※温度差で風邪引く
※後半のキャラ崩壊にご注意ください(特に伏黒恵)
「私ってば描写もされないレベルのモブだったのか!」
漫画を開いてびっくり、私の前世は「呪術廻戦」のキャラクターだったのだ!ドドン!
なんて思ったのもつかの間の儚い夢だった。
書店で「呪術」なんて付く漫画に何故か惹かれ、気分で1巻を購入した。家に帰って早速読もうと開いたら、脳内に今まで無かった記憶が流れ込んできた。そして、ストンと記憶が私に填る。え、私ってば漫画の登場人物だった??15年間普通に生きていた私にとって、とんでもない衝撃だった。前世が漫画ってどういうこと?そう思いながら漫画を読み始めた。…ら、私描写一切されてなかった。アルェー?虎杖くんが主人公で、うんうん、納得だね!両面宿儺の器なんて設定、絶対主人公枠だものね!うんうん!で、ばばーん!と恵くんが登場!!あの時の怪我ってこういうことだったんだね!?痛そう…。そしてばばばーん!と五条先生の登場!さすが最強!!ぶっちゃけ虎杖くんより五条先生が主人公だと思ってました!違ったね!!…で、私は?いや、モブなのは分かってるよ。私3級だったし。でもちらっと描写くらい…あれ、虎杖くんが高専に来てすぐに顔を合わせたと思うんだけど描写されてなかった。取るに足らない出来事ってことね。わかるよモブだもの!でも読み進めていく内に「…んんん?」となる。ガチで私の描写一切ないじゃん?そして4話の冒頭『一年がたった3人って少な過ぎねぇ?』の虎杖くんの台詞で「ア、嫌な予感」となった。予感は大的中だった。
ふぅーーーー
「モブどころか存在抹消されてるーーー!!」
1巻を読み終わった私はそう叫んだ。そう、私なんてキャラクターは存在していなかったのだ。え、ひどい。そんな扱いある?野薔薇ちゃん合流後も当然私は出てこなかった。私もあのとき一緒に行ったのに!恵くんの隣で2人の様子を見守ってたのに!あの後五条先生の奢りでザギンでスーシー食べたのに!そんなことってある…?と頭を抱えて、ふと思った。
オタク特有の妄想だったか、これ。
そりゃあ私はまごうことなきオタクですよ?ア●メイトには入り浸り、コラボカフェやイベにも積極的に参加。グッズ?BOX買い当たり前だろ。オタク生活超楽しい。学校もバイトも、愛しいキャラがいれば頑張れる。生きるって素晴らしい。金欠が辛い。ぐすん。
しかしここまで自分の妄想がひどいとは思わなかった。夢小説のヒロインにでもなりたかったのか。なおこの妄想の中では恵くんの彼女やってました。あいたたたたたた!おにいちゃーん!絆創膏持ってきてー!人一人包めるくらいのー!!!死にたい。現実と二次元はちゃんと別けてるつもりだったんだけどね?貴方支部の読み過ぎなのよ…。ブックマークが爆発してます。神しか居ない支部が悪い。授業中も読んじゃうんだ、いけない生徒でごめんね先生。
1巻を読み終え、脱力。あー宿儺さまかっこいいですね?一番好きなのは恵くんですけど。スマホでググって、どうやら結構な巻数が出ているようだと確認する。続き…読みたいけどなんだかなー。自分が痛々しいし、なんか読むのが怖い。私のオタク魂がなんか歪められそう。
「1巻を胸に、このことは無かったことにしよう」
精神衛生上それがいい。きっと読めばドハマリするだろうけど怖い、やめよ。
1巻を抱きしめ、ベッドに転がる。恵くん漫画になってもかっこよかったなぁ。私の妄想の中ではこの後ずーっと大変なことが起こるんだよな。地獄の渋谷。そこで恵くんが死にかけて、私が…わたしが?
ずきん、頭が軋むように痛んだ。
「恵くんには、死んでほしくないんだよぉ…」
ぐすんぐすんと涙が出てきた。妄想のお話でしょ、何泣いてんの。気持ち悪いな私。うー、と唸って枕に顔を押し付ける。ふー、はー。ちょっと落ち着いてきた。ただの妄想に振り回されすぎ。気持ちを切り替えよう、うん。
「虎伏って支部検索で出てくるかな」
知ってる?オタクの心って鋼で出来てるんだよ?
私ってば夢女でもあるけど、どちらかと言うと腐女子寄りなんだよね。虎杖くんめっちゃポテンシャル高いわ。沢山の萌えを秘めている。こりゃ、恵くんも落ちるわ(勝手に私が落とした)。善人絶対守るマン恵くんが善の塊である虎杖くんを好きにならないなんてあり得るか?いいや無いね!
