澤村
男子バレー部は、まだ引退しないらしい。引退した女子バレー部や、他の男子が言ってたのを聞いた。先生にも止められてたらしい。これはマネージャーの清水さんが引退するように言われてたのを、本当に偶然聞いてしまった。その時の清水さんは、とてもしっかりした声で引退しないと言ってた。
帰宅部の私はこっそり応援することしかできなかった。引退しないんだから、これから本格化してくる受験勉強だって大変だろう。でも、その大変な道を男子バレー部のみんなは選んだ。
私に応援されてもなんとも思わないかもしれない。なんの助けにもならないかもしれない。それでも、頑張ってる人を応援したいと思ってしまう。
「あれ…誰かに用事?」
だけど、これはちょっとやり過ぎたかな。
「えっと、用事と言うか…」
清水さんに渡してそのまま帰ればいいと思って、考えなしに体育館に来たのがいけなかった。
遠目に見るのと全然違う。清水さん凄い美人。噂よりも美人だよ。なんかいい匂いもする。あ、そうじゃなくて、早くこれ渡さなきゃ。じゃないと清水さんが部活に戻れない。でもいきなりこんなの持ってきたら迷惑だったかな。
「清水、次の練習…っと、すまん、お客さんか?」
なんて、軽いパニックになってたら、澤村くんが来た。どうしよう、迷惑かけちゃった。
「なんか、用事みたい」
「誰か呼ぶか?」
「えっと、あの、その」
あ、ちょっと待って。落ち着いて。なんでか涙が出てきた。
「大丈夫、落ち着いて」
清水さんにそう言われるけど、清水さんみたいな美人さんに言われても全然落ち着けない。でも泣いても意味がわからない。むしろなんで涙が出てきたんだろう。
とりあえず、落ち着こう。
「あの、引退しないって聞いて、応援したいなと思って」
「うん」
「でも私、部活したことなくて、なにしたらいいかわからなくて」
「うん」
「聞いたら差し入れしたらって言われたから、」
「持ってきてくれたの?」
小さい子みたいになっちゃったけど、清水さんは根気強く待って聞いてくれた。
美人さんで優しいってそれはもう女神だよ。
「だって、澤村」
「え、あ!ありがとな」
「なに、緊張してる?」
「清水!」
澤村くんも、緊張とかするの?
たいして仲良くもない私が見たところで、何がどう違うのか全くわからない。
「いや、差し入れなんて合宿先でされたくらいだろ?だからなんと言うか、嬉しいもんだな」
喜んでもらえたなら、いいや。
「あっあの、これ…!」
モタモタしてる場合じゃなかった!さっと渡してさっと帰るつもりだったから、もしかしたらダメになってるかもしれない。
「…あ」
「ご、ごめんなさい」
「ん?どうした?」
「これ、アイス」
「え」
「ごめんなさい!」
「お前らストップ!一旦休憩!」
え、勝手に止めていいの?監督さんとかいるんじゃないの?
「差し入れもらったぞー!」
「大丈夫、今日は私達しかいないから」
「そうなんだ…」
澤村くんの言葉でみんなが集まってくる。
「はい!お礼!」
澤村くんの号令でみんなが一斉に声をかけてくれたけど、ビックリして清水さんの後ろに入っちゃった。あ、もう1人女の子いた。
「あの、アイス溶けちゃったかも…」
「食べやすくていーべ。ほらお前ら、好きなの持ってけー。お礼忘れんなよー」
男の子って凄い。
代わる代わるお礼を口にしながら、アイスがあっという間に消えていく。
「本当にありがとな」
澤村くんもアイスを手に話しかけてくれた。
「私なんかが応援しても迷惑かなと思ったけど、なにか力になりたくて」
「迷惑なんてそんなこと、まったくないよ」
澤村くんの声は、今まで聞いたどんな男子の声よりも優しかった。
「応援されて困ることなんて少しもないよ」
「そうなの?」
「例え知らない人に応援されたとしても嬉しいもんなんだよ」
「そっか」
「それが同じ学校のやつなら尚更だ」
よかった。迷惑になってなくてよかった。
「今度は試合も見に来てな」
「うん、見に行きたい」
「今度は全国行くから」
頑張る人は、どうして眩しい。
「柏手も無理するんじゃないよ」
「うん…え?」
「ゴミどーする?」
「あ、私もって帰るよ」
「大丈夫、こっちで捨てる」
清水さんの言葉に固まった。事前に声をかけることなく突然持ってきてモタモタして少し溶けたアイスを差し入れて、挙げ句ゴミを任せるってどうなんだろう。ここは回収して帰るべきなんじゃないかな?そもそも清水さんに任せるってなんか申し訳なさすぎる。いや、誰に対しても同じなんだけど。
「大丈夫」
「だって。清水に任せなさい」
申し訳ないけど、ここでまたいろいろ考えるとそれこそ迷惑になっちゃう。申し訳ないと思いつつ、お言葉に甘えることにした。
「ついでだし練習見ていくか?」
「集中乱しちゃ悪いから、今日は帰る、ます」
「そうか、今度はゆっくり見ていってな」
「うん」
次ここに来るときは、今度はちゃんと計画的に来よう。
そう何度も顔を出せるものじゃないけど、同じ間違いはきっとしない。
