#10.知らない感情
「『シン』はジェクト。ヤツはお前に殺させることを望んでいるんだ」
さっきアーロンに言われた言葉。
海へ帰って行く『シン』を追いかけたとき、確かにオヤジを感じた。
本当に『シン』はオヤジなのかよ…。
スピラを苦しめる存在で、オレに殺されたいとか…
そんなの勝手過ぎるにも程があるだろ!?
戦場跡を出発してからオレの頭に浮かんでくるのはこんなことばかりだった。
前を歩くサラとユウナ。
ユウナが無理に笑顔を作ろうとしてるのは、みんな気付いてる。
でもサラは…。
ミヘン・セッションが始まる前、オレが呼びに行った後からサラの様子がおかしい。
絶対シーモアと何かあったんだ。
でもサラがはぐらかそうとしてるのが分かって、あれ以上何も聞けなかった。
「ユウナもそうだが、サラはもっと辛そうだな」
隣りを歩いていたアーロンがボソリと呟いた。
「なんだよ?何か知ってんのかよ」
「…直接聞け。お前にだったら話すかもしれん」
「はぁ?」
イマイチよくわからないけど、アーロンはオレの知らない#name-を知ってる。
やっぱりサラはオレに何か隠してるんだ。
でも、その秘密をアーロンが知っていることがどこか気に入らなかった。
「ザナルカンドにはいつ着くんだ?」
正体の分からないむしゃくしゃを抑えようとアーロンに違う話題を振ってみる。
しかし返事はオレにとっては嬉しくない言葉で。
「まだまだ先だ。まだあと3つ、寺院を回らなければならないからな」
「なんだよそれ」
「ジェクトと『シン』の関係は、ユウナには伏せておけよ」
『シン』を倒そうと旅をしてるユウナ。
その『シン』がオレのオヤジなんて…
言えるわけない。
「見えてきたぞ。ジョゼ寺院だ」
前には、ごつごつした岩を付けている寺院。
中に入るとイサールとかいう召喚士が挨拶してきた。
ユウナに声を掛けるのはわかるんだけど、なんでサラにまで…?
サラもワケがわからない、といった風に対応している。
ったく、シーモアといいコイツといいサラと馴れ馴れしく話しやがって!
…あれ?
でもなんでオレ、こんなにムキになってるんだ…?
アーロンがサラの秘密を知ってるって分かったときも。
こんな感情、オレは…知らない。
「ところで、最近召喚士が行方不明になるという話をよく耳にしまして…気をつけて下さいね」
イサールはそんな意味深な言葉を残して去って行った。
その言葉を気にしつつもオレ達は試練の間へと進む。
ユウナが祈り子の間にいる間は退屈で仕方ない。
あんまりうるさくするとキマリに睨まれるし。
「ここって確かイクシオン…だったっけ…」
不意に聞こえたサラの声。
「いくしおん?」
「あっ!うん。ここの召喚獣はイクシオンて言うの」
「どんなのか見たことあるッスか?」
「あるよ〜!馬みたいなので長い角があるんだよ」
サラは頭に手をやりながら身振り手振りで答える。
「お、今度は馬なんだな!」
「あらサラ。意外に召喚獣に詳しかったのね」
オレ達の会話が聞こえたのかルールーが会話に入ってきた。
「“意外”は余計だよ!一通りは知ってるし!」
怒りながらも、少し自慢げなサラ。
だんだん元の調子に戻ってきたみたいだ。
そんなサラを見てホッと安心する。
「でも…あなたまで召喚士になりたい、なんて言わないでちょうだいね、サラ」
「え?…あ、当たり前じゃん!そもそも私にはそんな才能ないし、大丈夫だよ!」
そのときの二人の顔はとても悲しげだった。
召喚士ってみんなの憧れみたいなもんじゃないのか?
名誉なんじゃないのか?
なんで二人があんな悲しそうな顔をしたのかオレには分からなかった。
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