この後めっちゃ萌えた挙げ句「やっぱ続き買っちゃおうかな…マジ虎伏滾る。尊い…」とか言い始めるから、ほんとオタクって強い。
「五虎…五悠か。アリだな最大手か。五伏…うんうん美味しい。師弟関係だもんね良き良き。はーーー!伏棘とかかわいいとかわいい掛けてどうすんのさ!死ぬ萌え死にする。でもやっぱり私は虎伏最推しです!!!」
なんてわいわい一人で騒いでたらお兄ちゃんが「どうしたのー?なんか良いことあった?」なんて聞いてきた。うるさくしてごめんね!流石にBなLの妄想してたとは言えないので「ちょっと楽しいことがあって!」なんて誤魔化した。「そっかー!それはよか……」お兄ちゃんの声が止まった。うん?お兄ちゃんの目線が一点に集中している。その目線の先には渦中の漫画。あ、お兄ちゃんも読んだことある?じゃあ続き持ってるかな、なんてお兄ちゃんの顔を見たら真っ青になっていた。え?どしたの???「ぅ…あ、ああああああうわああああああ!」いきなり崩れ落ちて泣き出したお兄ちゃんにびっくりした。なに!?え!何!?!?
「おおおおおお兄ちゃん!?どうしたの!?」
「ああああああああああああああ!!」
「お、お兄ちゃ、おねーちゃーん!!!助けて!お兄ちゃんが!!」
お姉ちゃんにヘルプを求めた。数秒で「何事!?」とお姉ちゃんが私の部屋に飛び込んできて大泣きするお兄ちゃんと机の上にある漫画を見て、お姉ちゃんも崩れ落ちた。なんで????お兄ちゃんが私を抱きしめ、さらにお姉ちゃんがお兄ちゃんと私を抱きしめる。なんだこの状況。よくわからないけど、行き場のない腕をお兄ちゃんとお姉ちゃんの背中に回した。
「し"あ"わ"せ"に"な"ろ"う"ね"え"え"え"え"え"!!」
「う、うん……?」
兄姉の情緒がよくわからない。
[newpage]
【虎杖悠仁の祈り】
もうずっと、伏黒の慟哭を聞いている。
伏黒の大事なあの子が死んだ時、伏黒は壊れそうになって。それでも必死に生きて。そして死んで。
再び生を受けても、伏黒の唯一だけがこの場所に居なくて。その地獄のような現実に、伏黒は壊れそうだった。追い打ちを掛けるかのように世間に出回ってるコレ。俺が主人公とかウケんね。なんて気軽に読んだらあの子が居なくて、何処にも描かれて無くて。うっかり漫画を読んでしまった伏黒が何度も何度も自殺を図って、毎回必死に繋ぎ止めて。もういっそ殺してやったほうがいいんじゃないかって思えて仕方がない。
ほんと、なんの地獄だよ。
前の2人はいつだって幸せそうだった。表情にあんまり表れない伏黒も、あの子が隣に居るだけで雰囲気が柔らかくなって。別にベタベタしてるわけでもない、ただ2人で居るだけの空間が和やかで心地よくて。「初々しいカップルより清いお付き合いかよ」なんて釘崎は呆れてたけど、ああいうのが『幸せ』ってやつなんだなあ、って。見てるこっちも幸せになれて。
なのに、どうして。
「死にかけてた俺に、反転術式掛けて…そのまま消えた」
消えた、とは文字通り消えてしまったらしい。後に聞いた俺は愕然とした。元々あの子が反転術式を使えるなんて話を聞いたことがなかった。誰も、そんな話を知らなかった。ただあの子は頭が良かった。理論は頭の中で出来上がっていたかもしれない。でも呪力が、能力が追いついていなかった筈なんだ。今世で出逢った五条先生が、難しい顔で言った。
足りないものを補うには。
酷だと分かっていても先生はあえて口にした。伏黒だってわかっていたんだろう。死にそうなほど青白い顔の伏黒に、俺は歯を食いしばった。
「あの子はさ、恵に生きてもらいたかったんだよね。どうしても。それがエゴで、結果恵を苦しめるって分かってたけど、それでも恵には生きていてほしかったんだ。自分を犠牲にしてでも」
結局伏黒は不幸なまま死んだ。当たり前だ、自分があいつを殺したようなものなのだから。そう伏黒は笑った。お前があの子を殺しただなんて馬鹿なことがあるか!怒ってやっても、伏黒は痛々しく笑っていた。
あれだけ前世が不幸だったのなら、今世くらい幸せになっていいじゃないか。あれだけ不幸を詰め込んだ終わりだったのだから、めいいっぱい幸せになるべきじゃないか。
「アイツが居ない世界で、息をするのが苦しい」
