……ぴちょん。
頬に当たる冷たい感触。
……ぴちょん。
「……ぅ」
再度頬に落ちた雫に私は小さく呻き、
「……あぁ、気が付かれましたか」
身を起こすと、横手からゼロスの声がした。
起き抜けの頭では状態が把握できず、私はボーッと床を見つめる。
「……ユウさん……?」
呼び掛けに彼の方を向き、
「…………?」
そのままくるりと辺りを見渡す。
辺り一面は湿っており、私自身もずぶ濡れだった。
あぁ……罠に掛かって流されたのか。
ようやく状況を理解した私はもう一度ゼロスの顔を見て、眉をひそめた。
「何でゼロスは濡れてないの?」
そう。
一緒に流されたはずのゼロスは、何故か一滴たりとも雫をしたたらせてはいなかったのだ。
その疑問に彼は、
「それは秘密です♪」
と、人差し指を口に押し当てにこやかに答える。
「……………………」
「いやぁ、はっはっはっはっ」
ジト目で見る私。
笑顔で誤魔化す彼。
「はっはっはっ」
「………………」
「はっはっ……」
「………………」
「ま、まぁ良かったじゃないですか」
「何が?」
私の無言の視線に耐えられなくなったのか、ゼロスは話をそらした。
不機嫌を隠さず問い返す私に、彼はコチラ……私の服を指差し、
「水浴び、出来たじゃないですか♪」
「……だから罠に掛かって良かったとでも?」
確かに先程の砂埃はものの見事に流されてはいるが、だからと言って濡れたままというのもいただけない。
かと言って、ここでゼロスを問い詰めた所で事態が変わる訳でもなく。
まして彼が素直に非を認める訳もなく。
「………………はぁ」
私は思考を切り替えるように長めの息を吐き出しすと立ち上がり、
「まぁ、踏んじゃったものは仕方ないですし、いつまでもココに居るわけにもいかないし、行きましょうか?」
責任の所在を追及したところで直ぐに服が乾くでもないし。
それならとっとと探索を終わらせて、着替えた方がずっと堅実的である。
そう思って先を促せば、こちらを窺うように名を呼ばれた。
「……ユウさん?」
「何?」
「あの……怒ってないんですか?」
「何を?」
「僕が罠を踏んじゃた事をです」
それを聞いて私は「あぁ」と納得する。
「さっきも言ったけど、踏んじゃったものは仕方ないじゃない」
「……はぁ……でも……」
「それとも怒った方が良い?」
「それは……まぁ何と言いますか」
私が聞き返すと、彼は困った様にポリポリと頬を掻いた。
「踏んじゃったものは仕方ないし」
「………………」
「水浴びもできたし?」
冗談めかしながら肩をすくませれば、ゼロスは何か言いたげに口を開閉し、やがて困ったように笑いながらポツリと呟いた。
「変わった方ですねぇ」
───と。
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