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男子バレー部は、まだ引退しないらしい。引退した女子バレー部や、他の男子が言ってたのを聞いた。先生にも止められてたらしい。これはマネージャーの清水さんが引退するように言われてたのを、本当に偶然聞いてしまった。その時の清水さんは、とてもしっかりした声で引退しないと言ってた。
帰宅部の私はこっそり応援することしかできなかった。引退しないんだから、これから本格化してくる受験勉強だって大変だろう。でも、その大変な道を男子バレー部のみんなは選んだ。
私に応援されてもなんとも思わないかもしれない。なんの助けにもならないかもしれない。それでも、頑張ってる人を応援したいと思ってしまう。
「あれ…誰かに用事?」
だけど、これはちょっとやり過ぎたかな。
「えっと、用事と言うか…」
清水さんに渡してそのまま帰ればいいと思って、考えなしに体育館に来たのがいけなかった。
遠目に見るのと全然違う。清水さん凄い美人。噂よりも美人だよ。なんかいい匂いもする。あ、そうじゃなくて、早くこれ渡さなきゃ。じゃないと清水さんが部活に戻れない。でもいきなりこんなの持ってきたら迷惑だったかな。
「清水、次の練習…っと、すまん、お客さんか?」
なんて、軽いパニックになってたら、澤村くんが来た。どうしよう、迷惑かけちゃった。
「なんか、用事みたい」
「誰か呼ぶか?」
「えっと、あの、その」
あ、ちょっと待って。落ち着いて。なんでか涙が出てきた。
「大丈夫、落ち着いて」
清水さんにそう言われるけど、清水さんみたいな美人さんに言われても全然落ち着けない。でも泣いても意味がわからない。むしろなんで涙が出てきたんだろう。
とりあえず、落ち着こう。
「あの、引退しないって聞いて、応援したいなと思って」
「うん」
「でも私、部活したことなくて、なにしたらいいかわからなくて」
「うん」
「聞いたら差し入れしたらって言われたから、」
「持ってきてくれたの?」
小さい子みたいになっちゃったけど、清水さんは根気強く待って聞いてくれた。
美人さんで優しいってそれはもう女神だよ。
「だって、澤村」
「え、あ!ありがとな」
「なに、緊張してる?」
「清水!」
澤村くんも、緊張とかするの?
たいして仲良くもない私が見たところで、何がどう違うのか全くわからない。
「いや、差し入れなんて合宿先でされたくらいだろ?だからなんと言うか、嬉しいもんだな」
喜んでもらえたなら、いいや。
「あっあの、これ…!」
モタモタしてる場合じゃなかった!さっと渡してさっと帰るつもりだったから、もしかしたらダメになってるかもしれない。
「…あ」
「ご、ごめんなさい」
「ん?どうした?」
「これ、アイス」
「え」
「ごめんなさい!」
「お前らストップ!一旦休憩!」
え、勝手に止めていいの?監督さんとかいるんじゃないの?
「差し入れもらったぞー!」
「大丈夫、今日は私達しかいないから」
「そうなんだ…」
澤村くんの言葉でみんなが集まってくる。
「はい!お礼!」
澤村くんの号令でみんなが一斉に声をかけてくれたけど、ビックリして清水さんの後ろに入っちゃった。あ、もう1人女の子いた。
「あの、アイス溶けちゃったかも…」
「食べやすくていーべ。ほらお前ら、好きなの持ってけー。お礼忘れんなよー」
男の子って凄い。
代わる代わるお礼を口にしながら、アイスがあっという間に消えていく。
「本当にありがとな」
澤村くんもアイスを手に話しかけてくれた。
「私なんかが応援しても迷惑かなと思ったけど、なにか力になりたくて」
「迷惑なんてそんなこと、まったくないよ」
澤村くんの声は、今まで聞いたどんな男子の声よりも優しかった。
「応援されて困ることなんて少しもないよ」
「そうなの?」
「例え知らない人に応援されたとしても嬉しいもんなんだよ」
「そっか」
「それが同じ学校のやつなら尚更だ」
よかった。迷惑になってなくてよかった。
「今度は試合も見に来てな」
「うん、見に行きたい」
「今度は全国行くから」
頑張る人は、どうして眩しい。
「柏手も無理するんじゃないよ」
「うん…え?」
「ゴミどーする?」
「あ、私もって帰るよ」
「大丈夫、こっちで捨てる」
清水さんの言葉に固まった。事前に声をかけることなく突然持ってきてモタモタして少し溶けたアイスを差し入れて、挙げ句ゴミを任せるってどうなんだろう。ここは回収して帰るべきなんじゃないかな?そもそも清水さんに任せるってなんか申し訳なさすぎる。いや、誰に対しても同じなんだけど。
「大丈夫」
「だって。清水に任せなさい」
申し訳ないけど、ここでまたいろいろ考えるとそれこそ迷惑になっちゃう。申し訳ないと思いつつ、お言葉に甘えることにした。
「ついでだし練習見ていくか?」
「集中乱しちゃ悪いから、今日は帰る、ます」
「そうか、今度はゆっくり見ていってな」
「うん」
次ここに来るときは、今度はちゃんと計画的に来よう。
そう何度も顔を出せるものじゃないけど、同じ間違いはきっとしない。