月島&山口
バタバタと走る音がして山口と2人振り返ったら、見たくない光景が飛び込んできた。
「え、柏手さん!?」
「2人とも動かないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
どうやらそのまま突っ込んでくるつもりらしい。
そんなことを言われても動くに決まってるデショ。避けないと間違いなく柏手さんに轢かれるんだから。そもそもどうして坂道を全力で駆け降りることになったのかわからない。
考えるだけムダだから僕は半歩引いて避けたけど、山口はテンパったままワタワタしてる。そうなれば当然のように突っ込んできた柏手さんに腕をとられて、あげく引き摺られそうになった。
「ぐえええ!!」
山口が怪我したら困るから柏手さんのリュックを掴んで無理矢理勢いを殺したけど、蛙を潰した時よりひどいだろう声が聞こえた。
「た、助かった…ありがとうツッキー」
「今ケガしたら困るのは山口デショ」
「ちょっとツッキー!首絞まったんだけど!」
「突っ込んでくる柏手さんが悪いんだから文句は受け付けないよ。あとツッキーやめて」
「突っ込んだのはごめん!ツッキーはやめない!」
いや、やめろよ。
「2人が歩いてんの見つけてさ、引き留めなきゃーって思って走ったら勢い乗っちゃって止まれなくなった!」
意外なことにあれだけ勢いよく駆け降りてきたのに息は少しも乱れてない。
部活でもなければ冬休みの今日学校になんて来てないだろうけど、バレー部以外の部活が学校であったのかいまいちよくわからない。
そもそも柏手さん運動部だったの?
「俺達になにか用事でもあった?」
「まぁ2人は最後なんだけどね」
「最後ってなに」
「えーっとね、ああ。あったあった」
走ってる間に鞄の中が荒れたんだろう。なにか探すと、思っていたより綺麗なパッケージが出てきた。
「なにこれ」
パッケージっと言っても簡単な包装が施された、ちょっとしたお菓子の詰め合わせ。
「クリスマスだからさ、プレゼントだよ!」
「わ!ありがとう!」
「女子ってこういうイベント本当に好きだよね」
「文句言うなら返して」
「やだ」
不満そうに手を出してくる柏手さんの手が絶対届かない頭上にお菓子を掲げると、存外あっさりと諦めた。
「全国大会もうすぐなんだべ?風邪ひかないように気を付けてね」
「うん」
「ケガもしないようにね!」
「近所迷惑だからちょっと静かにして」
「東京まで応援行くからね」
「ホントに?」
「物好き」
「だってすごいべ!そのまま優勝したら自慢しまくる!」
一瞬静かになるけど、また忘れたように騒ぎ始めるんだからどうしようもない。
日が暮れてるのに気にしないで騒げるなんて柏手さんもバカなんだろうか。そのくせに心配の仕方が近所のオバさん臭い。
「柏手さんも風邪引かないでね」
「大丈夫!風邪引いたことないから!」
それはそれでどうなんだろう。
「あー…そっか、」
山口ですらかける言葉をなくしてるのはおもしろいかな。
「じゃあ帰るね!おつかれ!」
「1人で帰るの?」
「うん」
「暗いんだから危ないよ」
「大丈夫!お兄ちゃんそこまで来てるから、2人が一緒に来たら部活できなくなっちゃうよ」
なにそれ。
「じゃあねー!バイバーイ!」
「うん、バイバイ…」
柏手さんは謎の言葉を残して、それこそ風のように暗闇の中に溶けていった。
「ツッキー、部活できなくなるってなにかな…」
「さぁ…」
別に柏手さんのことはどうだっていいけど、少し気になったのは事実。だからといって誰かに聞いたりすることもないだろうけど。
「寒いし帰るよ」
「うん」
なにより、近い大会に向けて体調を万全に整えることが最優先デショ。
(そんな彼女は影山と同じクラス)
(成績は常に赤点ギリギリ)
