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あの夜チビ太のところにきた2人は最初こそお互い顔を合わせず黙って飲んでいたが酔いがまわる頃には肩を抱きバレンタインキスを近所迷惑になるだろう音量で歌っていたので最早喧嘩をしたことすら忘れ家に帰っていた。

そしてバレンタイン当日、松野家のニート達は家にいるにもかかわらず髪型を整えたり念入りに歯磨きをしたり何かとそわそわとしていた時インターホンが鳴る。音を聴いた瞬間我先にと玄関に向かう元気なニート達は戸を壊さん勢いで開けた。

「うわ、びっくりした…」
「あ…名前か」
「ごめん女の子かと思った?……俺でした〜」

輝かせていた瞳には今や光はない。ごめんと謝る名前に対しニート達はガラガラと戸を閉めようとする。

「なんで閉めるの!馬鹿!」
「嫌だって今日は女の子が来る日だもん」
「カラ松girlが来るはずだ、すまないが名前そこをどいてくれ」
「…ごめん、ニートのお前らにチョコくれる女の子に心当たりとかあるの?」

そう名前が聞くとしん…と辺りは静かになりニート達の顔には影ができる。名前はああ、やってしまったと思い誤魔化すために眉をハの字にして笑うがそれすらも目に入っていないのかニート達は静かに玄関を閉め二階に上がっていった。

「うわぁ、めっちゃダメージやばい」

閉められた玄関を開けニートの巣窟へ向かい戸を開けるとお前らがチョコレートだったのかというくらいどろどろに溶けたようなニートの死骸があった。

「うわぁ、…まぁ、そんなに落ち込まないの。俺凄いよ。喜んで?」

部屋の真ん中に座りリュックから出したのはそれぞれ六つ子カラーの紙袋だった。どろどろになりながらも気になるニート達は静かに名前の行動を眺める。

「じゃーん!なんと女の子からのチョコレートでーす!トト子ちゃんのもあるよ!」

名前のその声にニート達は「え、は、お、おんな、おんなのこ…」といまだ理解していないようだった。

「トト子ちゃんからもらうの大変だったんだよ〜〜本当殺されるかと思った!」
「え、待って名前それ本物の女の子から俺たちへ…?」

震える手で袋を指差すチョロ松に「そうだよ〜〜トト子ちゃん入れて3人の女の子からのチョコでーす!」と各松の前に袋を置く。すると死んだ目をした魚達が、いやニート達が生き返ったようにキラキラと瞳を輝かせる。

「ちなみにトト子ちゃん以外の女の子は匿名希望だそうです」
「シャイgirlか…フッ…どこに隠れようが探「チョコレエエエエエエエト!!!!名前ありがっっざます!!食べていい?!」
「いいよー溶けないうちにどぞ〜〜」

おそ松はもう言う前に食べカラ松はまだ喋っていた、チョロ松一松は感動のあまりか袋を凝視している。十四松は最早食べ終えトド松はチョコを撮った写真を加工している最中だ。

「あれ?これ3人からなんだよね?4つあるけど?」
「うわ、おそ松忘れてる!ひどい!俺も一緒に作ってくるって言ってたじゃん!」
「え?!こん中に名前が作ったのもあるの?…みんな可愛いからどれが名前のだかわかんない…」
「トド松君よ、俺はチョコ作ってた時に名前君女子力高すぎ〜〜!と褒められたくらい完璧なチョコを作ったのだ!わかるはずがない!!」

ドヤ!と腰に手を当てる名前の後ろにいた一松がぼそりと「この猫、名前が作ったでしょ」とチョコレートを突き出す。名前は表情を固め「ち、違うし〜〜」と変なイントネーションで返しバレバレであった。

「へぇーこれ名前が作ったんだ!本当女子力高いね」
「に、にゃーちゃんカラーの猫…!」
「名前もカラ松boyになりたかったのか、いいぜ、今日から名前もカラ松bo「あ、ねぇこれモロタでしょ!めっちゃ似てる〜!」
「俺のはヒロタ」

おそ松と一松が名前にチョコを向けるとうんうんと嬉しそうに頷く。

「わかる!?2人のはってかモロタとヒロタの作るのめっちゃ気合い入れたから!俺の愛がたんまりだよ!」
「愛?」
「俺たちに?」
「は?モロタとヒロタへの愛?」
「あ〜そっちね」
「他にどこに愛を注ぐんだよバーロー」

女の子も無条件に好きだが名前の事もそういう意味で好いている彼らは落胆する。そして名前お手製の猫チョコを眺めていると「嗚呼これ好きな奴からの手作りチョコじゃん」という思いがじわじわと浮かんできた。

「あーッ!食いたいけど食えない!」
「え?なに?猫が??可愛すぎて????食べたくない??わかるーーー!!」
「名前ちょっと黙ってて」
「…はい」
「むしろ下から飲み物持ってきて」
「はい」

勘違いをして煽ってくる名前が鬱陶しくもありこの空間に名前がいることに耐え切れなかったおそ松が冷たくあたる。調子こいたと自覚をしていた名前も言われるがまま下に下りて行った。

「あああこの、ふとした瞬間のコレがつらい。本当つらい。なぁ、だってこれ名前からの手作りチョコだよ?やばくね?え?食えんの?は?」
「十四松はもう食べちゃったけどね」
「美味かった!!!」
「美味かったかああだろうな〜んん〜」
「名前が俺のためににゃーちゃんカラーにしてくれたことにもうやばかったからね、自覚すんの遅くねお前ら」
「嫌だって女の子から!って最初超テンション上がっててなんも考えらんなかったじゃん」
「でも、食べないと名前も可哀想だよね、僕たちの為に作ってきてくれたんだし」
「あああ…俺たちの為…!」

六つ子会議をしていると思ったより早く帰ってきた名前の手には飲み物がなかった。名前は慌ただしくリュックを背負い「トト子ちゃんからの呼び出しです!俺ちょっと殺されてくる…!あ、あと伝言は"お返しは300倍返しで"だから!みんなガンバ!俺もお返し期待してる!じゃあね!」と騒がしく階段を降りお邪魔しましたの声と共に戸を閉める音が聞こえた。

「トト子ちゃんのチョコどれだろ…」
「いや確実にこの五円チョコでしょ」
「ってか今日トト子ちゃんに呼び出しくらうって…」
「チョコでしょ」
「チョコだろうなぁ、なんか前は毎年貰ってたみたいだし」
「なにそれ初耳」

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