03

漏れ鍋の二階にある十一号室に滞在して 早数日。暇を持て余したイノリは愛読書(主に漫画類)を片っ端から読んで時間を潰していた。

「あー、ここはキツい。蘇るってわかっててもカカティー先生が死ぬシーンは辛いわ」

今は世界的にも人気となった『NARITA』を読んでいる。何度も読んでいるはずなのに、決まった場面に差し掛かると惜し気も無く涙を零して悲しみに暮れる。気付けば涙と鼻水に塗れたティッシュの山が周りに築かれていた。

「おっと、ゴミ箱はどこだ?」

これこそ紙資源の無駄使いではないだろうか。どこかの自然保護団体から抗議の電話を受けそうだ、なんて思いながら大量のティッシュをせっせと拾ってはゴミ箱に捨てる。

「あ、そうだ」

ティッシュの山を片付けたイノリは急に思い立っていそいそと出掛ける準備に取り掛かった。襟付きの白シャツに黒地のミモレ丈スカートに着替えてローブを羽織る。低めのヒールが付いた赤のグラディエーターサンダルを履いてショルダーバックを斜め掛けにすれば準備は完了。

「おや、今からお出かけですか?」
「うん、買物にね」

酒場で働くウェイターに笑顔で答えて裏庭に出ると杖を取り出した。ゴミ箱の上、左から三番目のレンガを軽く叩いて少し後ろに下がる。

「なんで三番目なんだろ……?」

ふとそんなことを疑問に思って軽く首を傾げる。その間にもレンガは動きを止める事無くアーチ型へと組み上がりダイアゴン横丁へと続く入口ができあがった。懐かしいなァと感慨深い気持ちを抱きながらダイアゴン横丁を行き交う人々の波を縫って店を覗いて回る。

「もう大分痛んでいるし……、うん、買い替え時かな」

今しがた羽織っている暗めの紺色のローブは学生時代から愛用していただけにかなり傷んでいる。丁度いい機会だ。門出の祝いに新しいローブを新調することにした。
ローブを売っている店に入ると暗めの赤い色調を基本にして金糸が所々に施されているローブが目に付いた。それはイノリが所属した『グリフィンドール』のシンボルカラーとよく似ていた。

「不死鳥の騎士団の一員になれるし、不死鳥と言えば『赤』よね」

まさに一目惚れ。他を見ることもなく直ぐにそれを購入することに決めたイノリは、支払いを済ませると早速着替えた。そして、古いローブを店員に渡して「破棄しておいてください」と頼んで店を後にした。

「ついでに杖も新調しようかな。もっと相性が良い杖とか入っているかもしれないし……。あ、あと本も買わなきゃ!」

新たな杖とパーシヴァル・ノーランド著書で最近発刊されたという最新小説『時の魔術 - 空からの使者 -』を購入することにして、イノリは鼻歌混じりにダイアゴン横丁を闊歩した。そして――
フローリシュ・アンド・ブロッツ書店で長居してしまったこともあって疾うに日が沈んで人通りも少なくなった夜道でのこと、オリバンダー杖店にて新しい杖を新調した帰りに見知らぬ男から声を掛けられた。

「イノリ・ヤガミだな?」

日本の平和に浸った生活をしていたイノリは、夜道の一人歩きの危険さをすっかり忘れていた。眉間に皺を寄せてバツの悪い顔を浮かべながらローブのポケットにそっと手を忍ばせる。新調したばかりの杖を握ってゆっくりと振り向いた。

「人違いじゃないですか?」

愛嬌を持って首を少しコテンと倒して答えるイノリに、暗がりの細い路地からぬっと出てきた漆黒のローブを身に纏った男は小さく喉を鳴らして笑った。その声音は妙に粘質的で不快な気持ちにさせるものがあった。

