「おはよー」
「おはよう…」

登校してきた柏手さんに返事をしたとき、いつもと全然違う人に見えてびっくりした。

「どうしたの?風邪?」

いつもなら綺麗に結ばれてる髪は結んではあるけど邪魔にならない程度に緩い。マスクのせいで顔の3分の2が隠れてるし、その上に珍しく乗ってる眼鏡は呼吸に合わせて曇ってる。

「大丈夫?」
「うん、薬飲んだからダイジョブ」

そう言われても喉が痛むのか声は細いし、ほとんど隠れてるのにわかる程顔を赤くしてたら心配にもなるよ。

「ここのところ暖かくなったり寒くなったりしてたでしょ?雨も降ったし」
「寒暖差に負けちゃったんだ」
「うん」

昼間は暖かいのに夜になると途端に冷え込むから体調を崩す人がいそうだなと思ってたら、まさか柏手さんが体調崩してたと思わなかったよ。

「熱あるの?」
「そんなにないよ、頭痛が酷いだけ」

それ熱あるってことだし、頭が痛いなら学校で頭使ったりしないで休んでた方がよかったんじゃないかな?

「あ、大丈夫!渡に移さないように気を付けるから安心して!」
「え?」
「冬に大会あるんだよね?たしか」
「うん」
「風邪引いたら試合出れないもんね」

それはそうなんだけど、

「そんな心配するくらいならちゃんと休んで」
「…ごめん」
「無理して倒れたりしたら大変でしょ」
「大丈夫だよ、そんなに熱ないし」
「でも熱があることに変わりないよね」
「…はい」

違う、そんなことが言いたい訳じゃない。

「柏手さん、俺は怒ってるわけじゃないんだ」
「うん」
「倒れるんじゃないかって心配なんだよ」
「さすがに倒れたりしないよ」

そう言っても、教室についてもまだコートをしっかり着込んでたら心配するよ。

「辛かったら教えてね」
「いいよ、」
「隣の席なんだから頼って」
「でも悪いし」
「倒れた方が大変だと思うけど」

ちょっと意地悪な言い方だったかな。
でも柏手さんもどっちの方がいいかわかったらしい。

「どうにもならなくなったら言うね」
「どうにもならなくなる前に教えてね」
「…はい」

そうは言っても、素直に頼ってくれないんだろうな。
本当に倒れる前に助けてあげられるのは、隣の席の俺しかいないのかもしれない。柏手さんの友達も心配してるだろうから気にかけすぎるのもよくないかもしれないけど、今日は少しだけ注意して柏手さんのことを見ててあげなくちゃ。

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