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後ろを付いてくるゼロスの気配を感じながら、私は杖を片手に黙々と歩いていた。

しかし。

こうも景色が変わらないと時間感覚も狂ってくる。

特に何がある訳でもない一本道。

とその時。

───カチッ。

と何かが動いた音が聞こえた。

私は嫌な予感にさいなまれながら、ゆっくりと振り向く。

見れば片足をあげ、床の出っ張りを踏んじゃいましたと言わんばかりのゼロスがそこに居た。



「いやぁ、考え事してて、つい……」



困った様に笑い、彼は頭をポリポリ掻きながら言う。



「…………で?」



言いたい事はそれだけ?

ジト目を向け、そう問おうとした言葉は、天井から聞こえた音によって飲み込まれた。

ガコンっ、と何かが開く音に慌てて見上げれば、大量の何かが降り注ぐ。



「───っ!?」



私は声にならない悲鳴を上げ、その場にしゃがみ込んだ。

ぼとぼとと何かが体に当たり、その内の一つが背中に張り付く。



「いやぁああっ!! 何々何々っ!?」

「これはまた何とも悪趣味ですねぇ?」

「呑気なこと言ってないで早く取って下さいぃっ!!」

「そんなに怖がらずとも、ただの紐ですよ」



………………。



「…………ひも?」

「はい」



恐る恐る振り向くと、そこには千切れた紐を持つゼロスの姿。

私はそのまま上を見やり、天井から吊り下げられた何本ものそれらを目の当たりのする。

どうやら罠と言うよりは驚かすことを目的とした仕掛けだったのだろうが、長い年月のうちに古くなり千切れた紐が私の上に降り注いだようだ。

その事に気づき、私は深い安堵の息をついた。



「大丈夫ですか、ユウさん」

「えぇ、まぁ……何とか」



言って私は立ち上がるが、自身の姿を見下ろして、今度は諦めにも似た溜め息をつく。

当たり前の話、紐が朽ちる程の長い年月が経っていたのだ。

砂埃が一緒に降ってきても、何の不思議もない。

元は白かった法衣を見ながら、私はポツリと願望を呟いた。



「水浴びしたい」

「と言われましても……」

「水浴び……」

「や、やだなぁ……そんな恨めしい眼で見ないで下さいよぉ」



こうなった原因のゼロスを見ると、彼は後退り……。



ポチっ。



と再び嫌な音。

って、まさか。

思った時にはもう遅い。

彼が踏んでしまった仕掛けは、遠くから地鳴りを響かせた。



ゴゴゴゴゴゴ……。



何かが地を這うような音は大きさを増し、振り向く私の視界には、こちらに向かって迫り来る大量の水。



「うっきゃあぁあぁーっ!」



私は一目散に走り出す。



「ばかーーーっ! ゼロスのばかあぁぁあっ!!」



泣き言を叫びながら全力で走る私の隣では、ゼロスが笑っていた。



「いやぁ、困りましたねぇ……」



全っ然困ってない顔で言うゼロスに、殺意に似た何かを覚えるが、今はそれどころではない。

呪文を唱えるが間に合わず───。



どばしゃーん!

私達はものの見事に激流に飲み込まれてしまった。

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