「ぐぁあぁぁぁっ!?」
突如、ガーヴの腹から黒い何かがほとばしり、
「く、き、貴様……い、いつの間に……」
苦痛の声を上げ、ガーヴはあたし達の後ろへと問い掛ける。
そのことに慌てて振り向くあたし達。
今の絶叫でアメリアに治療されていたゼルも気が付いたらしく、立ち上がり、そちらを見た。
そこにいたのは。
そこに存在したのは───。
「あっはははは。ぼくならさっきから居たよ。魔竜王ガーヴ」
笑みさえ浮かべて、岩の上に座っていたのは他でもない。
あたし達に、この竜の峰への地図を書いてくれた少年だった。
「ぼうや」
今まで岩陰に隠れて居たマルチナが、それを見て驚きの声を上げる。
「もっとも、ゼロス以外はぼくの正体に気付いてなかったみたいだけど。リナ=インバースも、そして君もね」
「……あんた何者?」
あたしは少年を見据え、彼に尋ねた。
まぁ、尋ねたところで大体の想像はついているのだが……。
完全版の神滅斬で切り付けてさえ生きてるようなガーヴに、簡単に膝を付けさせる相手となると、おそらく───。
「そうそう、名前まだ言ってなかったね。ぼくの名前はフィブリゾ。冥王って呼んでくれて良いよ」
『っ!?』
楽しそうに告げられた名に、皆が息を呑むのが分かった。
マルチナに到っては、「また魔族……」と呟きながら頭を抱えている。
しかし……やはりそうか……。
「いよいよ黒幕の登場ねって言いたいとこだけど、まさか、とっくにご対面していたとはね」
あたしの言葉に、フィブリゾは笑みを深くした。
「つまり、あたしは完全に引っかけられたって訳ね。アンタとゼロスの2人に」
「子供の姿は何かと便利なんだ。人間て面白いもんで、この姿をしていると、あっさり油断してくれるからね」
───そう。
あたし達は完全にだまされたのだ。
この姿に。
「ま、確かに皆思い通りに動いてくれたね。ガーヴも予想通りのこのこ出て来てくれたし」
言ってフィブリゾは空に浮かび上がり、かと思うと、次の瞬間にはガーヴの目の前の岩に、膝を抱えて現れた。
それは丁度、膝をついたガーヴと同じくらいの目線で、フィブリゾはからかうような調子で言葉を続ける。
「精神体の一部を切り離した姿のお陰で、君にすら正体を気付かれなかった。折角なら人間の部分を追い出してやろうかと思ったけど、どうやら、もう純粋な魔族に戻すのは無理みたいだね」
ニコニコと、満面の笑みを浮かべるフィブリゾ。
その姿は、無邪気そのもの。
───だが。
「と言って、このままの状態でいまさら絶対服従を誓うとは思えない。となればやっぱり、結論は一つしかないね」
「く、き、貴様あぁっ!」
目の前のフィブリゾを睨みつけ、ガーヴが牙を剥く。
───その瞬間。
突然、持続時間ゼロの『明かり』のような光が辺りを覆い、あたしは堪らず手をかざした。
───そして、聞こえた金属が触れ合うような音。
……しゃらん、と透き通った音が響き渡る。
───この音は……!?
しかし、音源を確認しようにも、目が眩む程のまばゆい光に遮られ、
あたしはきつく、
きつく瞼を閉じた。
あとがき
福音───喜ばしい知らせ。
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