いつも通り食堂に会いに行くと、知らない男が名前の隣にいた。誰だよソイツ。雰囲気からして上級生のように見えたが、名前が愛想笑いをしていて、明らかに滑っているのが見て取れる。近づいて行けば、だんだんと会話の内容が聞こえてきた。
「テニス、楽しいよ?」
「バイトがあるので……」
「新歓だけ参加でも全然いいからさ」
は?テニサーで新歓だけとかの時点でどう考えてもダメなやつだろ。論外。つーか明らか困ってんのが分からない時点で有り得ない。男から無理矢理引きはがしてやっても良いけど、目立つことはするなってうるさいから、声を掛けるだけにする。
「名前、こっちで食おーぜ」
「五条」
ぱっと顔を上げて俺を救世主かのように見るもんだから気分が良い。そうだよ、俺がいなくちゃ困るだろ。そう思ってもらうために、ずっとお利巧さんな番犬を演じてやってんだ。いい加減、気づけよ。
「やっぱ心配だわ」
急に講義が無くなって暇だったから、空きコマの傑を捕まえてカフェテリアでだらだら過ごしていた。傑はスマホをいじりながら、何がと聞いてくる。
「名前にすぐ男が寄って来る」
「今更何を言っているかと思えば……」
現に絡まれてたんだから事実だと傑に愚痴ったら何でまだ告白しないのかと呆れられた。
「いいかい悟。普通なら君の行動は忌避されるし、一歩間違えばストーカーになるということを理解した方がいい」
「嫌がられてねえし」
「そういう問題じゃないんだよ」
じゃあ、どうしろって言うんだ。名前は俺のことを何とも思っちゃいないし、告白したところでどうなるか分かりきっている。あいつは気にして会おうともし無くなるだろ。そうなるのは嫌だから、周りを牽制して、ちょっとずつ外堀を埋めていこうとしているところだった。
「名前に彼氏が出来たらどうするつもりだい?」
「そんなもん出来るわけないだろ」
「名前から好きになったとしたら?」
「そん、なの……」
有り得なくは、ない。名前は俺の顔は好みじゃないから、そういう好みのヤツがいたらころっといっちまう可能性がある。現に前の時にいた"窓"の男とか、覚えがない訳では無い。でも、だからといってここで焦っても良い結果は得られないので、どうしようもなかった。