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「もう彼女は両手がいっぱいで受け取れないんだ…ごめんね」
お兄様の声を聞いた並んでいた子達は、こちらこそごめんなさいっ、と言ってゲートから去り始めた。
「お兄様…ありがとう」
「いいえ。霞は優しいから全部受け取ろうとするけれど…受け取れないと正直に言うのも大事だよ」
そう言って優しく笑うお兄様に、一つ頷いて笑顔を返した。
「ご苦労様、優姫」
「怪我には気を付けてね?」
「あっ、はい!」
未だ必死に生徒を押さえ込む優姫に視線を向けて、そう声を掛けた。優姫はチョコレート、お兄様に渡さないのかなぁ…と思っていると、落とし物ですよと零くんからお兄様に小さい箱が投げられる。
「え!?あ…それいつのまに!零っ」
「もらっていくよ。ありがとう、優姫」
優姫の焦り様から、投げられた箱は優姫からお兄様へのチョコレートだと気付く。優姫に感謝を告げて校舎へと足を進めるお兄様は、従順な部下である星煉さんを呼んで、優姫から貰ったチョコレート以外を彼女に渡していた。
「いいよ、それ食べて。僕はこれ一つでいい」
お兄様のその言葉に、何故かまた胸が痛んだ。
「……なんか、痛い…」
左胸に手を当ててそう呟いた私の声は、背後で藍堂くんに注意する優姫の笛の音によって掻き消された。