込まれたの見たらな」

あれか、なんてぼんやり思い出した。
確かに体育祭で転んで手のひらと膝と肘をおもいっきり擦りむいて血が止まらなくなったことがあった。

「傷自体は大したことなかったんだけどねぇ」
「あれだけあっちこっち血まみれにしてたらビビるって」
「だよねー」

しっかし金田一は話しやすいな。

「ねぇねぇ、アドレス教えてよ」
「は?」
「なんか金田一と話すの思ったより楽しい」
「どう言うことだよ」
「他校のこととか部活のこととか聞きたい」
「俺が何してるのか知ってるのか?」
「知らない」
「ぶはっ!」

なんだなんだ、笑われた。

「え、なんかごめん。教えたくなかったら私はおさらばするけど」
「いや、そうじゃねえけど、柏手も思ったより面白いやつなんだな」

ほめられてるのか微妙なところだな。しかし私は気にしない。つまんないよりいいじゃないか!

「赤外線?」
「あ、私赤外線ない」
「マジかよ」
「打つから教えてー」
「片手で打てねーべ?俺入れるから教えて」
「おっけー」

雨の中でアドレス交換とか、はたから見たらちょっと妙に見えるのかな。

「じゃあ送るぞ」
「おーう…きーたー!」
「問題なさそうだな」
「うん」

まさか卒業してからアドレス交換するとは思わなかった。これから追加される金田一のアドレスを見るとにやける。

「バレーやってる」
「なにが?」
「部活」

なんのことかと思ったら部活のことか。

「白いタイツ?」
「は?」

え?違うの?

「バレーボールの方な」
「あ、そっちか」
「俺がそんなんやってても気持ち悪いだろ」
「いや、身長あるし舞台映えしそう」
「そういうのは国見の方が見た目いいだろ」
「へー…」

それが誰かわかんないけど、金田一は本気で思ってるらしい。すっごい嫌そうな顔してる。
バレーに詳しくない私が金田一にあれこれ聞いたり、授業の進み具合を聞かれたり、ごく普通な話をしたと思う。

「うちこっち」
「じゃあここまでか」
「うん。後でメールするね」
「おう」

もしかしたら、金田一の家ってめっちゃ近いのかも。後で聞いてみよう。

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