後ろからこんにちは
泣き疲れて眠ったのなんて初めてだ。
気づいたらベッドの中にいて、もしかして今までのは夢だったのかもと思ったけど、昨晩は見なかったシリアルの箱があったのでやっぱり夢じゃなかったんだと思い至る。
さんざん泣いたおかげか、妙に頭はすっきりしていた。
謝って、お礼を言って、許されるならまだここに居たいって伝えよう。そう心に決めて身体を起こす。いつの間にか彼の姿は見えなくなっていて、代わりに見慣れないスマホがひとつ、メモとともにテーブルに置かれていた。
メモに目を通せば、仕事が入って出かける事、何かあったらそのスマホから連絡をするようにと書かれていた。
恐る恐るスマホを開く、登録されている連絡先は1件。三毛縞斑というのは彼の名前だろうか。いきなり電話をするのもはばかられたので、ショートメッセージを送ることにした。
"いま、おきました"
"いきなり泣いちゃってごめんなさい"
"たくさんありがとうございます"
"まだ、ここにいたいです"
直接話すわけじゃないからか、謝罪もお礼も要望も素直に文字にできた。
しばらくのあと、返信が返ってきた。
"俺は気にしてないから大丈夫だぞお!"
"きみが居たいなら居るといい"
優しい言葉にほっとして、ありがとうと返信する。
必要なものがあれば買いに行こうと誘われ二つ返事で頷く。昼過ぎには戻るという彼を待って、一緒に街に出た。
***
「こんにちは」
「っ、!?」
不意に後ろから声をかけられて驚く。
斑さんよりも低くて甘い、どこかで聞いたことのある声に全身が固まった。
「あれ、違ったかな。日和くんのおひめさまだよね、きみ」
淡々と尋ねられるも、上手く言葉が出てこない。
斑さんの背後に隠れて俯くのが精一杯だった。
「凪砂さんは彼女の知り合いなのかあ?」
「知り合い……になるのかな。その子が私の知っている子ならそうなんだろうね。でも人違いかもしれない。私、あまり興味のないことは覚えないから」
どうやら人違いだと思い始めてる様子に、少し希望が見えた。できれば人違いだということにしてそのまま去って欲しい。きっと「彼」に知られたら家に連れ戻されるのは必至だ。そんな私の祈りが通じたのか、斑さんが優しく私の頭を撫でてから口を開いた。
「じゃあきっと人違いだなあ。この子は俺の知り合いから預けられてる子なんだ」
「……そう。よく似ていたと思ったんだけど。ごめんね、突然声をかけて」
「……」
大丈夫、という意味で首を振る。顔を上げるのはやっぱり怖くてできなかった。
-7-気づいたらベッドの中にいて、もしかして今までのは夢だったのかもと思ったけど、昨晩は見なかったシリアルの箱があったのでやっぱり夢じゃなかったんだと思い至る。
さんざん泣いたおかげか、妙に頭はすっきりしていた。
謝って、お礼を言って、許されるならまだここに居たいって伝えよう。そう心に決めて身体を起こす。いつの間にか彼の姿は見えなくなっていて、代わりに見慣れないスマホがひとつ、メモとともにテーブルに置かれていた。
メモに目を通せば、仕事が入って出かける事、何かあったらそのスマホから連絡をするようにと書かれていた。
恐る恐るスマホを開く、登録されている連絡先は1件。三毛縞斑というのは彼の名前だろうか。いきなり電話をするのもはばかられたので、ショートメッセージを送ることにした。
"いま、おきました"
"いきなり泣いちゃってごめんなさい"
"たくさんありがとうございます"
"まだ、ここにいたいです"
直接話すわけじゃないからか、謝罪もお礼も要望も素直に文字にできた。
しばらくのあと、返信が返ってきた。
"俺は気にしてないから大丈夫だぞお!"
"きみが居たいなら居るといい"
優しい言葉にほっとして、ありがとうと返信する。
必要なものがあれば買いに行こうと誘われ二つ返事で頷く。昼過ぎには戻るという彼を待って、一緒に街に出た。
***
「こんにちは」
「っ、!?」
不意に後ろから声をかけられて驚く。
斑さんよりも低くて甘い、どこかで聞いたことのある声に全身が固まった。
「あれ、違ったかな。日和くんのおひめさまだよね、きみ」
淡々と尋ねられるも、上手く言葉が出てこない。
斑さんの背後に隠れて俯くのが精一杯だった。
「凪砂さんは彼女の知り合いなのかあ?」
「知り合い……になるのかな。その子が私の知っている子ならそうなんだろうね。でも人違いかもしれない。私、あまり興味のないことは覚えないから」
どうやら人違いだと思い始めてる様子に、少し希望が見えた。できれば人違いだということにしてそのまま去って欲しい。きっと「彼」に知られたら家に連れ戻されるのは必至だ。そんな私の祈りが通じたのか、斑さんが優しく私の頭を撫でてから口を開いた。
「じゃあきっと人違いだなあ。この子は俺の知り合いから預けられてる子なんだ」
「……そう。よく似ていたと思ったんだけど。ごめんね、突然声をかけて」
「……」
大丈夫、という意味で首を振る。顔を上げるのはやっぱり怖くてできなかった。