などと一方的な連絡を受けて空港へ向かえば、本当に彼女の姿があった。
自分の意思で来たのかと思えば七種に仕組まれたことだったらしく、彼女は電話越しにきゃんきゃんと吠えている。
やがて電話を切った彼女がこちらの様子を窺うように顔を上げた。
「あー。えっと。宗?」
「なにかね。」
「今、事務所と連絡をとったら、フクショチョーが、この間の詫びに休暇だって。」
この間の件とはどのことだと首を傾げれば、例の品の無い引き延ばし写真の事だと返される。
四、五日ほどこちらに居るという彼女に小さく息を吐く。
僕と言い合うのと遜色なく七種にも食って掛かる彼女のことを、七種も気に入っているのだろう。すくなくとも事務所としては彼女を手放したくないはずだ。故の、ご機嫌取りのような休み。そう結論付けて納得していれば、彼女からのセリフに耳を疑った。
「あのさ…よかったら、荷物置いてからデートしない?」
駄目かな?と上目遣いに問いかける目の前の女は、本当に僕の知る彼女なのだろうか。
いっそ彼女に会いたい僕が生み出した幻覚なのではと思うほど普段の彼女からかけ離れていて――思わず思考が止まってしまった。
「ちょっと、宗?」
「あ、ああ……予想外の言葉に驚いていたのだよ」
「何、もしかしてホントに他で女でも作ったの」
「は!?どうしてそうなるのかね!」
思わず喧嘩腰になりかけるも、彼女に他意はないらしい。
大体僕は芸術を高めにこの地に来ている、それに彼女以上に僕を魅了する存在などないというのに。
「じゃあ他に予定があるとか」
「あってもずらせるものだから問題はない。……すぐにでも荷物を置いてこよう、リサと行きたい場所がたくさんあるのだよ」
日本から離れた異国の地で彼女と二人きり、七種に仕組まれたという点は些か不満ではあるもののこの状況を満喫しない手はない。
共に行こうとばかりに手を差し出せば、特大のスーツケースが渡された。……まずは邪魔者のこの荷物を置いてこよう。