目的地まで400メートル


夏の日差しがこれでもかと肌を焼いてくる午前10時。
少し外を歩くだけで全身が汗だくになるこんな時期は、家の中にいてクーラーで涼むにかぎる。
夏休み万歳、今日も私は自宅でごろごろと惰眠を貪る予定だった。

「名前!おはよう!!」
「……なんであんたがここにいんの」
「夏休みだからな!」
「意味わかんない……」

私の華麗なる夏休みを邪魔してきたのは守沢千秋その人だった。
恋人でも幼馴染でも友人ですらもないはずのこの男は、何故か毎日私の家にやってくるのだ。

「名前、今日はバイクででかけるぞ!」
「は?……無理暑いしぬ」
「安全運転だから安心してほしい!」
「そういう意味じゃない」

無理矢理私の腕を引いて立ち上がらせる守沢千秋。
本当にもう、どこにそんな元気があるんですかね。
私は家でごろごろしていたいよ。

「ううむ、残念だ……今日はあんずに貰ったチケットがあるから、アイスクリームの食べ放題に行こうと思っていたんだが」
「アイス?」

待って何それ聞いてない。
なんで突然アイス?私がいまアイス食べたくて仕方ないと知っての狼藉か?

「ああ!あんずが都合悪くなってしまったとかで譲ってもらったんだ!だが名前はあまり興味がないようだし、他の人でも誘って」
「……行く」
「おお、行ってくれるか!ありがとう!!やはりアイスはいいよな!」

アイスにつられて同行を承諾した私をみて、守沢千秋は満足そうに笑う。
バイクに乗るから着替えてきなさいと自室に追いやられた。……ここ私の家なのに。
とはいえミニスカートでバイクに跨るわけにもいかないのは一理ある。
自室で適当なジーンズとTシャツに着替えて戻れば、守沢千秋にヘルメットを渡された。

「さあ、行くぞ!」
「おー」



*****



「あんずちゃん、アイスクリームのチケットありがとね」

アイスクリームの食べ放題はめちゃくちゃにおいしかったし幸せだった。
何故守沢千秋と二人できているのかとか、店員さんに明らかにカップルとして見られていてちょっと気まずかったとかそういうのは置いといて、アイスクリームに囲まれてとにかく幸せだった。
あんずちゃんは女神だなあと思いながらお礼を告げれば、思わぬ爆弾が落とされた。

「いえいえ……!無事にデートできたんですね」
「……でーと?」
「あれ?守沢先輩、名前先輩をデートに誘いたいからチケットが欲しいって……」

ちょっと待って聞いてないぞ守沢千秋。
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