No.01-side:BOY




やった!

やった、やった!
遂にこの日が来た!!
こんなにも早く、待ち望んだこの日がやってくるなんて!!!

おれは、海を目指し、夢中で町の中を駆けていた。


「はぁ……はぁ……はぁ……。」


ようやく海にたどり着き、深呼吸をして上がった息を整えた。
堤防の上によじ登り、背伸びをして周りを見渡す。

あれ……?ない……。
港に何艘も停泊している船の中には見当たらない。
色んな方角を見渡して、1艘だけ、港からかなり離れた場所に停泊している船を見つけた。

……あった……。

本当にあった。
間違いない。鉄で出来た潜水艦……旗は掲げてなく、ボディに直接描かれたジョリーロジャー。
あのマークは間違いない!


「ハートの海賊団だ……!!!」


堤防から砂浜へ思い切りジャンプして飛び降りた。


おれの住む町はしょっちゅう海賊が立ち寄る町だ。
その為、治安がいいとは言えないが、海賊に落としてもらう金で潤っているのは確かだ。
町の酒場も宿屋も、賞金稼ぎも、彼らが来ないことには商売が成り立たない。

おれの生活の中にも当たり前に海賊が居た。
おれの親父が営んでいる小さな飲み屋にもしばしば奴らが飲みに来ていたからだ。
あいつらは、汚くて粗雑で乱暴で、好きにはなれない。

でも、海賊ってのはそういうもんだ。と思って過ごしてきた。
新聞で、あの人を目にするまでは。


夢中で潜水艦に向かって走る。
近くまで行って、大きな岩の陰に身を潜めて様子を伺った。

……かっこいい。
やっぱりそこら辺の海賊船とはレベルもラベルも全然違うぜ……。
目を凝らして見ると、甲板の上を時折白いつなぎを着た人が行き来するのが見えた。
わぁ……ユニフォームが白いつなぎってのも本当だったんだ。
汚らしい格好をした海賊が多い中、真っ白のつなぎをユニフォームにしているなんて!

町を走ってきた時は、白いつなぎの人は見かけなかった。
……ってことは、まだこの島に着いたばっかりなのかな。
隣の家のオッサン、意外と情報はえーな。


「おい、坊主。お前何してるんだ?」


急に後ろから声を掛けられ、肩が跳ねた。
驚き後ろを振り向くと、背の高い男が3人と、おれよりも背が低い女が1人立っていた。
男達の手には沢山の紙袋や箱が抱えられている。


「おめー、何モンだ?」


つばの短い帽子を被り、サングラスをかけた男が声を掛けた。


「お……おめーらこそ何モンだ!」


3人の男は、顔立ちや着ている服で痩せて見えるが、近くに寄ると結構がっしりしている。
本当は少し怖かったが、虚勢を張って言い返した。
この辺りは、民家も商店も何もない。
あるのは草むらと砂浜と、今は……ハートの海賊団だけだ。


「私たちの船になにか御用?……あ、市場の人?私なにか忘れ物でもした?」


女が、ゆっくりした口調で話しかけてきた。
……ちょっと待て。


「私たちの船って……。」

「あ、あのね。……アレ。」


ふんわり笑って指差した先には、やっぱりハートの海賊団の潜水艦。
口をあんぐり開けて、潜水艦と女の顔を交互に見やると、帽子の男が呆れた顔をした。


「なんでもいいけど、坊主。用がないならこの辺うろついてんじゃねーぞ。早く帰れ。」


そう言って、次々におれの横をすり抜け、潜水艦にむかって歩き始めた。
最後に女が「じゃあね」と笑い、先に行く男達に小走りで付いていった。


「……あのっ!!!」


思わず岩陰から飛び出したおれに、4人が足を止めて振り向く。


「あの、おれ……、」


勢い良く頭を下げて、夢中で叫んだ。


「ハートの海賊団に入りたいんです!!」


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