#9.無力な自分
な、何これ…
『シン』から放たれた重力波によって気を失ってしまっていた。
気付けば海岸にいて『シン』は海に向かって帰っていくところ。
目の前に広がるのは、たくさんの機械の残骸やら武器…。
そして…人。
「…うぅ…っ…」
急に恐くなった。
こんな光景、映画くらいでしか見たことないよ。
早くこんなとこからは逃げ出したい。
家に帰りたい。
そのときは本気でそう思った。
「サラ!?大丈夫だった!?」
名前を呼ぶ声が聞こえ、顔を上げるとルールーがこっちに走ってきている。
「…ぁ…ルー…ルー…」
「良かった。怪我はない?」
「う…ぅ…ルールー!恐かったよぉ…っ…」
ルールーの顔を見たら、今まで抑えていたものが一気に溢れ出して。
私はルールーに抱き付いた。
「もう、大丈夫よ。『シン』は海に帰って行ったわ」
そう言ってルールーは、私の背中と頭を優しく撫でてくれる。
「…ぅう……ぐず…っ」
「ほらサラ泣かないで?ユウナ、頑張ってるのよ?」
「…ぇ…?」
辺りを見渡すと、ユウナが異界送りをしているのが見えた。
ユウナ…きっと辛い思いをしてる。
召喚士なのに何も出来なかった自分を責めてる。
それなのに、弱音一つ吐かず今も自分に出来る最大の事をしてる。
ユウナは…なんて強いんだろう。
そんなユウナを見ていたら自然と涙は引いていた。
「…ゴメン、ルールー。もう大丈夫」
ルールーから離れると涙の跡を拭う。
「あら、そうは見えないけど?泣きたい時は思い切り泣きなさいね」
「う…ありがとう…」
「ルー!サラ!こんなとこにいたのか」
見れば私達を探し回っていたのだろう、ワッカが息を切らしている。
「みんな無事?」
「あぁ。オレらは何とかな。お?サラ目赤いぞ?どうかしたのか?」
泣いていたせいで、私の目が赤いのに気付いたワッカが顔を覗き込んできた。
「え?そ、そうかな〜?ゴミでも入っちゃったみたい」
「ほら!みんな待ってるわ。行きましょう」
ルールーのお蔭でワッカにはそれ以上聞かれなくて済んだ。
次は…ジョゼ街道か…。
***
みんなの準備が出来たので、私達は戦場跡を出発した。
ユウナが不自然に明るく振舞ってるのが痛々しい…。
「はぁ〜…」
私は盛大な溜め息をついた。
私がここに居る意味ってあるのかな?
作戦の結果を知っていながら何も出来なかった…。
それに…本気で家に帰りたいと思った。
こんな世界嫌だって。
「サラ?溜め息?」
「…あ…ユウナ」
心配そうな顔で私の顔を覗き込んでくる。
「サラ、笑ってないとユウナ悲しむ」
「キマリ!?」
いつの間にかキマリが横を歩いていて…
キマリとはあんまり喋ったことなかったから驚いてしまった。
「キマリの言う通り。わたし、サラには…ううん、みんなに笑っていて欲しい。みんな大切な仲間だから」
そう…だよね。
ユウナも悲しみを抑えて笑顔でいるのに、私が感情を表に出しちゃダメ、か。
この旅を少しでも明るい旅にしなきゃ!
「ゴメン、二人とも。旅は明るく行かなきゃね」
そう言うとユウナは微笑んでくれた。
仲間──
もし、今ここで元の世界に帰れると言われても
きっと私は帰れない。
ううん、帰れないんじゃなくて帰らない。
帰れば楽になれるだろうけど…この旅から逃げるみたいで嫌なんだ。
みんなの旅を見届けたい。
それがどんな結末であろうとも。
私にとってももうみんなは
かけがえのない仲間だから…。
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