馬鹿だね恵。あの子の事なんか忘れて、幸せになればいいのに。なんて、五条先生は思ってもいない事を言った。無理でしょ、伏黒にはあの子が居ないと。多分伏黒が前世の記憶を無くしていたとしても、きっと無意識にあの子を探して、居なきゃ結局幸せにはならないと思うよ。
どの伏黒でも、伏黒の幸せはあの子の隣に居ることだろうから。
「神様にさ、願いたくなるよ」
悠仁、神様なんて信じてるの?なんて五条先生が笑った。温度のない笑いだった。信じちゃいないよ、でも縋らないとどうにも、この気持ちを抑えきれない。
どうか、伏黒が幸せになりますように。
俺達の最大の地雷であり、誰もが近づきたがらなかった渋谷に行った釘崎に「あの子見つけた!!居た!!!」と連絡を受ける1時間前の話である。
[newpage]
【伏黒恵の地獄】
どうして、アイツの居ない世界で俺はのうのうと生きているのだろう。
前世でアイツに命を救われて、アイツの居ない世界で苦しんで苦しんで、苦しんで生きて。救われた命だからと投げ出すことも出来ずに、痛みに耐えながら生きて、死んで。二度目の人生で、虎杖も釘崎も五条先生も他の先輩たちだって居るのにアイツだけ居なくて。
どうして俺は生きているんだ。
そんなの罰に決まっているだろう、頭の中でそんな声が聞こえた。だって俺は、先にアイツを置いて逝こうとしたのだから。形振り構わず自爆覚悟で摩虎羅を呼び出しておいて「なんで俺を置いて逝く」なんて言葉、言えるわけがなかった。摩虎羅を呼んで、そのせいで死にかけの俺を自分の命まで使って生かして。嗚呼憎い。なんで俺を生かした。どうしてオマエが死んだ。どうしてどうしてどうして。憎い憎い。自分が憎い。
罪の贖いを。
今の俺が生きている理由は、きっとアイツを殺してしまった罪を贖うためなのだろう。耐えきれず何度も死のうとして、虎杖たちに止められて。嗚呼、そうだまだ死ねない。俺はまだ罪を贖いきれていない。
苦しい苦しい、アイツが居ない世界で息をするのが苦痛だ。自分の首に手を掛ける。ああだめだおれはしねない。
おれは
「あの子見つけたわ!渋谷よ、場所は送るから飛んできなさい!」
初めて、自分の意志で息をした。
財布とスマホを持って家を飛び出した。渋谷、俺達の地獄。誰もが、五条先生ですら近づこうとしなかった場所だ。そこにあいつが、居る?走る、走る。もう出せない鵺に乗って飛んでいきたい気分だ。1分1秒を無駄にできない。「恵!!」走っていたら五条先生の声が聞こえた。車の窓を開けてこちらに声かける五条先生。「乗って!」その言葉に押され、俺は車に駆け寄った。自分が開けるより先に後部座席のドアが開き、伸びてきた腕に引っ張られる。
バタンと、背後でドアの閉まる音がして同時に車が動き出した。車内から引っ張ったのは虎杖だったらしい。引っ張られて虎杖の身体に倒れ込んだ体勢の俺は、そのまま虎杖に抱きしめられていた。虎杖の身体は震えていた。そんな状況に、熱が籠もっていた俺は少し落ち着くことができた。
「いた、居たって釘崎が」
「おう」
「本物か、わかんねえけど釘崎が嘘つくわけねーし…俺すごく嬉しい。やっと、やっと伏黒があの子に会えるんだって思えると、すごく、すごく嬉しい」
「…ありがとな、虎杖」
「よかった…本当にッ!」
虎杖は、前世からずっと俺を心配してくれていた。ずっと、今世でも迷惑を掛け続けていた。「よかったなぁ、本当に良かったなあ!」きらきらと、泣きながら笑う虎杖に、俺もぼろぼろと涙が出てきた。
「もー!2人とも泣くのは早い!あの子の姿を確認してからじゃないと!」
運転しながら、五条先生が明るい声で言った。
「しかし渋谷かぁ…僕ら誰もあそこに近づきたくなかったからなぁ…」
「そうっすね…よく釘崎見つけられましたよね」
「野薔薇、どーーーーッしても欲しいものがあったらしくってね。渋谷店限定だったんだって。『流石に知り合い連れて渋谷には行けないから血反吐吐いてでも一人で行ってくる。ストレスでブッ倒れたら硝子さんに連絡ヨロ』って伝言されてた」
「それでも行こうとする釘崎の精神力よ…」
「その御蔭であの子を見つけられたわけだ。野薔薇には大感謝だね!ブランド物のバッグでも買ってあげようか」
「コレに関しては貢がれたら逆に釘崎怒らん?」
「怒るね!」
みんな、声が跳ねていた。みんなで、ずっとずっとあいつを探していたのだ。
はやく、あいたい。あって、あって…?
