ルージュで彩る


緊張して、羽風さんをよく見れないので、目線は自分の手と羽風さんの手を見つめながら、息を吐き出す。節の長い大きな手は私の手の中でこわばっているのがよく見えた。

「羽風さん。」
「うん。」
「……えぇと…よろしくお願いします。」

よかったぁ。なんて吐き出す音と共に安心した声色が聞こえて、目線を上げると羽風さんの目から涙が一つ落ちて手に落ちた。私が驚きの声を上げていると羽風さんが、おかしいな?とか言いながら涙がまた一つ落ちた。

「羽風さん!?」
「嬉しいんだよ、ごめんね」
「目、こすらないでください。ハンカチハンカチ!」

慌ててポケットに入っていたハンカチを羽風さんの頬に沿わせて涙を吸わせる。ゴメンね嬉しくなって。とかいう羽風さんは私の手からハンカチをとって目頭に当てていた。弱く笑んでいるのが、儚く見えた。

「ありがとう。」
「どういたしまして。」

ぱっちり。というような効果音がつきそうなほど、羽風さんと目が合う。一呼吸おいて、どちらともなく息を吐き出してくすくすわらう。私が笑うのに納得しないのか羽風さんは少し唇を尖らせた。ちょっとその様子が年相応に見えなくて可愛く見える。

「なんだか、情けないなぁ。」
「ふふふ」

心がポカポカする。太陽をたっぷり浴びたタオルに包まれるような心地よい幸福感で、自然と口元が綻んでしまう。握ってる手は羽風さんが恋人繋ぎに結び直される。目線の高さまで持ち上げられて、二度三度ぎゅっとされる。

「嬉しいんだ。名字さんと恋人になれて。」
「今度オフが揃ったらどこかにいこうよ。どこがいい?」

色々と浮かべてみたけれど、どこに行ったってきっと楽しいと思えるのは隣にいる、羽風さんだから。

「場所はどこでもきっと、楽しいと思うので――」

――羽風さんと並んで劣らないように遜色ないルージュで彩るので。それを見てほしい。
そう伝えたら羽風さん、感極まったのか抱きついて、囁いた。
俺のためとか、名字さ……名前ちゃん。見れるの待ってるよ。なんて。ちょっとまた涙声だったの多分きっと忘れることはできないだろう。
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