外見だけではわからない

呼び出された用事を済ませれば朝。生活に必要そうなものを買って、拾った人魚を置いている部屋に帰る。遠くからカーテンが開いているのが見えた。帰らなかったか。と思う同時に、実在するんだなぁ。とどこか他人事めいた感想を抱きながらも、足は速くなった。

「ただいまあ!戻ったぞお!」

ドアを開けると心地よい風が吹き込む。片手のビニル袋を持って部屋の中に入ると、軽い足音に続いてドアのへりに捕まって少し頭を出す彼女がいた。靴を脱いで中に入りすれ違いざまに頭をなでる。

「お腹はすいてないかあ?今作るから待っていなさい」

返事はないけれども、目は昨日よりも輝いている様子だ。彼女の姿の後ろにレオさんの影がちらつく。世の中に疲れたのかもしれない。いろいろな事情は本人がいつか開けばいいとは思うので、気にせず持ってきた荷物をキッチンのコンロ横に置く。背中に視線を感じて振り向くと、彼女が興味があるのか袋の中に視線が映る。

「きみも食べるだろう?苦手なものがあったら言ってくれればいいからな…といっても、調理のいらないシリアルだが。」

シリアルが伝わっていないのか、頭が傾く。買ってきたものを振れば興味深そうにそれを見つめて、持っていたものをすっと取って、パッケージから裏面まで見つめている。アレルギー関連で調べてるのかと思ったが、一通り眺め終わって俺の手に返された。シリアルと一緒に買ってきた底が深目の紙皿とプラスチックのスプーンを手渡して、シリアルの封を切る。

「好きなだけ入れなさい。いっぱい食べるんだぞお」

そう声をかけて紙パックの牛乳の封を開けると、こちらを見てかすかに笑んだ気がした。どこか庇護欲の駆り立てられるような小さな彼女。年回りは俺と同じぐらいなのだろうか、幼馴染と面影がある顔は今、シリアルをどれだけ食べれるか、はたまたこぼさないように慎重にしているだけなのか、わずかに袋を振って少しずつ入れている。集中しているのか、呼びかけても返事はないし、聞こえてるのかも定かでない。新しいことを体験している様はまるで本当の人魚姫ではないかと思いながら、俺は一人クツクツ笑った。
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