「こっち側につかないか?」
「こっち側? どっち側? あっち側? そっち側?」

あっちこっちと顔を動かして探す素振りを見せて答えるイノリに男はフッと鼻を鳴らした。

「成程、話に聞いていた通りの性格をしているな」
「やだ、なにそれ。凄く気になる」

キャッ、と声を上げて照れ顔を浮かべるイノリに無反応のまま男は言葉を続ける。

「例のあの人が忍の末裔という噂も聞くあなたをご所望だ」

例のあの人――ということは、この男は闇の組織に属する者だ。イノリは途端に笑みを消した。

「残念だけど、日本人だからって誰もが忍の末裔ってわけじゃないよ。それに、私は例のあの人様の側に付く気なんて毛頭ございません」
「希少な『純血』を絶やすには惜しいのだ。我々の側に付けば例のあの人が自ら大事に扱うと仰っておられたのだぞ?」

男は両手を広げて尚も説得を続ける。
迷うことは無い。こっちへ来い――と。

「断るって言ったら……?」

イノリがポツリと呟くと男の手がピクンと動いた。

「どうしても断ると言うのなら――」
「はい、断ります」
「殺すまで! アバダ・ケダブラ(息絶えよ)!」
「エクスペリアームス(武器よ去れ)!!」

男の杖先から死の呪いが放たれ緑色の閃光が迸った。それに対抗してイノリが杖先からは武装解除術が放たれ紅の閃光が迸る。お互いの魔法が激突した瞬間に激しい光が迸って眩む程に景色が白く染まるが直ぐに暗転して暗い夜道の姿へと戻った。眩んだ目を擦りながらイノリが見つめる先には魔法の威力に弾かれて吹き飛んだ男が倒れている姿があった。
希少価値の高い純血の魔法使いだから「大事にしてやるから連れて来い」と言いながらも「歯向かうなら殺せ」と矛盾する命令を出したというのだろうか。例のあの人――つまりヴォルデモートに、イノリは些か不愉快な気持ちを抱いて眉間に皺を寄せた。

「とんだ我儘だ」

一度結んだら結んだ人しか解けないロープをバッグから取り出したイノリは男の腕を縛り上げて拘束した。

「くそ……、貴様を手土産にすれば闇の組織の一員として歓待を受ける計画だったというのに……」
「え? まさか闇の組織に加入したい為だけに私を狙ったってこと?」
「くっ、そうだ……」
「えー…、なにそれ……」
「それだけお前には価値があるということだ!」

男はギリギリと歯軋りをして悔しがった。

「闇の組織の者です宜しく! なんて[D:22099]吐いて襲った結果がこれって……ダサくない?」
「う、五月蠅い!」

いきなりの大物との接触かと思ったのに、緊張感MAXだったというのに、なんて肩透かしだ。秒単位レベルで緊張した時間を返せとイノリは思う。

「もう、いつになれば声が掛かるのよ……。 早く呼んでくれないから妙な通り魔に襲われちゃったじゃない」
「と、通り魔だと!?」

ブツブツと文句を垂れるイノリに男は抗議の声を上げているが無視だ。拘束した男を電灯の鉄柱に括り付けたイノリは近くの店に向かい、店主に魔法警察部隊を呼んでもらって男の身柄を魔法警察部隊に引き渡した。

「あれ、あんたは……」
「んー?」
「イノリ・ヤガミじゃないか!?」

魔法警察部隊の一人がイノリに気付いて嬉しそうに声を上げた。あまりの声量に思わず仰け反ったイノリは眉を顰めた。
さらに、彼の言葉に「なんだって!?」と他の警察部隊の男達が目を見張ってイノリに近付くと「マジもんだ!」と声を上げて次々に声を掛ける。

「純血の魔法族で純然たるジャパニーズ!」
「凄く希少価値が高いって噂に聞いてる!」
「しかも凄く秀でた魔女だって話も聞いてるぞ!」
「「「流石は忍者の末裔!!」」」
「いや、だから、」

