冷静になりたい

問い方が悪かったか、やり方がわるかった。気を付けたつもりでも、結局彼女を泣かせてしまった。彼女の中に何があるのかもなにも知らない。知らないからこそ何と声をかけて良いかわからず、泣きたいなら泣きたいだけ泣くといい。と無難な事しか言えなかった。
俺は今も昔も変わらないと自分自身の過去を振り返る。一頻り泣いたのか返事もないが、起きているのだけを確認する。

「きみへの質問をするのは早すぎた。これはママのミスだ。」

さっきの質問もいつか答えてくれればいい。そういいながら、頭を撫でると小さく頭が揺れ動いた気がした。常日頃から常人でタフな者ばかりがいる生活だったからこそ、繊細な心配りのやりかたを忘れたのかと自分の頭をよぎる。

「言いたくなってからでいい。それでいい。今はそれでいいから、いつかママにはそっと教えてくれたら嬉しいなあ。」

そう言えども、返事はない。そっと揺すってみたら安らかな寝息が聞こえる。どうやら泣きつかれたのだろう、スイッチが切れたように眠ってしまっている。あまり眠れていなかったのだろうか、あれやこれやと思考を巡らせたが本人が言わない限り何もできないので、一度思考を巡らせる。いろいろな伝手をたどれば彼女の身元を特定することはたやすい。ただ、それで彼女が幸せになるのかと言うと、恐らくそうではない。
健やかに飛ぶための翼も、同じように傷だらけになって地を這いずるように救いの手を求めているのだろう。

「――あぁ、海で拾ったから人魚姫で、翼でなく鰭か。」

何をうまいことをいいたいのか。自分で言ってて呆れも覚える同じタイミングで、あの童話は、鰭から足になるとき裂けて激痛にさいなまれていたと思い出した。
童話と同じようになるならば、せめて幸せになってほしいとも思ったが。今しがた思い出した童話は、泡となって消えていたような。

「――やはり、人魚姫には幸せになってほしいなあ。」

なんて犬猫を拾ったような感想だとどこか他人事のような思考をしながら、激痛にさいなみ一時の安らぎを得たばかりの人魚姫をベットに戻すことにした。
-6-
Back