ラッキーセブンを作りだせ


「まったく、君は本当に面白い子だね」

夢のようなパーティから一夜明け、いつものようにESビルへ出たところで天祥院英智に呼び出された。
そして開口一番これである。いい意味で呼び出されたわけではないことは自明の理だ。言いたいことをストレートに言えばいいのに本当にいやらしい。

「……何をもってその評価なのか分かりかねますけど」
「これでも一応褒めているんだよ。こちらが周到に用意したシナリオをあっさり塗り替えてくるのはTrickstarくらいかと思っていたんだけどね。まぁおかげで退屈はしないかな」
「本題は」
「三毛縞くんのことだよ。気づいていただろう?」

にっこりと天祥院英智が笑う。ああ、やはり先日からママとこのビルで全然会えなくなっていたのはお前の差し金か。

「違う事務所のことにまで口を出すのはお門違いだと思ってはいるんだけどね、君は名字の子だから僕も他人事にはできない。……アイドルに恋人がいるのはあまり、よろしくないことはわかっているよね」
「私とま……、三毛縞さんが付き合っていると?」
「僕としては付き合っていようがいまいがどちらでも構わないよ。恋愛なんて個人の自由だとは思うしね、むしろそういったことまで手を出す余力があるのは羨ましいな。……ともあれ。先日のパーティで君と三毛縞くんはたいそう仲良さそうに皆の目に映っていた。僕が恐れているのは、最悪のタイミングで最悪の事態が露見することだ。」

考えすぎじゃないですか、とは言えない雰囲気だった。大人しく屈するのも癪でせいぜい天祥院英智の顔を睨みつける。

「こわいな、そんなに睨まないでおくれよ。まだ何も言ってないのに」
「回りくどいのは嫌いです」
「じゃあ単刀直入に言おう。P機関のあんずちゃんに話を通してある。彼女とともに、この件について可及的速やかに解決策を講じて提出して欲しい」
「……別れろ、とかじゃないんですね」
「言っただろう?僕は君たちが羨ましいんだ。できるだけ円満に解決したいとは思っているよ」
「わかりました」

ぺこりと頭を下げ、応接室を出る。
忙しいあんずさんを付き合わせてしまうのは悪いけど、彼女はプロデューサーとしてかなりの腕だし頼りになるだろう。まずはどこにいるか確認……って、

「うっちゅ〜☆名前、会いに来たぞ〜!」
「レオくん?それにあんずさんも!」

ハンズホールで連絡するよりさきに、レオくんに声をかけられた。その横にはぺこりと頭を下げるあんずさんもいる。

「皇帝と戦争するんだろ?あんずに聞いた!」
「戦争っていうか……まぁでも、そんなとこかな?」
「とりあえずこれは名前にやる!人の恋路を邪魔する皇帝は馬に蹴られて死んじまえの歌……☆」
「タイトル長っ!でも最高。ありがとう!」
「あの、天祥院先輩に聞きました。私で力になれることがあれば」
「あんずさんが居るなら百人力だよ!ありがとう。まずは作戦会議しなくちゃね」

レオくんから物騒なタイトルの曲を受け取って、あんずさんの手を取る。大丈夫だ、私には味方がいっぱい居る。

「俺を置いてけぼりにするなんて寂しいぞお!」
「……ママ!」
「啐啄同時(そったくどうじ)!俺も助太刀する、というよりは俺の問題でもあるしなあ。名前さんだけに背負わせたりしないぞお」

ぽん、と優しく頭を撫でられる。嬉しくなって抱きつけば、大好きなママの匂いがした。ああ、やっぱりママといると安心するなぁ。

「わははっ、相変わらず仲良いな!今度はみけじママと名前がらぶらぶな歌でも作るか!」
「何それラブソング?誰が歌うのそれ」
「そりゃもちろんママに決まってるだろ〜?」
「俺がラブソングかあ、なかなか面白いかもしれないなあ」
「あっ、それいいかもしれません!」

あんずちゃんが何かを思いついたらしく、そこから皆で協力して企画を纏めていく。
出来上がった企画書を見てうんうんと頷いた。



***




「へえ、なかなか面白いことになったみたいだね」

突きつけた企画書に目を通しながら、天祥院英智が呟いた。

「まぁ、ここまでの覚悟があるならいいよ。僕から名字の方にも力添えをしてあげよう」
「……!いいの?」
「僕も君のことは嫌いじゃない。……むしろ愛しているんだけどな」
「ははは!恋人の俺よりよっぽど強烈なことを言うなあ、英智さんは。でも名前さんは譲れないぞお!」
「分かっているよ。せいぜいお幸せにね」

ひとまずは感謝を述べて応接室を出る。
そわそわと待ち構えていたあんずちゃんとレオくんに結果を報告すれば、2人ともすごく喜んでくれた。
ニューディの協力も勝ち取れたし、これで万事解決。ふたりと解散してふっと気が緩んだところで、ママに抱き寄せられた。

「名前さん」
「ん?どしたの、ママ」
「さっきは英智さんに先手を取られてしまったからなあ。……名前さん、愛してるぞお」
「っ……私も!ママが大好き!!」

大好きなママの腕の中で、目を合わせて微笑み合う。
これから先もどうぞよろしくね、ママ?
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