違うんですってば――と、戸惑いながら首を振るイノリを他所に目を爛々と輝かせてイノリの手を握った。

「な、なにして――!」
「握手です! 興奮し過ぎて許可も取らずに申し訳無い!」

ブンブンと上下に勢い良く振って彼は言った。

「あ、おれも!」
「おれもお願いします!」

急に始まる路上での握手会。どこのアイドルだよ――と呆れるイノリはされるがままだ。順番にイノリと握手を交わした彼らは、忍者のファンです! と嬉しそうに言ってペコリと礼儀正しくお辞儀をする。そうして「ニンニン!」と忍者ポーズを取る。

「あ、あのね、純日本人だからって必ずしも忍者の末裔ってわけじゃないの。悪いんだけど――」

イノリの言葉に彼らはキョトンとした。だが――

「じゃあサムライだ!」
「ブシドウ精神!」
「まさにそれこそジャパニーズ!」

男達は刀を持って振り回すようなジェスチャーをしてみせた。

「はは……」

イノリは頬を引き攣らせて乾いた声を漏らすことしかできなかった。まさか魔法界でさえも『日本ブーム』が巻き起こっているとは思いもしなかったからだ。
溜息を吐いたイノリは、目を爛々と輝かせる魔法警察部隊に苦笑混じりに手を振って彼らを見送った。疲労感がどっと押し寄せて「疲れた……」と呟いたイノリは、素直に漏れ鍋の宿部屋に戻って寝ることにした。
翌日――
未だに声が掛からないことに痺れを切らしたイノリは、キングズ・クロス駅に向かって九と四分の三番線ホームに立っていた。人気の無い場所を探してバッグから一本の箒を取り出す。それは『ファイアボルト・シュプリーム』という名の最新もので、これもついでに新調したものだ。

「呼ばれないならこっちから行ってやる」

箒に跨るのは久しぶりだ。学生時代にイノリはクィディッチという競技のシーカーを担っていた。その世代において『天才シーカー』と称されて右に出る者がいない程に優れた選手であった。電車に乗ってホグワーツへ行くよりも、こうして箒に乗って勘を取り戻しながら向かった方が良いという考えもあっての行動だ。
昔の血が騒ぐ!
ウキウキと地を蹴って悠々と空を飛ぶと、飛行感覚を直ぐに取り戻してスピードを速めた。複雑な動きも軽々と熟して風を切りながら瞬く間にホグワーツ魔法学校の近郊まで辿り着いた。

「あー、もう、本当、懐かしい」

遠くから徐々に近付いて見えるホグワーツ城に思わず涙が込み上げそうになる。昔と変わらず雄大で美しい佇まい。直ぐ側にある湖面に写る逆さホグワーツ城もまた神秘的で綺麗なものだ。
時期的には長期休みの為、学校に子供達の影は無い。ただ、もうすぐ新学期を迎えることもあってか先生だろうと思われる大人の姿がチラホラ見えた。
校舎の中庭に降りたイノリは、この学校の校長で自分を(強制的に)呼んだダンブルドアがいるであろう校長室を目指した。途中で通路の角を曲がると、土気色の顔に大きな鉤鼻が目に付き、肩まである黒くねっとりとした髪を左右に分けて、重たげな漆黒のローブを纏っている男と出くわした。

「あ、」
「イノリ・ヤガミ」
「セブ、久しぶりー!」

親し気に笑みを浮かべて挨拶をしたイノリだが、男は途端に眉間に皺を寄せて明らかに不機嫌な表情を浮かべた。そして、黒い瞳でギロリとイノリを睨みつける。

「お、お、お久しぶりです、スネイプ先生」

慌てて丁寧に挨拶し直してペコリと頭を下げたイノリだが、スネイプの表情は全く変わらない。

「いつになれば我輩との立場を弁えることを覚えるのかね?」
「うっ……」
「顔を合わせる度に失望させられるのは相変わらずだな」
「もう子供でもないし学生でも無いんだから良いでしょ」
「我輩の教え子であることに変わりは無い」
「それを言ったらその立場というものは一生変わらないよね。まったく陰鬱で堅物なのは相変わらずだこと!」
「我輩の性分だ」
「じゃ、立場を弁えることを覚えないのも私の性分ということで」
「もしヤガミがまだ学生の身であれば追加課題を課して”存分に苦しめてやる”ところだが」
「うあ……、出たよサディスト教師」
「それも我輩の性分だ」
「そんな感じで今も私の可愛い後輩であるグリフィンドール生を虐めてるってわけだ」
「卒業して以来一度もここに顔を出さない者が『可愛い後輩』等と口にするとは愚鈍だと思わんかね?」
「日本でOLをしてたもので」
「マグル好きは相変わらずか。実に滑稽極まりない」
「やだもう、あんまり褒められると照れるじゃない!」
「……」

