ローズヒップは甘くない

長いまつ毛に色素の薄い綺麗な髪の毛、鼻筋の通った整った顔に長い手足。正直、五条悟は文句のつけようがない程外見は整っている。外見だけは。

「あいつ才能も無くて、外見も劣ってるからってまじで俺を僻むなよなー」

ぶつくさと任務が終わり、高専へ帰る道中で文句を言う彼に思わず盛大なため息が口から漏れる。

先程も言ったが、彼、五条悟は外見は本当に文句のつけようがない程整っているのだ。でも、この整っている外見を全て無駄に、むしろマイナスにしてしまうほど彼は性格が悪い。

今回の任務は一級呪術師と私と五条の三人での任務だったのだが、五条と一級呪術師のタイミングというか息があわず、結果として五条がほとんど呪霊を祓ってしまったのだが、任務が終わったと同時に一級呪術師に「のろま」「愚図」「才能ねーよ、やめちまえ」などと次々出てくる悪意の塊の言葉に流石の私も引いた。

最終的に一級呪術師がブチギレて帰ってしまったのだが、本当に目上の人を敬うというか、せめて任務の時だけでも自分の感情を抑えることは出来ないんだろうかこの男は…

「本当に性格に難ありだよね…」
「は?この完璧な外見で才能の塊で強い俺のどこが難ありなわけ?」

私の言葉に心底心外であるという表情で言う五条に私はそーゆうとこだよ。という言葉を飲み込んで変わりにため息を吐き出した。

「夏油みたいになれとは言わないけどさ」
「あいつの方が腹黒くてタチ悪いだろ」

ふざけんな、と言いながら私の頭を小突く五条。容赦なく悪態をついて粗暴な態度をとる五条と、腹の中では悪態をついているのかもしれないが表面上笑顔な夏油だったら、任務をしやすいのは完全に後者の夏油なんだけどな。と、思う気持ちを抑え込み五条に小突かれた頭をさする。

「って、傑が好きなの?」
「はあ?」
「やめとけやめとけ、傑にオマエはあわないよ」

唐突にそんなことを言われて思わず上擦った声が出る。

「いや、なんでそうなるの」
「傑の名前出すからだろ」

不貞腐れたような声でそう言った五条はこちらを見ないように顔を背ける。

いや、訳が分からない。身近に例えられる人間が夏油くらいしかいなかったから夏油の名前を出しただけなのに、何故こいつはこんなにもイライラしているんだろうか。

「オマエみたいなやつは俺としか付き合えないって」

あまりにも衝撃的な一言に頭をぶち抜かれたかと思った。どういうことだ、何?ぐるぐる頭の中を色々な言葉が巡る。

当の本人は相変わらずこちらを見ないので表情はわからないが五条の耳がいつもより赤くなっているのだけは顔を背けていても分かった。

「それ、俺と付き合えって言ってる?」

私がそう言えば、少しだけ動きを止めた五条がこちらを勢いよく見ながら、そうだよ!と大きな声で叫んだが、あまりにも赤い顔に思わず私まで顔が赤くなっていくのがわかった。