「会って、いいのか」
俺が殺したあいつに、会う資格はあるのだろうか。俺のせいであいつは未来を絶たれた。俺が居なければあいつはまだ前世で生きて、もしかしたら全てが解決した世界で幸せに生きていけたかもしれない。
俺が居ない世界で。
「伏黒はどうしたいんだ?」
「…俺、は」
「良いのか悪いのか、じゃねえんだよ伏黒。これはお前の人生だよ、お前が好きなように選択して良いんだ。大体『俺があいつを殺した』?違うだろ」
「いいや、俺があいつを」
「あの子が伏黒を『救った』んだ!いい加減自分を否定することも、あの子を否定することもやめろよ!」
否定なんてしていない。ただ自分を赦せないだけ。
「伏黒が自分を赦せないなら、俺が、俺達みんなが伏黒を赦すよ。そんでもってあの子にも聞いてみろ。『お前は俺を赦せるか?』って」
「…そんなの、」
赦す、って言うに決まっている。あいつは誰よりも優しい人間なのだから。
呪いの言葉一つ吐き出さず、あいつは死んで。
「もういい加減、自分で自分を呪うのをやめろ。この世界に呪いはないんだから」
お二人さん、着いたよ。
車は停まっていた。虎杖は車から降りて、俺は中々動けなかった。「伏黒、いくよ」虎杖が俺の手を引く。
ひどく青々しい空。瞳に呪霊は映らない。呪いのない、美しい世界。
「もう、苦しまなくていいんだよ。幸せになっていいんだよ」
ごめんね、と懐かしい大好きだった人間の声が俺の背中を押した。謝るのは俺の方だ。
呪い呪われの世界はもう無い。
[newpage]
[newpage]
「やばいイケメンたちが来た」
レジに居た子のテンションがやたら高かった。ホールが一瞬ざわついたなぁとは思ったけど、ちょっとキッチンのお手伝いしてたから何が起こったのかわからなかった。「どんなイケメン?」と聞いたらスマホ審神者やってる子が「鶴丸に似てる」と返した。それはやばいイケメンだ。一気に興味が湧いた。
「あとなんだっけ、弟が読んでるじゅ、じゅじゅ?なんちゃらって漫画に出てくるキャラにみんな似てた」
「えー…それってもしかしてコスプレって事?」
「かもねー。ハロウィンでもないのに、ていうかハロウィンもだけどさ。公道とかでのコスプレはやめてほしいよね。ヲタのマナーが〜とか言われちゃう」
周りの目を気にするオタクなので、それ聞いてテンションが下がった。「まあ服装は本当に普通だったし、ただ似てるってだけかもしれない。よく読んだことないし」そう言えばこの子ガチ審神者だった、他のジャンル見向きもしない子だった。じゅじゅ…正式名称どんな漫画なんだろ?ぴんぽーんと呼び鈴が鳴ったので頭を仕事に切り替えた。
「…ご、ご注文お伺いしまーす…」
行ったらコスプレ(仮)一行の卓だった。眩しいほどのイケメン!ていうか鶴丸じゃなくて五条先生にソックリ!!じゅじゅ、って呪術廻戦のコスプレだったかー!服装はほんと普通に私服っぽかった。虎杖くんと野薔薇ちゃんと…めぐ、いや、伏黒くんも居た。完成度高すぎない??マナーがどうのって言ったけど実際目の前にするとにやけそうでやばい。でもなんか全員私の顔をガン見してくるから怖い。え、顔キモい?にやけてる私??見ないでお願い。
窓側に虎杖くんコス、その隣に五条先生コス。対面窓側に野薔薇ちゃんコス、その隣に伏黒くんコスという配置。うーん、虎杖くんコスの隣に伏黒くんコスの人配置してほしかった。
五条先生コスの人がにっこり笑う。
「僕たちのこと、憶えて…いや、知ってる?」
「ぅ、えあっ!じゅ、呪術廻戦のキャラのコスですよね!どっかでイベでもやって…ヒッ!」
五条先生コスの人がスンッと真顔になった。虎杖くんコスの人は口をあんぐりと開け、野薔薇ちゃんコスの人が「は??」と声を出した。こわ。伏黒くんコスの人は一切表情変わらず、というか最初から無表情で。しかしじっと私を見つめていた。
