作並
エマージェンシーコールは、どこに出したらいいんだろうか。
「柏手さんどうしたの?」
「…なんでもないよ」
自業自得なんですけどね、ええわかってますとも。
「なにもなかったらそんな顔色しないよ」
「え、顔色悪い?」
「うん、真っ白」
あー、貧血気味になってるのかな。
「僕でよかったら話聞くよ?」
「話せば長くなるんだけど、」
「うん」
いや、全然長くないな。まぁいいか。
「今日の朝、寝坊したことから始まるの」
「そうなの?」
「もうそれはもうギリギリに起きたから朝の準備するだけで精一杯でね、朝ごはん食べられなかったの」
「そっか」
「学校に着いてから、お弁当忘れたことに気付いたの」
「そうなの?」
「しかも昨日の夜コンビニに行った時お財布出したから、鞄の中にお財布がなかったの」
「え!?じゃあまだ食べてないの?!」
「うん」
私のこんな自業自得な話を聞いて慌ててくれるんだから、作並はどこまで優しいんだろう。道でおばあちゃんが困ってたら迷わず助けられる人だろうな。
「え、ど、どうしよう。お昼食べないと死んじゃうよ!?」
「いや、1日食べないくらいじゃ死なないよ」
人間水だけあれば3日は生きられるって、昔テレビで言ってた。
「ダメだよ!今日は実習あったからちゃんと朝食べて来た僕でもお腹すいたのに!」
空腹をごまかすように水を飲んでるから盛大に鳴きはしないものの、いつお腹が合唱を始めてもおかしくない具合ではある。
「ちょっと待ってね」
作並は鞄の中をゴソゴソしてから、赤くて平たい箱を私に差し出した。
「全然足りないと思うけど、何も食べないよりいいと思うよ」
それは11月のとある日にゲームで使われるあれ。しかも極細。
「いや!悪いよ!作並が食べなよ!」
うちは運動部しかないから、たぶん作並も運動部だろうことは想像に容易い。成長期の運動部男子の食料をもらうなんてそんなそんな!
「部活終わってから食べようかなって思ってただけだから気にしないで」
「じゃあ部活終わってから食べなよ」
「みんなでコンビニ寄ることもあるから、本当に気にしないで」
正直に言うと、もらいたい。だってお腹すいた。でもこう、女子としてダメな気がする。
もらえもらえないを何度か繰り返していたら、作並がお菓子の袋を開けた。
そうだよ、そうして食べればいいんだよ。と言うか作並お腹すいてたんじゃん。断ってよかったー。
なんて考えてたらお菓子が口に飛び込んで、いや、突っ込まれた。
「一緒に食べようよ。その方が美味しいよね」
ちょっと意味がわからない。
「いや、そうしたら作並の食べる分が減っちゃうよ」
「僕がそうしたいの。だから柏手さん、一緒に食べよう?」
口のなかでじんわりとチョコが溶ける。
いくらなんでもくわえているこれを返すなんてことはできないので、仕方ない風を装いつつ口の中に連れ込む。
「手使わないで食べられるんだ。器用だね」
そう言われてちょっと見た目よくなかったかと謝ろうと思った矢先、待ち構えていたかのようにお腹が鳴った。
「やっぱりお腹すいてるよね」
恥ずかしいなんてものじゃない。どうしてくれるんだ私のこの胃は!
「一緒に食べようよ」
もう一度そう言われた私は、降参するしかなかった。1本摘まむと作並がそれはもう嬉しそうな顔をするから、顔が赤くなったのが自分でもわかった。
交代で少しずつ食べたお菓子だけど、泣きそうになるくらい恥ずかしい思いをしたからか味なんて全然わかんなかった。
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エマージェンシーコールは、どこに出したらいいんだろうか。
「柏手さんどうしたの?」
「…なんでもないよ」
自業自得なんですけどね、ええわかってますとも。
「なにもなかったらそんな顔色しないよ」
「え、顔色悪い?」
「うん、真っ白」
あー、貧血気味になってるのかな。
「僕でよかったら話聞くよ?」
「話せば長くなるんだけど、」
「うん」
いや、全然長くないな。まぁいいか。
「今日の朝、寝坊したことから始まるの」
「そうなの?」
「もうそれはもうギリギリに起きたから朝の準備するだけで精一杯でね、朝ごはん食べられなかったの」
「そっか」
「学校に着いてから、お弁当忘れたことに気付いたの」
「そうなの?」
「しかも昨日の夜コンビニに行った時お財布出したから、鞄の中にお財布がなかったの」
「え!?じゃあまだ食べてないの?!」
「うん」
私のこんな自業自得な話を聞いて慌ててくれるんだから、作並はどこまで優しいんだろう。道でおばあちゃんが困ってたら迷わず助けられる人だろうな。
「え、ど、どうしよう。お昼食べないと死んじゃうよ!?」
「いや、1日食べないくらいじゃ死なないよ」
人間水だけあれば3日は生きられるって、昔テレビで言ってた。
「ダメだよ!今日は実習あったからちゃんと朝食べて来た僕でもお腹すいたのに!」
空腹をごまかすように水を飲んでるから盛大に鳴きはしないものの、いつお腹が合唱を始めてもおかしくない具合ではある。
「ちょっと待ってね」
作並は鞄の中をゴソゴソしてから、赤くて平たい箱を私に差し出した。
「全然足りないと思うけど、何も食べないよりいいと思うよ」
それは11月のとある日にゲームで使われるあれ。しかも極細。
「いや!悪いよ!作並が食べなよ!」
うちは運動部しかないから、たぶん作並も運動部だろうことは想像に容易い。成長期の運動部男子の食料をもらうなんてそんなそんな!
「部活終わってから食べようかなって思ってただけだから気にしないで」
「じゃあ部活終わってから食べなよ」
「みんなでコンビニ寄ることもあるから、本当に気にしないで」
正直に言うと、もらいたい。だってお腹すいた。でもこう、女子としてダメな気がする。
もらえもらえないを何度か繰り返していたら、作並がお菓子の袋を開けた。
そうだよ、そうして食べればいいんだよ。と言うか作並お腹すいてたんじゃん。断ってよかったー。
なんて考えてたらお菓子が口に飛び込んで、いや、突っ込まれた。
「一緒に食べようよ。その方が美味しいよね」
ちょっと意味がわからない。
「いや、そうしたら作並の食べる分が減っちゃうよ」
「僕がそうしたいの。だから柏手さん、一緒に食べよう?」
口のなかでじんわりとチョコが溶ける。
いくらなんでもくわえているこれを返すなんてことはできないので、仕方ない風を装いつつ口の中に連れ込む。
「手使わないで食べられるんだ。器用だね」
そう言われてちょっと見た目よくなかったかと謝ろうと思った矢先、待ち構えていたかのようにお腹が鳴った。
「やっぱりお腹すいてるよね」
恥ずかしいなんてものじゃない。どうしてくれるんだ私のこの胃は!
「一緒に食べようよ」
もう一度そう言われた私は、降参するしかなかった。1本摘まむと作並がそれはもう嬉しそうな顔をするから、顔が赤くなったのが自分でもわかった。
交代で少しずつ食べたお菓子だけど、泣きそうになるくらい恥ずかしい思いをしたからか味なんて全然わかんなかった。