きっと最高のハッピーエンド
夏の日差しがこれでもかと肌を焼いてくる午前10時。
社会人になった以上夏休みなんて概念はなくなって、いまも次の打ち合わせに向かう途中だった。
とはいえESビルの中は空調が効いているから夏の暑さとはあまり関係ないんだけど。
「…名前!おはよう!!」
「な、んであんたがここにいんの」
「この後は流星隊Mとの打ち合わせだからな!」
「あ〜、そうだっけ?」
忘れたフリをして誤魔化す。知ってたよ、次が流星隊Mのイベントの打ち合わせだってことくらい。隣に並んだ守沢千秋がさらりと腰に回してきた手をぺしんと叩く。
「名前、俺たち付き合っているんだよな?」
「そうだけど」
「どうしてそんなに冷たいんだ」
「仕事中だからね」
守沢千秋が大声で喧伝したせいで私たちの関係はESビル内では周知の事実となってしまっているが、仮にも彼はアイドルだし、私だって色恋にうつつを抜かして真面目に仕事もできないプロデューサーだと思われるのも嫌だ。
「名前は仕事と恋人、どっちが大事なんだ!?」
「仕事でしょ」
「俺は名前ともっとイチャイチャしたい!」
「し・ご・と・ちゅ・う!!」
わあわあと喚く守沢千秋をあしらいながら打ち合わせ室のドアを開ける。他の打ち合わせに参加するメンバーはまだ来ていないようだった。
それを察知した守沢千秋は、嬉々として私に抱きつく。いやだから仕事中……ああもう、いいか。
「せっかく名前と恋人になれたんだからいつでもイチャイチャしていたいんだ」
「……節度は守ってくれないと困る」
「誰もいない今ならいいか?」
守沢千秋の指先が頬に触れる。あわや唇が重なりそうになったところで、手元にあった資料でばしんと守沢千秋の顔を殴った。
「いっ……名前!?」
「人が来たから終わりね。おはよう、鉄虎くん」
「あ〜、俺たちもう少し時間潰してきた方が良かったスかね?」
「全然!この脳内ピンク馬鹿は放っておいて打ち合わせしよっか!」
「名前先輩、強い……」
この程度で流されてたらESビルのプロデューサーは務まらない。うん。ちらりと守沢千秋の方を見ると、深海くんに泣きついていた。
「奏汰っ、俺……俺はっ、」
「はいはい、いたいのいたいのとんでけ〜」
深海くんの対応もだいぶ雑になってきてるけど、まぁいいか。
「名前先輩!お待たせしましたっ」
「あんずちゃん!」
可愛いあんずちゃんの顔を見て思わず駆け寄って抱きつく。ああ、あんずちゃんは相変わらず可愛いくて癒しだなぁ。
「なんであんずはよくて俺はダメなんだ……?」
「胸に手を当てて考えろ脳筋野郎」
「くっ、だが俺はめげない!」
1人で喚く守沢千秋を横目に、あんずちゃんと資料を配る。
何だかんだで、こんな毎日は嫌いじゃない。
「ふふっ」
「あんずちゃん?」
「やっぱり名前先輩、守沢先輩の事が好きなんだなぁって」
いや、うん、どうしてそうなった?
まあ否定はしないけど!