目が覚めたら新世界



「お師さん、大丈夫なん?」
「……貴様には大丈夫に見えているのかね」
「いや、めっちゃ頬真っ赤やし大丈夫そうやあらへんけど……!」

わたわたと慌てふためく影片に少しは落ち着きたまえと言い放つ。殴られた頬を冷やすため保健室まで移動したは良いが、その途中で影片と出会したのは悪運だったかもしれない。
そしてそんな影片とは逆に、先程からじっと状況を静観している女子がひとり。
正直、黙っているだけなら出ていってもらった方が気は楽なのだが。

「で、君はいつまでそうしているつもりかね」
「…………殴ったことは、その、悪かったと思ってる」
「そんなん当たり前や!」
「影片」

彼女がようやく発した言葉に影片が食ってかかるのを片手で制す。
正直殴られるとは思ってなかったが、まぁ、こちらも不躾だったことに変わりはない。謝ってきたのならこちらも謝るのが礼儀だろう。

「僕も芸術家だ。作りかけの作品を見られる羞恥は理解している……だからその、先程は、勝手にノートを見たりして悪かったね」
「芸術家?」
「なんや、何か文句あるん?」
「影片、少し黙っていたまえ」

気を抜くとすぐに食ってかかる影片のせいで話が進まない。一旦保健室の外に出るように伝えると、影片は心配そうにちらちらとこちらを見ながら部屋出ていった。

「あんた、芸術家なの?」

いつの間にか興味が僕自身へと移ったらしいが、不躾な問われ方にピクリと眉が上がる。
そもそも、この夢ノ咲学院で僕の存在を知らない奴がいるなんて。

「Valkyrieの斎宮宗だ。僕の芸術が気になるなら、Valkyrieのステージを観に来るといい」

まぁ、この腫れた頬が治まるまでは舞台に立てそうにもないがね。皮肉混じりにそう言えば、彼女はむすっとした表情で返した。

「普通科、泉本リサ。アイドルにはあんま興味なかったけど、あんたのステージはちょっと気になるから今度見てみる」

……随分と上から目線だな。




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