木葉

「木葉ーちょっと聞きたいことあるんだけどー」

たまに、よりも多少頻繁に木葉には女子が訪ねる。それが俺と同じクラスの柏手さん。

「はぁ?勉強なんて教えらんねぇよ」
「数学はできるでしょ」

どうやら木葉とは去年まで同じクラスだったらしい。偏見が生まれそうな言い方だけど、いい意味で女子っぽくなくて付き合いやすい子。
だからかな、木葉も邪険にはできないんだろうね。

「人に教えられるほどできねぇよ」
「いいから、ここ!」
「あー?ああ、ここなら…」

ほら、なんだかんだで教えてあげるんだよねぇ。めちゃくちゃ距離が近いのは、たぶんお互い気付いてない。

「んー?」
「それも同じ。この公式はめ込むんだよ」
「え、じゃあさ…」
「そーそー」
「この、?!」
「っ!わ、悪いっ」

解けたらしい柏手さんがちょっと嬉しそうに木葉を見たんだけど、2人はその時ようやく距離感に気付いたらしい。飛び上がりはしなかったけど、その勢いでちょっと距離を取ってた。

あーあ、だから近いんじゃないって思ったんだよ。

「だ、大丈夫。ありがとね!」
「おう」

真っ赤な顔をして文字通り逃げるように帰っていった柏手さんと、それを見送る木葉がちょっと面白い。
見てるこっちが焦れったいよねぇ。

「なぁ木葉、もう言っちまえよ」
「なにをだよ」
「好きなんだろ?柏手のこと」
「はぁ!?」

…小見やんはもうちょっとオブラートに包んであげようね。

「見てるこっちが痒いんだよ」
「別に柏手のことなんてなんとも」
「思ってなくねぇだろ」
「っ…」

なにかと器用な木葉だから、付き合ったりとかその過程とかもスマートに進められそうだなと勝手に思ってた。だけどそうでもなかったらしい。

「柏手もまんざらでもないと思うけどなぁ」
「わかんねぇだろ、そんなの」

隠しきれないと思ったのか。思ったよりも早く認めた木葉は、さっきより落ち着いたもののまだ顔が赤い。

「猿もそう思うよな?」
「え、そうだねぇ」

誰とでも仲がいい柏手さんだけど、木葉ほど近くにいる人は見たことがない。

「そうかもね」
「猿もやめろそういうの!」
「だってそう思ったから」
「だよな!」

柏手さんがどう思ってるかわからないから無責任なことは言えないけど、少なくとも周りの男子よりも木葉の方が距離が近い。それは、そういうことでいいんじゃないのかな?

「まぁ木葉にその気がないなら気にしなくてもいいんじゃない?」
「まぁ当人同士の問題だしなー」

小見やんがそう言ったことで話は1度なくなった。
俺と小見やんが別々に、こっそり柏手さんに話しかけに言って木葉に怒られるのは、また次の機会に。

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