かがやきに病める
「キミ、良い物持ってるね」
「?」
「……五条さん」
たまたま、クラスのやつと帰ることになって、その時に五条さんと出くわした。珍しくサングラスを外して隣にいる名前をまじまじと見つめている。嫌な予感がした。名前は警戒することなく蒼い瞳に魅かれているようであったし、この男が興味を示すなど良くないことが起こると決まっている。その時は軽く自己紹介をして自分の身元を明かすに留めていたが、今思えばただのクラスメイトにそこまでする必要がないと気付くべきだった。数日後、学校にいる
「目を合わせなければいい」
「で、でも……」
「気づかれたら襲われるぞ」
そうやって脅しを掛ければ、慌ててソイツから顔を背けた。この学校にいる呪霊は小さく、恐らくちょっと目が合ったくらいではどうこうならないだろう。付き纏われ、何かしら悪影響を及ぼすことは否めないが。それからというもの、名前は俺の傍にいることが多くなった。常にとは言わないまでも、呪霊を見かけたときは俺を盾にしたり、腕を掴まれしばらくその状態を要求されたりすることが増えた。叫んだり騒いだりするようなことはないが、読書に没頭する時間を阻害されるのは少々煩わしい。下校も殆ど名前と帰るようになり、それを津美紀に見られたのも不快だった。
「また会ったね」
忘れたころに五条さんはやって来た。しばらく姿を見かけなかったのもあって、完全に意識の外に置いていた。無意識に名前の前に立って、五条さんから隠す。その様子に彼が口元を緩ませた。
「やだな、別に取って食いやしないよ。ちょっと聞きたいことがあるだけで」
「……」
「僕ってそんなに信用ない?」
傷ついちゃうな、と思ってもないことを言って泣きマネをする姿は滑稽だ。
「で、僕が聞きたいのはさ……この子、視えるでしょ?」
「だから何だって言うんですか」
俺と同じにならなくたっていいだろ とは言えなかった。それを決めるのは名前であって俺じゃない。それに、以前五条さんが既に術式を持っているような発言をしていたのは覚えている。名前がただ視えるだけの人間じゃないということは俺も五条さんも分かっていての発言だ。
「視なかったことにして、ただ逃げることしかできないそれを消すことができる、祓えると知ったらどうなると思う?」
「それは、」
「消せるの?」
名前がつぶやいた言葉には、期待が込められていた。五条さんはこれ以上何も言わず、名前も聞かないで欲しい。名前は何も知らなくていいんだ。俺とは違ってちゃんと両親がいて、普通の家で、ただ呪霊が視えるだけ。呪術師になる必要はない。
「こいつは関係ない」
「それを決めるのは彼女だよ」
多分拒否権はないだろうけどね、という言葉に息を呑む。俺みたいに親に売られたわけじゃないのに、なんで……。狼狽する姿に五条さんは憐憫の表情を浮かべ、俺の肩を叩くとそのまま名前を連れて彼女の家の方へ行ってしまった。翌日名前から呪術師になるとが告げられたとき、俺はどんな顔をしていたのか、一つも思い出すことができない。
INDEX →