私が希望大学を伝えた時、家族からは猛反対された。なぜなら、その大学が三門市にあったからだ。三門市といえば、ネイバーとか言うわけのわからない怪物が襲ってくる場所。ネイバー専門の対抗組織・通称ボーダーが存在するとは言っても、両親の心配も最もだし、私自身不安が全くないわけではなかった。
それでもその大学に出願したのは、残念ながら特別な理由があるわけでもない。一つは私の偏差値と希望学部の都合でちょうどよかったから。もう一つは、三門市が行う移住支援の一環として、一人暮らしをする大学生に対する保障があったからだ。大学生になったら絶対一人暮らしをしたいと考えていた私にとって、市からも支援を受けられるというのはとても魅力的だった。実家からもそう遠くなく、帰省するにも交通の便が悪くない三門市はいろんな意味で都合がよかったのだ。
結果として、私は無事に大学に受かった。そうなると今度は新生活の準備が必要で、未だ心配する家族を引き連れて三門市へ。百聞は一見に如かずと言われるとおり、ボーダー本部の建物は想像していたより大きくて、爆音は耳を劈くほどでもなく、閃光も目も眩むほどというわけでもない。家族も少しは安心したようで、念願の一人暮らしのための物件を決め、引っ越し業者との兼ね合いでどうにか入学式の前には引っ越しの手はずを整えた。いよいよ私は新天地へと旅立ったのだ。
無事に引っ越した初日は一人だけの家でのびのびと過ごせた反面、夜になっても時たま響いてくる地響きが……ちょっと怖かった。数日後には入学式が行われ、オリエンテーションでは大学構内にあるシェルターはもちろん、三門市内に点在している他の避難用シェルターの案内まで。念入りに緊急避難先を指導する様子にちょっとだけ不安になったり、夜の地響きでなかなか寝付けずホームシックになりかけた。けれど新しい環境、友達と新生活の慌ただしさは次第に充実したものなり、いつの間にか私はすっかりと三門市でのキャンパスライフを楽しんでいた。
そう新生活に慣れたからと、次に探したのがアルバイト先だ。それなりに仕送りを強請ったとは言え、少しでも稼がないと遊ぶお金が出てこない。高校時代は飲食店のバイトを経験したから、ちょっとだけ趣向を変えてコンビニバイトに決めた。コンビニだったら、万が一ネイバーの被害にあって建物が壊されてしまっても違う店舗で採ってもらえるかなぁ、なんて考えたからだ。
やっぱりここでも初出勤日に避難ルートの確認があった。バイト内容自体はマニュアルがしっかりしていたし、高校時代のバイト経験もあってレジ打ちにも大して困らなかった。店長は優しいし、パートさんも優しいおばちゃんが多く、同じ大学の先輩もいたりと居心地の良い場所になった。
私のキャンパスライフは順風満帆。講義を終えた私はいつものように、通いなれた道を歩いてバイト先へと向かうのです。