両手で顔を隠したイノリは「きゃー」と言って喜んだ。
我輩がいつ褒めた? どう捉えても『褒められた』とは言い難いと思うのだが……、とスネイプが不審な目を向けたのは言うまでもない。

「わけのわからんところも相変わらずだ」
「いつまでも変わらないってことは”いつまでも若い”って言われてるみたいで嬉しいです」

満面の笑顔で応えるイノリにスネイプは顔を歪ませた。

「つくづく大したプラス思考だ。よく恥ずかし気も無くそのように自画自賛できるものだ」
「久しぶりに会ったのに歓迎どころかそんな尖った言葉でグサグサやられるとね、プラスに捉えないとこっちまで陰鬱になるからね」

まるで子供の用にあっかんべ[D:12316]と振る舞ったイノリは、スネイプの前から逃げる様に走り出した。スネイプは後を追うことはしなかったが、角を曲がって姿を消すまでその背中を見送った。

「希少な純血種があれでは形無しだな……」

スネイプはポツリと呟いて眉間の皺をより深くした。そして、小さく頭を振って溜息を吐くと踵を返してイノリとは反対の方向へと歩いていった。





校長室に辿り着いたものの蛻の殻で誰もいない。ダンブルドアが戻って来るまでここで待機するか、とソファに座ってバッグから取り出したのは、あの有名な海賊漫画だ。

「何回読んでも泣ける。泣いちゃう」

頁を捲って「はァ……」と溜息を吐く。

「もしこの世界に行けるならコック服の彼が死ぬ前が良いかな。三コマしか登場しないからどういう人物なのか今一つわかんないけど」

独り言ちて持っていた漫画を置くと同じ漫画の別の巻を手に取ってパラパラと開いた。

「あァダメだ。大事な人達を亡くして残された彼らの悲しみは如何許りか! あァ、もう、本当に胸が苦しい!」

頂上戦争終結のシーンを開いて悲しみに暮れたイノリは、バッグから携帯ティッシュを取り出してズビビビッと鼻をかんだ。
漫画を読んで涙目ながら独り言ちるイノリの様子を、校長室に飾られている歴代の校長の肖像画達が見つめながらヒソヒソと話している。

「イノリか、懐かしい子じゃな」
「はて、どうして泣いておるのかのう?」
「相変わらず感情に素直な子ですわね」
「妙な本を持っているな。ジャパニーズの本か?」
「まさか『忍者の書物』では?」
「「「それは是非見てみたい!!」」」
「んなわけないでしょ!? 漫画よ漫画!!」

歴代の校長達にイノリは堪らずクワッと吠えた。イノリが最も敬愛する白ひげ海賊団が登場する場面に物思いに耽っていたのを邪魔されて腹が立ったのかもしれない。日本人=忍者という決めつけ公式もいい加減に止めて欲しいことも相俟って、だ。

忍者の末裔じゃない。
忍者とは関係無い。

これは学生時代から何度も何度も何度も言い続けてきたのだが、見慣れない書物(漫画)を持っていればそれさえも『忍者の書物』と言われると、流石にイノリも辟易するというもの。

「ところでダンブルドア先生は……、あー、そもそも学校にいる?」

本を閉じて溜息混じりに質問した。

「おるよ」
「あ!」

背後から声がして振り向けば、ダンブルドアが長い顎鬚を摩りながら笑みを浮かべていた。

「ダンブルドア先生!」
「えらい早く着いたもんじゃな」
「え、えェ、そのおかげで襲われましたけど」
「なに、本当か? ふむ……、ヴォルデモートもイノリには警戒して」
「手土産品として通り前に」
「――んン、通り魔だと?」