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バタバタと走る音がして山口と2人振り返ったら、見たくない光景が飛び込んできた。
「え、柏手さん!?」
「2人とも動かないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
どうやらそのまま突っ込んでくるつもりらしい。
そんなことを言われても動くに決まってるデショ。避けないと間違いなく柏手さんに轢かれるんだから。そもそもどうして坂道を全力で駆け降りることになったのかわからない。
考えるだけムダだから僕は半歩引いて避けたけど、山口はテンパったままワタワタしてる。そうなれば当然のように突っ込んできた柏手さんに腕をとられて、あげく引き摺られそうになった。
「ぐえええ!!」
山口が怪我したら困るから柏手さんのリュックを掴んで無理矢理勢いを殺したけど、蛙を潰した時よりひどいだろう声が聞こえた。
「た、助かった…ありがとうツッキー」
「今ケガしたら困るのは山口デショ」
「ちょっとツッキー!首絞まったんだけど!」
「突っ込んでくる柏手さんが悪いんだから文句は受け付けないよ。あとツッキーやめて」
「突っ込んだのはごめん!ツッキーはやめない!」
いや、やめろよ。
「2人が歩いてんの見つけてさ、引き留めなきゃーって思って走ったら勢い乗っちゃって止まれなくなった!」
意外なことにあれだけ勢いよく駆け降りてきたのに息は少しも乱れてない。
部活でもなければ冬休みの今日学校になんて来てないだろうけど、バレー部以外の部活が学校であったのかいまいちよくわからない。
そもそも柏手さん運動部だったの?
「俺達になにか用事でもあった?」
「まぁ2人は最後なんだけどね」
「最後ってなに」
「えーっとね、ああ。あったあった」
走ってる間に鞄の中が荒れたんだろう。なにか探すと、思っていたより綺麗なパッケージが出てきた。
「なにこれ」
パッケージっと言っても簡単な包装が施された、ちょっとしたお菓子の詰め合わせ。
「クリスマスだからさ、プレゼントだよ!」
「わ!ありがとう!」
「女子ってこういうイベント本当に好きだよね」
「文句言うなら返して」
「やだ」
不満そうに手を出してくる柏手さんの手が絶対届かない頭上にお菓子を掲げると、存外あっさりと諦めた。
「全国大会もうすぐなんだべ?風邪ひかないように気を付けてね」
「うん」
「ケガもしないようにね!」
「近所迷惑だからちょっと静かにして」
「東京まで応援行くからね」
「ホントに?」
「物好き」
「だってすごいべ!そのまま優勝したら自慢しまくる!」
一瞬静かになるけど、また忘れたように騒ぎ始めるんだからどうしようもない。
日が暮れてるのに気にしないで騒げるなんて柏手さんもバカなんだろうか。そのくせに心配の仕方が近所のオバさん臭い。
「柏手さんも風邪引かないでね」
「大丈夫!風邪引いたことないから!」
それはそれでどうなんだろう。
「あー…そっか、」
山口ですらかける言葉をなくしてるのはおもしろいかな。
「じゃあ帰るね!おつかれ!」
「1人で帰るの?」
「うん」
「暗いんだから危ないよ」
「大丈夫!お兄ちゃんそこまで来てるから、2人が一緒に来たら部活できなくなっちゃうよ」
なにそれ。
「じゃあねー!バイバーイ!」
「うん、バイバイ…」
柏手さんは謎の言葉を残して、それこそ風のように暗闇の中に溶けていった。
「ツッキー、部活できなくなるってなにかな…」
「さぁ…」
別に柏手さんのことはどうだっていいけど、少し気になったのは事実。だからといって誰かに聞いたりすることもないだろうけど。
「寒いし帰るよ」
「うん」
なにより、近い大会に向けて体調を万全に整えることが最優先デショ。
(そんな彼女は影山と同じクラス)
(成績は常に赤点ギリギリ)