卒業してから私は社会人に、そしてしゅーくんは芸術を学びに日本を離れてしまってしばらく。帰る前には連絡を入れるというから気丈には待っていれる自信があった。宗くんが私を好きでいてくれた時間よりもはるかに短いのだと分かっているし、薬指の指輪はいつでも近くにあるからこそあの日を思い出して頑張れるのだから。できるって思うんだけど、こういう夢をみるとなんだか会いたくなる。
会えたら、笑って喋って手をつないで歩きたいなぁ。と思うし、夢に見るほど。
そう、目が覚めてしまったのだ。スマホを見ると、午前に入ってしばらくの時間、時差の逆算をしてもまだ寝ている時間でもなさそうで、メッセージアプリを一つ送ってみるとすぐに反応はあった。既読がついて、すぐに電話が鳴った。
「もしもししゅーくん?」
『やあ姉さん』
「ごめんね、色々してたんじゃないかなって思って。」
『今何をしようかと考えていたところだよ。丁度姉さんからの連絡が入ったから、今日本はまだ夜中じゃなかったかい?』
「しゅーくんの夢を見て、目が覚めちゃって。声が聴きたくなったの。」
『僕も丁度姉さんの声が聴きたかったんだ。元気にやってるのかね?』
「仕事は難しいけれど、楽しいの。でも、やっぱり……」
少し寂しい。と口から零れ落ちそうになったのを飲み込んだけれども、電話先の声が私の名を呼んだ。諫めるような声で、短く言う。
『何かあったのかね?』
「ううん、ちょっと声を聞いたら寂しくなっちゃった。」
『すまないね。でも、そろそろ一時的に日本に帰ろうと思うから、その時にまた姉さんのご飯を食べたい』
「本当?何が食べたいの?」
あれもいいしこれもいいと言い出すので、一つ一つ聞いておく。次に旅立つまでに全部食べれるの怪しい量のリストアップに少し苦笑も浮かべてしまうのだけれども、育ち盛りも終わりに向けた男の子はこれぐらい食べるのだろうか。
「じゃあ帰ってきたら一緒に食べようね」
『あぁ、約束するよ。朝から出勤じゃないのかい?』
「仕事だよ。でも、せっかくだしもうちょっとしゅーくんとお話したいな」
じゃああと15分だけだよ、それ以上は肌にも姉さんの睡眠にも悪いからね。
そう言われたら、これ以上伸ばすのも無理そうで、快諾して時間いっぱいまで話をして再び眠りについた。