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 試合は18-16と僅かに烏野が優勢。ローテーションが回って月島が孤爪の前に来ると、孤爪は僅かに委縮しつつも月島を見上げる目は何か考えるように直ぐに逸らさなかった。

「……」

 コイツ……賢い奴だ。冷静によく見て考えるタイプの奴。翔陽とは真逆……。

「……」
「……?」

 烏野側のサーブが入りそれを山本が拾うと、ボールは綺麗にセッター位置へ返っていく。それには観客席でずっと見ていた滝ノ上と嶋田も気付いていて、レシーブのレベルが高いと舌を巻いた。

 レシーブのレベルが高ければセッター位置にボールが綺麗に返り、その分セッターが動かずに済む。つまりトスを上げるためのモーションが少なくて済むので、トスが何処に上がるのかギリギリまで相手に知られずにゲームメイクができる。

「……」

 孤爪は落下してくるボールを確認するとライト側に居た2番へ視線を向ける。その視線に目敏く気付いた月島が一歩ライト側へ寄ると鶫ははっと顔色を変え、孤爪は静かに落下してきたボールを受けた。

「レフトだよ」
「!」

 ボールはライト側に運ばれることはなく、月島を完璧に振り切った形でレフト側に運ばれる。レフト側にいた影山がブロックで跳んだがクロスで打ち込まれたスパイクはブロックをすり抜け、ボールを拾い上げようとしていた田中の腕を弾き飛ばした。

「研磨くん、フェイント凄く上手い」

 そう呟いた鶫にの脇に座っていた武田は少し眉を寄せながら、目立たないですねと言葉を溢した。

「うちの影山くんは素人が見ても、何か凄い感じがビシビシ伝わってくる……。けど音駒のセッターくんは何か凄いことをやってるのかもしれないけど見てても良く分からない……」
「それは音駒の安定したレシーブのせいだ」

 多彩な攻撃を仕掛ける為に何より重要なのは、セッターの頭上に綺麗に返ってくるあのレシーブ。

「あのレシーブがあるから向こうのセッターは本領を発揮出来てるんじゃないか。うちはちょっとくらいレシーブが乱れてもあの影山が力ずくでカバーしちまうけど……」
「……セッターである飛雄くんが圧倒的才能で不安定なチームを繋いでいるのが烏野、セッターである研磨くんを全員のレシーブ力で支えるのが音駒」

 俺達は血液だ、滞りなく流れろ、酸素を回せ

 「脳」が正常に働く為に

 音駒が円陣を組んで口にしていたその言葉を体現するように綺麗に繋がれたボールは黒尾のスパイクで烏野側のコートに沈んで、18-18という得点差で烏野に追いついた。

 それを見ていた鶫は、綺麗にボールを繋ぐ音駒の面々に心を躍らせてバインダーを持つ手に力を込めた。

「攻撃力は特出していないけれど、総合的には音駒が上……」

 それに日向くんが中心になっていた攻撃形態が崩れてからは、日向くんを中心にした得点を確実に減らしている。相手のブロックに触られてから飛雄くんも意図的にトスを減らしているし、今の日向くんにブロックを躱す技術はない。一番の対処法といえばそれまでになってしまうけど、音駒と戦う術を見つけないと勝機はない。

「……超人みたいなエースがいなくても、地道に丁寧に一点一点を積み重ねて行けば――」

 音駒高校、セットポイント。



「影山!」
「?」
「次こそバシッと決めるからトスくれ……!」

 次で失点をすればセットを落とすこの状況でその要求をしてきた日向に影山は僅かに目を細め、相手のセットポイントの中でミスをすればこのセットを落とすと冷静に告げた。当然それを分かっている日向は緊張で少しだけ息を飲んだものの、分かってる必ず決めると日向は返し、同時にホイッスルが鳴った。


 ――最初クリア出来そうにないゲームでも

 音駒側のサーブを西谷が受け、ボールは綺麗にセッター位置へと返っていく。

 何回も繰り返すうちに

 影山が受けたボールは既に飛んでいた日向の元に上げられる。

 ――「慣れるんだよ」

 日向に反応した犬岡がレフト側に飛び、日向がスパイクを打つ前にネットを越えた。

 それに気付いた日向と影山、ベンチで見ていた鶫は目を丸くした。犬岡が出した左手は日向のスパイクを確実に捕らえ、ボールをコートに弾き落としてホイッスルが鳴る。

 第1セット終了。25-22でこのセットを取ったのは音駒の方だった。

「――やっと捕まえた!」


  

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