例えばの話。この現状に私がごく普通の高校生であれば友達にあふれて違う歩き方をしているんじゃないかな。とか『もしも』や『たられば』が頭を掠めるのは、今がきっとどん底だとも思うからなのかもしれない。――いやこれからは尚も落ちて記録更新歴代最高私史上初を次々塗り替えていく。なんて痛快な皮肉なんだろう。無論マイナス方向で。
持病は治らないから最後の気休めとして自宅に送られ、体調が悪化し病院に送られる生活、そして乗り越えてまたなんとか一年が過ぎる。明らかな一般的普通とは縁遠いとこで私はいる。終わらない地獄。昔は良かった、なにもができていた。そう、過去形なのだ。今は未来が限られているし、終わると思った先はじりじり伸ばされていく。
毎回春がくる度に、次の桜の頃は。だとか毎回誰かがいう。そういいながら、雪の季節を通りすぎていく。窓の外でちらつく雪を見て、あれのように消えれたら。名前通りになるんじゃないかと私は思ってたりする。雪の華、散れば春。親から与えられた名前というものはそうやって縛っていくのではないかと思案したこともある。
最初の贈り物である名前に従い力尽きるだとか、なんて大層な名前の力を借りた皮肉だろう、まるで産んでくれた親に意趣返しのようだ。まだ死んでもないけど。
そういうこともあるのであわよくば過去に帰りたいと願う。もしもタイムマシーンに乗って過去に行けたのならば、過去に幸せだとわかっている健康だった、あの頃に帰りたい。そう思考してると小気味良い音をたてて部屋のドアが開く。
「ここにせんぱいの色を感じるな〜!」
「いやソラ、そこじゃないヨ。どうやらボクたちは間違えたようだ」
柔らかな高い声が耳に入った。日だまりやお日さまを連想させるようなほど暖かな声の少年の声に私の表情が固まった。看護師さんでもなくて、驚いて唖然としている私に少年はガラガラの部屋にいる私を見て、首をかしげている。黄色い少年と、赤い髪をした少年とも青年ともいえる年ごろの男の子が立っていた。
「あれ?せんぱいがいないのな?おかしいな〜?ししょ〜!間違えました!」
「ソラ、ごめんなさいハ?」
「ごめんなさいして、失礼します!」
ごめんなさい!と幼いような口調で謝りながら黄色い少年がぺこりと頭を下げてからドアを閉める、それにならってか赤い彼が会釈程度に頭を下げるのでつられて私も下げる。完全にドアが閉められてドア中央に据えられているすりガラスの向こう側に赤が見えた。短い時間一瞬のやり取り。どこか懐かしいような気もしたけれども、心当たりはない。記憶を漁っていると風に乗って少年の声とは違う声が聞こえた。慌てているのが分かった。どこか聞き覚えのある声で閉じられたドアを見つめているとすりガラスの向こうでは青が動いた。優しそうな青年のような声は聞き覚えがある声がこちらにも聞こえた。
「二人ともそんなところにいたんですね、反対の棟ですよ〜」
「あ!せんぱい!そっちにいたんだな〜!」
不意に聞きなれた声が耳に届いて、心臓がどくりと胸を打つ。この声を知っている。幼馴染のつむぎくんだと思う。赤い彼の隣で立ち止まる蒼が見える。そのままドアが開かれるかと期待をした。久々に会えるとか思ったのだけれども、影は一度ドアの前で止まったが青は遠くに消えていった。最近忙しいと言って、ここに来ることも少なくなった。最後に来たのはいつだったかと思いだして、胸が痛い。この気持ちについて名前を付けることができない。
何故、哀しいの?