「…あの漫画、読んだの?」
「エッはい!昨日読んで!まだ1巻だけですけど…ッ」
なんか、気温が一気に下がった気がする。誰か空調弄った?めちゃくちゃ寒い。まだ暖房でいい時期だよ、冷房は消そうね。すすっと腕を擦る。なんか空気もどんより重い気がする。再び五条先生コスの人が口を開いた。そろそろご注文をどうぞ。
「…あれを見て、どう思った?」
「どう、とは?」
「何か足りないとかさ」
どんな感想求めてるんだ?わけがわからないよ。
オタクテンションからだいぶ正気に戻った私はちょっと可笑しなお客様たちに疑念の眼差しを向けた。もしかしたらあんまりよろしくない人たちなのかもしれない。変な人には気をつけなさい!と常々兄たちに言われているので少し警戒を強める。「あ、やば」どうやら私の心情を察知したのだろう五条先生コスの人が少し慌てる。
「…ご注文をどうぞ」
「えぇと、」
「灰原」
ぽつり、だいすきだった恵くんの声がその場に落ちた。目線を五条先生コスの人から移す。
なんで、私の名字知ってるんだろう。名札かな。あれ、でも今日つけ忘れてる。付けないとチーフに怒られちゃうから後で付けなきゃな。なんて考えて。
「灰原」
もう一度、呼ばれた。
「俺は、もう一度お前に会いたかった」
「―――めぐみくん、?」
「駄目だった。一目見ればもう十分かと思ったけど、目の前に灰原がいると、自覚したらもうだめだ。俺はお前を手放せない。今度は、絶対」
ぐい、と腕を引かれ私はバランスを崩した。そのまま恵くんに抱きしめられる。
「大好きだ。もうずっとずっとずっと好きなんだ。お前が死んでからも、俺が死んでからもずっとお前だけを想って呪って呪われて。お前が居ないと息が苦しい、生きるのもつらい。お前が居ないとおれは、もう生きていけない」
大好きだった恵くんの体温だ。匂いも、声も姿も、全部全部私のだいすきな。
…いや…恵くんってこんな性格だったっけ…?というか、え?
ぎゅうううううと痛いほど抱きしめられている。呆然とする私。ちょっと遠くでガシャンと何かが割れる音。「ちょ、従業員に白昼堂々セクハラするなー!顔が良いからって何でも許されると思うな!!てんちょー!!警察呼んでくださーい!!!」と叫ぶ声。「あああああ!ちょ、ちょっと待って!俺たち知り合いです!!友達です!!なぁ灰原!?」慌てる虎杖くん「伏黒ォ!お前何やってんだ!馬鹿!離せ!」私と恵くんを引き剥がそうとする野薔薇ちゃん。「あははははははは!恵やっぱイカれてるね!!!」と大爆笑の五条先生。何この阿鼻叫喚。
ていうか、
「あれって、私の妄想じゃなくて本当に[[rb:リアル > 前世]]?」
ということらしい。
[newpage]
灰原家末っ子
一家で渋谷在住。高校1年生。三人兄妹の末っ子妹。年の離れたお兄ちゃんとお姉ちゃんが居る。兄姉だいすき!なんか兄姉、特に兄の方が妙に過保護なのが気になる。
前世では植物組の同級生だった。伏黒とお付き合いしていた。めぐみくんだいすき。渋谷事変で死にかけていた伏黒を救うため、自分の命を使って伏黒を蘇生させた。そして存在ごと消えた。今世で前世が漫画になってて読んだけど自分の存在が一切抹消されていたので、前世の記憶はただの自分の妄想だと思っている。やべえ妄想癖だな?前世の記憶で合ってるんだよ…。
(前世引き継ぎ)無自覚地獄生成装置。
ヤンデレに死ぬほど愛されて夜もぐっすりの未来が待っている(鋼の精神)。
現代オタクライフがとても楽しい。生きるって幸せ!ひゃっはー!!BLは生きる糧。二次創作は人生。最推しカプは虎伏。お前には人の心がないのか。オタクの心ならあります。
二十歳くらいに某同人即売会で虎伏の同人本(良心があったので全年齢)発行するんだけど、売り子に恵(周りからは完成度高いコスプレだと思われている)連れて行くからやっぱり夢主には人の心がない。勝手についてきたんだってば。私のせいじゃない。私は虎杖くんのコスプレをすればいいのか??本人連れてくれば良くない???やめて差し上げろ。
