明日になったら
本能より早くに動き出したので、これは生存本能だと主張するが、ヒールのため機動力が遅い。いっそスニーカーにでもすれば良かったかな。とか思うけど、無理。美意識高い系にどやされる。面倒。斎宮とか瀬名とか怖いもん。やだ、だるい。階段を降りて逃げようとしたが思春期盛りの野郎には叶わず追い付かれて後ろ手を捕まれた。振りほどこうにもしっかりつかまれてて前に進むことはできない。
「名前!好きだ!たぶん、ずっと前から!」
「……なによ、たぶんって!」
「すまん!でも、好きだから名前の隣に居たいし、また一緒にバイクに名前を乗せたい!名前にお弁当作ってほしいし一緒に食べたいし今もこっちを見て話をしてほしい!」
「うっさい!好きかって言いやがって!こっちの都合全部無視か!」
「嫌か?」
そう聞かれたら答えは非だ。ずるい聞き方をしてくる。こいつ、たまにそういうとこだぞ!守沢千秋。嫌じゃない、って言ったらまたお前暴走するだろ!人の話を聞け、場所をわきまえろ!いい大人だろ!そんなこんなを飲み込んで、しっかり息を吐ききる。
「……いやじゃない。でも、あれは怒って……!」
怒ってるというのだが、この男は耳を貸さずに私の腕を強く引っ張って腕の中に収めてしまう、すっぽり入ってしまうこのサイズ感では抵抗もむなしく、守沢は私の耳元に顔を寄せた。すこしぐすぐす聞こえてるのは幻聴だと思いたい。この後もまだ会議があるので、こんなところに鼻水や涙なんか付けられては困る。
「ちょっとストップストップ!!鼻水とか涙とか付けちゃ、タダじゃおかない!」
「俺は嬉しいんだ!」
「わかった、わかったからおちつけ恋愛ヒロイン思考脳筋。ついでに、それ匂い目的で嗅いでたら名前を呼ぶ前に変態って呼ぶ」
幸せをかみしめているのか何なのかはわからないけど、可能性は潰しておくに限ると判断してしまうのがプロデュース経験故の結論だ。ないよな?と思って投げかけたのだけれども、よくわかったな!っていうお元気な返事。はい元気ですね!そうじゃなくって。
「よし分かった変態。」
「いや違う!これはだな!抱きしめた名前が、いい匂いで!」
「……なんで、私。こんな変態が好きなんだろう。」
あの時から離れなかった悲しそうな守沢の顔を考えるたびに胸が締め付けられるのってもしかして、なにこれ多少の罪悪感なのか?いろいろと考えれども、守沢は嬉しそうに明日は朝早くから俺の家のチャイムを押してくれるんだろう?とか言い出した。断る。私はそんな日があったら寝てたいんだ。変態。起こすな。
私は自炊派だけど、残念なことに明日も明後日も自分用だし、お前のために弁当をつくるんじゃない、自分の分を作るんだ!二つは用意しない、人の話を聞け。勝手にカウントすな。