あの妙な男の話と魔法警察部隊からまるでアイドルのような扱いを受けたことを話したイノリは終始不機嫌顔だ。
『純日本人の純血魔法族』というのは、言うなれば滅多に出会うことのない絶滅危惧種のようなもので幻の存在とさえ思われている節がある。そんな貴重な存在に遭ったらミーハー心を擽られて飛び付きたくなるのは仕方が無いことなのかもしれない。あの闇の帝王でさえも『コレクター魂』に火を付けて、希少な純血を守る為と称して幼いイノリを攫おうとして襲った程なのだから――。

ダンブルドアはイノリからそっと視線を外すと溜息を吐いた。

日本の魔法族の術は今でも異質とされるものばかりだ。流石の闇の帝王も苦戦を強いられ連れ去ることができなかった。イノリの両親は闇の帝王との戦いで身命を賭した末に死んでしまったのだが、皮肉にもそれがイノリをより貴重な存在として価値を高める結果に繋がってしまったのである。
闇の帝王ヴォルデモートは実の両親の『仇』である――と同時に、貴重だから特別だと認識して近付いて来る者達を闇の帝王に向ける嫌悪に引けを取らないぐらいに嫌う節がある。
イノリが終始不機嫌なのはその為だ。

「ところで、」
「なんじゃ?」
「不死鳥の騎士団の件なんだけど」
「あァ、そうじゃったな。本部の場所が決まったことを知らせる為に使いを出そうと思っておったんじゃが、まさかイノリがここにおるとは思って無かったのでな」

ダンブルドアは改めてイノリを見据えて答える。本部はロンドン グリモールド・プレイス 十二番地だ――と。
それを聞くや否やイノリは顔色を変えた。驚くような、泣くような、様々な感情が入り混じった何とも言えない複雑な表情を浮かべている。

「まさか……、本当に……?」

ダンブルドアが目を細めてコクリと頷くとイノリは目を見開いてワナワナと震えた。

「ずっとマグルの世界におったから魔法界の情報はとんと疎いんじゃな。時間も余裕がある。この五年の間に起きた出来事を話してやろう」
「是非! お願いします!」
「それに、イノリの土産話も是非とも聞きたいしの」
「え…、土産話……?」
「マグルの世界でどんな生活をしていたかとか、色々あるじゃろう」
「きょ、興味あるの?」
「そりゃあ、大事な教え子の話は聞きたいもんじゃて。それにイノリは特に……孫娘みたいなもんじゃからな」

ダンブルドアはニヤリと笑みを浮かべると軽くウインクをした。そして、机の側にある椅子を引いて腰を掛けた。
とりあえず魔法界の情報を話す――前に、まずイノリがどのような生活をしていたかを話すように促した。イノリは一つ溜息を吐いてゆっくりと話し始めた――のだが。

「本当にどんだけマイペースなんだって話! 杖を突き出してアバダってやりたくなる気持ちがわかるでしょ!?」
「……」

上司ボイル主任に対する不平不満を大いに爆発させて愚痴話を展開してヒートアップして止まらなくなっていた。
おかしい。生活の話どころか、さっきからずーっと上司の愚痴話ばかりではないか。大体『アバダってやる』なんて言葉、初めて聞いたわ――とダンブルドアは遠い目をした。

「ねェ、聞いてる!?」
「聞いとる聞いとる」
「嘘! 今、寝てたでしょ!? 鼻提灯が見えたわよ!」
「わしは愚痴話を聞きたいとは言っとらんのじゃけど……」
「でね、アキノって同僚がいるんだけど――」

あァ、これはいかん。暫く収まりそうにない――と机に頬杖を付いたダンブルドアはひっそり溜息を吐いた。
こうしてイノリの仕事場に対する不満話はこの後も暫く続くのだった。

希少種
*注釈*
『カカティー先生』→『カカシ先生』
『NARITA』→『NARUTO』

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