灰原家長男
灰原さん家の雄くん。妹が2人居る。妹たち大好き。
(前世で)上の妹さんに私は普通に非術師として就職して普通に生活して結婚もしたけど、下の妹は呪術高専に行ったよって聞いてSAN値ピンチになったし、15歳で死んだよって聞いてSAN値チェック失敗した。享年15って僕より短い人生だったの…?胸が痛い。「七海!なんで止めてくれなかったの!?ばかばか!」まだ会えていない七海に文句を言うが、七海さんも死んだよって聞いて1週間くらい部屋に引きこもった。
今世では超シスコン。幸せになろうね!!って妹甘やかしている。呪術廻戦の漫画読んでまた絶望した。あれ、僕の妹って高専に居たんだよね…?え、存在が消されてる??これ絶対見せちゃいけないやつ(隣の部屋で読んでる)。
そして今世でヤンデレに死ぬほど愛されてる妹を見て白目向いてる。え…大丈夫?これ妹逃さなくて大丈夫??妹がケロッとしてるので「まぁ…いいのか…?」ってなってる。妹を幸せにしてくれるのならもうなんでもいいや!!!(考えるのをやめた)
他のみんなが渋谷をめっちゃ避けていたため夢主が恵たちと再会するまで他の人達が転生してることを知らなかった。まあ仕方ないよね。
妹たちがBなLが好きなことを知らない。知らないほうが良いことって世の中にはいっぱいあるよ。
灰原家長女
兄の言いつけどおり前世では呪術界とは殆ど関わらなかった。でも妹はいくらとめても呪術高専に行くと聞かなかったので諦めて送り出したら兄同様死んでしまった。こうなるってわかってたよ。死ぬほど泣いた。前世での状況報告は全て夜蛾さんより。そりゃあ家族には知らせるわ。
今世では兄も妹も幸せになろうね!ってなってる。
今世で妹がヤンデレに死ぬほど愛されているのを見て真顔になる。でもまあ…相思相愛っぽいし…大丈夫…なのかな?
妹は姉を見て育った。つまりそういうこと。なお七灰(雄)ガチ勢。姉妹揃ってやめて差し上げろ。
伏黒恵
前世で夢主の恋人だった。
前世で夢主が死んでからずっと地獄で生きていたし、今世でも物心が付いたときには前世の記憶があったのでやっぱり生き地獄。数え切れないほどの自殺未遂をしている。今世で必死に夢主を探しているのに呪術廻戦の漫画読んでガチ発狂した。あいつは何処へ消えた?何処にも居ない?ずっと発狂してる。ぎりぎりで生きてる。
渋谷で見つけたと連絡を受けて秒で飛び出した。もう絶対死なせない。俺が守る一生守る誰にも害させない。絶対に絶対絶対絶対ああああああああああ。だいじょうぶ、発狂しても絶対に恵は夢主を害さない。夢主の幸せが俺の幸せ。
再会してからはずっと夢主の側から離れない。でも学校は違うから休み時間置きにメッセージして生存確認をしている。毎日学校までの送り迎えをする。そのうち同棲する。おいおい監禁するなよ?って周りから口うるさく言われるが、そんなことはしない。家にいる間はずっと夢主の背後にべったり。トイレ以外ずっとべったり。お風呂も一緒。ある意味監禁…軟禁では?恵にみんなドン引き。まったく動じない夢主に宇宙猫。
そういえば、夢主に痴漢をした男がいたけど、その場で取り押さえられて警察に捕まったね。その翌日、通勤ラッシュの時間帯にその男が線路に飛び込んで自殺したけど、本当に迷惑なことこの上ないね。…恵なんかした?別に疑ってないよ確信はしてるけど。うるさいですよ五条先生。元呪術師はみんなイカれてる。
夢主が描いた本をうっかり見てしまい(夢主は血を吐いた!)「……………へぇ、虎伏…へぇ……」ってなる。まぁ夢主が望むなら吝かではないよね。夢主を連れて虎杖家直行。とんでもねえ巻き込み事故を起こされる虎杖が居た。やめたげてよぉ!
