憂鬱を重ね塗りする午後



家で試験勉強を行っていると、なんとなくお腹がすいてきた。遊び惚けないタイプの大学生の私は自宅が大好きで、用事がなければ家でダラダラしてしまう。窓から見える外は冬は足音を立てて背後まで忍び寄る雰囲気で薄暗くなりかけている、季節を見計らってか移動販売の音が鳴る。焼き芋のおいしそうなアナウンスが聞こえたので、財布をもって家から飛び出せば、ちょうど帰宅タイミングのお隣さんがいた。幼いころから神経質そうな子は今も相変わらず周りにも口うるさい様子は変わらない。

「また、きみはそのようなものを食べてるのかね。」
「ふふっ、しゅーくん。おひさしぶりだね!いいじゃない。たまにはねぇ。」

寒くなった風物詩みたいなものじゃない?焼き芋の販売なんて。そういいながら笑うと、彼は顔を真っ赤にする。家の前で待ってたら丁度販売の車が通るので私は手を振ると丁度家の前で止まったので、欲しい分だけ頼む。残れば家で温めれば問題はない。

「きみの『たまに』は量が多いんだ」
「そうかしら?五本って普通じゃない?」
「食べすぎだ。そう食べてどうして太らない?」
「さぁ?昔よく運動してたから?」
「そうではないだろう!」

睨まれるけれども昔から睨まれなれているので気にはしない。彼のがみがみは慣れているし、十年ほど前は私がガミガミしてたんだけどなぁ。なんて遠い昔を思い返していたら話を聞いてるのかね?と言われてそうだったと現実に帰る。お隣さんの斎宮さんちの末っ子宗くんが不機嫌そうに私をにらむ。

「それにしても大きくなったね〜。この間までこれぐらいだったのに。」

自分の肩ぐらいまでを手のひらで持ち上げて見る。最後に会ったのは高校受験ぐらいだったような気もするので。最後に会ったのはいつだったっけ?なんて口にして思い返すと、2年前だ。と素早く帰ってくる。几帳面で根っこがまっすぐなのは相も変わらずの様子だ。

「そうだった。夢ノ咲のアイドル科にはいったんだっけ?あのご近所の、りゅー?くん?も一緒って言ってなかったっけ?しゅーくんがこれだけ大きいんだもの、きっとりゅーくん?も大きいわよねぇ。男の子ってすごいねぇ。」
「きみが母親みたいな口調じゃあないか。」
「んーまぁ、きみのお兄さんお姉さんに面倒みられてたから?小学校卒業したら必然的に面倒見てたの私だし?泣き虫しゅーくんが立派になったねぇ。」

私がカラカラ笑いながら話をしているとしゅーくんは湯沸かし器のように顔を真っ赤にしている。そんなやり取りをしていると販売のおじさんは希望した分におまけもくれて二人で食べて。と言われたので、お礼を言いながら代金を支払ってお釣りをもらう。

「ほら、あがっていきなさいよ。お茶ぐらい出したげるし、こういうのは人がたくさんいたほうが美味しいのよ。」
「断る。僕は必要以上に食べないようにしているんだ。」
「そっか。しっかりアイドルだねぇ。寒くなるから風邪ひかないように気を付けてね。」
「勿論だよ。……そっちもそろそろ卒業間近だろう。気を付けて。」
「んだね。じゃあお互い風邪をひかないうちにおうちにはいろっか。」

またね。しゅーくん。りゅーくんにあったらよろしく言っておいてよ。
そう残して私はさっさと家の門をくぐる。久々にあった男の子は立派になってるねぇ。男子三日合わざれば刮目してみよ。っていうもんねぇ。なんて感想をこぼしながら玄関ポーチを登った。


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