No.14-side:BOY
花屋で包んでもらった花束を、母さんの墓の上に置く。
萎れてそのままになっていた黄色い花を代わりに手に取った。
花なんか、そこら辺で摘んだもので良いと言うと、ハルさんが「しばらく会えないんだから」とピンクの花束を買ってくれたのだ。
墓前に跪き、目を閉じる。
母さん。……行ってくるよ。
いつものように、海風を頬で感じ、葉の擦れ合う音と波の音に耳を傾けた。
しばらくそうして、目を開ける。
石に刻まれた母の名前を見つめ、立ち上がった。
振り返ると、ハルさんとキャプテン・ローが少し離れたところで静かに立って待っていてくれた。
「……終わった?」
微笑んで聞くハルさんに頷いた。
ハルさんが、母さんの墓を見つめた。
「カリタス……お母様の願いが詰まってる名前ね。」
ハルさんが呟いた。
キャプテン・ローがふっと笑みを零す。
「海賊には似合わねえ名前だがな。」
「あら!でも、うちにはピッタリの名前じゃないですか!」
ハルさんが、笑ってキャプテン・ローに言い返す。
「“ハート”の海賊団なんだし!」
「ね?」と言っておれを見たハルさんに笑顔を返した。
「じゃあ、行くか。」と歩き出したキャプテン・ローに頷いて歩き出す。
歩き出して、すぐに、2人が足を止め、おれも釣られて立ち止まる。
墓地の入り口の柵のところに、グレーの修道着を纏った人物が見えた。
そのまま、歩いて行くと、シスターが数歩駆け寄るようにおれに近づいた。
「カリタス。」
「シスター……。」
「行くのね。」
後ろの二人を見ながら言ったシスターに「はい。」と頷き返す。
シスターは微笑みを浮かべ、おれの手を握った。
「大丈夫、貴方には神と貴方のお母様が付いているわ。」
「ありがとうございます。」
「体には気をつけるのよ。」
「……はい。」
キャプテン・ローが、歩き出す気配がして、慌てて「じゃあ……」とシスターの手を放す。
シスターが、歩き出したキャプテン・ローとハルさんに向けて声を掛けた。
「どうか、あなた達の行く海が、穏やかで平和なものでありますように!」
キャプテン・ローが肩を震わせ「くくくっ」と笑い振り返った。
「そんな、つまんねー海に行く気はねえよ!その祈りは撤回してくれ!!」
目をぱちくりさせているシスターに、ぺこりと頭を下げ、走って先行く2人に追いついた。
「……穏やかで平和なものだって……。」
「一体、俺らを何だと思ってるんだろうな。」
信じられないように呟いたハルさんに、キャプテン・ローが愉快そうに返した。
二人の会話に、こらえきれず、吹き出した。
笑ったおれを見て、二人も声を上げて笑う。
おれの肩に、キャプテン・ローの長い腕が回った。
重い。
温かい。
優しい。
彼の腕の重みが嬉しくて、嬉しくて、目の奥が滲むような熱を持ったが、笑いと共にごまかした。
ハルさんも、キャプテン・ローを挟んだ向こう側でクスクスと笑い続けている。
口角を上げたキャプテン・ローが、大きな手のひらで、おれとハルさんの頭をぐちゃぐちゃに撫でた。
船の近くで待っていた白熊さんが、コロコロと笑いながら帰ってきた俺らに、コクリと首を傾げた。
−END
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