虎杖悠仁
前世で恵が死ぬまで側で見てたし、今世でもずっと隣で恵の地獄をみていた。
前世で幸せそうにしている2人を思い出しては、泣きそうになる。幸せになってくれと本気で願っていた。
今世で漸く再会できて良かったな!ってボロ泣きする。とてもいい子。
とある日、恵に服ひん剥かれて「俺を抱け」とか言われるとは思いもしない。とんでもねえ巻き込み事故。ぎゃん泣きして未遂で終わった。良かったね(ざんねん)。
釘崎野薔薇
どうしても渋谷にあるお店に行きたくて、前世の記憶に蓋をしながら渋谷にショッピングに来たら「いっけなーい☆バイト遅刻遅刻ぅ!」って猛ダッシュする夢主を目撃して目をひん剥く。ダッシュで追いかけるが夢主足が早すぎる。必死になって追いかけたらファミレスの裏口に入っていったので、暫く待ってファミレスを覗き込んだら制服に着替えた夢主をばっちり確認したので「あの子居た!」と全員に知らせた。ファインプレー。
五条悟
今世ではどこぞの大企業の御曹司。先生ってよく呼ばれるけど先生じゃないんだよ。勿論先生って呼んでいいよ?
どこぞのクソヒモ野郎(今世は嫁一筋でちゃんと仕事してる)に「お前前世で恵にどんな生活送らせてたんだよ。ウチじゃ手に負えねえよ」て真っ青な顔されて、数え切れないほどの自殺未遂をした恵を引き取った(白目)。
ほんと、今世で再び巡り会えてよかったね。この病みさ、夢主を監禁しそうだけど大丈夫かな…心配してたけど大丈夫だった。それより夢主の図太さはなんなの??この彼氏にこの彼女ありってか。
夢主が発行した虎伏同人本の表紙を見て「どうして??」ってなった。それを僕の前に持ってきた恵の精神も疑った。どうして??布教???正気か????(正気じゃない
[newpage]
お兄ちゃんたちには「大丈夫?本当に大丈夫??」と心配された。毎日連絡を入れるから一言でいい、ちゃんと返事を返すこと。と念を押された。ちょっと信用なさすぎでは?とは思ったけど背中にべったりと貼り付いている恵くんが居ると、どんな言葉も説得力がゼロになる不思議…でも何でもないね。
専らみんなから「ヤンデレ彼氏伏黒恵」と呼ばれる今日この頃の恵くん。そんな人物と二人暮らしをすることになったのだから周りは当然警戒するだろう。でも安心と信頼の実績がある虎杖くんが「伏黒は灰原が嫌がることは絶対しない!」と私の家族を説得したので、なんとか同棲に漕ぎ着けたのだ。いつうちの家族と仲良くなったんだろうか虎杖くん。「虎杖くんがそう言うなら!!」なんてお兄ちゃんの信頼を勝ち取っていた。
しかしよかった、うまく話がまとまって。
まだ学生という立場で、恵くんと二人暮らしってどうなんだろうって思ったけど、なんか恵くんをこれ以上一人にしておけないって思った。仄暗い恵くんの目が怖いのだ。二人でいるときは、昔みたいに柔らかい感じだから、きっとこれでよかったんだ。そう自分に言い聞かせる。
「恵くーん、部屋の片付けしよう?」
「…ん」
ぎゅっと私の身体を抱きしめていた腕が離れていった。前世では手を繋ぐぐらいだったのに今じゃ抱きしめが当たり前で。恵くんはすりすりと私に頬擦りして、最後に唇を落とした。ここで漸くぴったりと背中にくっついていた恵くんの身体が離れた。もうね、スキンシップのレベルが高すぎてね…それに慣れてしまった私も中々だと思うんだ。「平然と見せ付けられてるのなんなの?」と五条先生がけらけら笑う。それだけで済ます五条先生もなんなの?元呪術師はみんなイカれてる。
「引っ越しの手伝い、ありがとうございます五条先生」
「ぜーんぜん!教え子が幸せになる為の手伝いなんて、沢山しちゃうよ」
「というか、広すぎませんかねこの家」
この家は五条先生が用意してくれたものだ。
恵くんと高校が違うのはしょうがない。だって高校生になってから会えたんだから。転入も考えてはみたけど、私は今の学校を離れたくないし、恵くんが「俺がそっち行く」って言ってくれたけど虎杖くんも野薔薇ちゃんも、先輩たちだって居る学校だ。勿体ない。すごく不服そうな恵くんをなんとか説得した。
じゃあ家は君の学校の近くにしようか、なんて五条先生が張り切って探してくれた。なんで私の学校の近く?なんて思ってたら「毎日送る」と恵くんに言われた。ああ…なるほど。五条先生もよく分かってらっしゃる…。
