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月の寮、書斎。

「拓麻さん、あれ読みたい」

「これ?…はい、どうぞ」

拓麻さんの漫画コレクションの中から、読みたい漫画を指差して拓麻さんから受け取る。

「−−ところで霞ちゃん、いっぱいチョコ貰ってたね」

「うん、手に持てる分だけしか受け取れなかったけど…」

目の前に広がる貰ったチョコレート達をちらりと見ながら言う。

「霞ちゃんがくれたチョコも美味しかったよね〜枢?」

「…そうだね」

そういえば、お兄様は私があげたチョコレートをいつの間に食べたんだろう。そんな事を考えながらお兄様の顔をじっと見つめているといつもの優しい笑顔を向けられた。

「…そういえば…風紀の錐生くん今日は顔色が冴えなかったね」

「…仕方ないさ、今は−−」

水が入ったグラスの中に血液錠剤を入れながらお兄様が言う。

「何か知ってるの?」

「…4年前のあの事件から…彼の人生は変わってしまったのだから」

そう言ってお兄様は血液錠剤が溶けた赤い液体の入ったグラスに口を付けた。

「……まぁいいや。僕はもう部屋に行くよ」

拓麻さんは私とお兄様にひらりと手を振って書斎を後にした。拓麻さんの気配が書斎から離れたのを確認して、お兄様へ声を掛ける。

「…零くんが体調悪い理由、私は分かってる」

「…そう。でも今は黙っているんだよ?」

零くんの秘密は理事長と、そして純血種である私とお兄様しか知らない。優姫を傷付けない為に、そしてお兄様を悲しませない為に、私は密かに決意をした。それが実行されるのはきっと、次の日。私は喉の渇きを埋めるように血液錠剤の溶けた水を喉に流し込んだ。



chapter 2 - End.