そして五条先生が用意してくれた家、マンションとかじゃなくて一軒家なんだよ。びっくりしたよほんと。…どう見ても新築っぽいんだけど、探したって家じゃなくて土地…?私はもう色々考えるのをやめた。今世でも五条先生なんだなぁ…としみじみ思った。
「リビングは僕に任せて、とりあえず自分たちの部屋片付けて来なよ。一応…別で良かったんだよね?」
「べったりには動じなくなったんですけど、流石に自分だけの部屋は欲しいです!」
ちょっとね、見せられないものが沢山あるので!ちょっと顔を引き攣らせた。「まあ女の子も色々あるもんね。本気で嫌がったら恵もそこまでべったりは……ウン、大丈夫…かなぁ…」本当に恵くん今世で信用ないね?どうしてそうなったの?「うん、君のせいだよ??」それは、不可抗力というやつでは?自分を犠牲にして恵くんを助けたことに、私は後悔はしていない。「ほんと、ひっどい女」と五条先生が笑った。
「灰原の嫌がることは、絶対しない。縛っても良い」
「呪力ないから意味ないよ」
「じゃあ約束する。でも灰原の部屋には入る」
「入るのね…。まぁ引き出しとか、物色しなければ…うん」
「灰原しか触らない」
それはそれでどうなんだろうか…。慣れたのでもう気にしない。
「よーし、荷物運ぶぞー!」
「…荷物結構混ざったな」
「私のは分かりやすく『灰』ってダンボールに書いてあるよ」
「わかった」
恵くんがひょい、と『灰』と書かれたダンボールを持ち上げた。自分の部屋を片付けなよ、って言ったけど「俺の荷物は少ないから」とそのまま私の部屋へ向かってしまった。私もダンボールを抱え恵くんを追いかける。
「俺がダンボール運ぶから、灰原は開けて部屋の片付けしてろ」
「うん、ありがと」
お言葉に甘えよう。どんどん荷物を運んでくれる恵くん、私はダンボールを開けて物を棚へと収めていく。暫くして「なあ」背後から声を掛けられた。振り向かず「んー?」と返事をする。
「なんにも書かれてねえんだけど、多分俺のじゃないダンボールがあった」
「あれ、私名前書き忘れたかな…中身なんだろ。開けてみて」
「ん」
べり、とガムテープを剥がす音が聞こえた。えーっと、これは何処にしまおうかな。「…なんか、上の隅に『同』って書いてあるな」ぽつりと部屋に落ちた恵くんの言葉に身体が固まった。…『同』…?思い当たるフシが有りすぎてバッと振り返り「それ駄目!見ちゃだ、」じっとそれを見つめる恵くんの姿が目に写った。私は両手で顔を覆った。
「……」
「…め、めぐみくん…そっと、そっと閉じて…ダンボールの蓋を…」
「『虎杖×伏黒アンオフィシャルファンブック#1』…」
「いやあああああ!戻して!ダンボールに戻して!」
「お前、こういうの好きなんだな」
「読まないで!お願いだから!」
「…?あれ、これお前の絵か?」
「殺せ、私を殺せ今すぐにだ!」
恵くんさっき私が嫌がることはしないって言ったじゃん!!床に崩れ落ちる私なんて見向きもせずぺらり、ぺらりとページを捲る音が聞こえた。一切の容赦なし、ひどい…酷いよ恵くん…。一番酷いのはそんなものを描いた私である。もう一思いに殺してくださいお願いします。「現実と二次元はちゃんと分けてるんだよぉおお…漫画の虎杖くんと伏黒くんの話であって恵くんのことじゃないんだよぉおおお…」すごい言い訳だなと自分でも思った。一応罪悪感というものは存在しておりまして、ほのぼのしか描いてないです!軽いスキンシップだよ!まだ18歳未満だしね!!
「…ん、わかった」
「何が?何が分かったの?私の性癖??やめて!」
「どんな灰原でも俺は大好きだぞ」
「ありがとうね!でも言い訳をさせて!!」
この後恵くんが虎杖くんに特攻するとは思いもしない。
おわれ.
死んだモブ子の第2の人生。
モブ子の前世が呪術廻戦の世界で、今世ではモブ子含め登場人物みんな呪霊や呪力がない平和な世界に転生してる設定。前世ではなんやかんやあって問題は全て片付いたけど被害は甚大で、生き残ったみんなは結局死ぬまで地獄だったよ。
今世でも前世の地獄に引っ張られてる伏黒恵が、漸くしあわせになる話。
シリアスじゃなくてシリアル。
恵くんにはクソデカ感情を持っていて欲しい。クソデカ感情通り越して狂気だよ。SAN値チェック大丈夫ですか??
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