差し込む明かりが部屋の中を照らすが、昼間のそれとは違い、ぼんやりと浮かび上がらせるだけ。
天井、窓、テーブル、花瓶。
月の光を浴びたそれらは、どれも一般的な物である。
という事は、ここは宿屋なのだろうか?
喧騒はまるで聞こえず、虫の声すら聞こえない。
そんな中。
───ふと、私が目を覚ましたのは、ひんやりとした何かが額に乗ったからだった。
視線を横にずらせば、そこには人影がある。
暗闇の中で光る紫色の双眸。
その人物に思い当たった私は、そっと彼の名を呼んだ。
「……ゼロ……ス?」
「はい」
そう短く返事をした彼は、私の額に手を乗せながら、こちらを見つめている。
その表情は無。
笑顔でもなければ、怒っている様子でも無い。
昼間はあんなにイライラしてたのに……。
そんなゼロスが、ポツリと呟くように口を開いた。
「気分は……どう、ですか?」
「ん、大分良いよ」
「そう……ですか」
そして落ちる沈黙。
彼の様子を窺えば、何かを言いあぐねているようで。
先程とは一転、落ち着きなく視線をさ迷わせている。
「……私、どれくらい寝てた?」
「え? あ……あぁ、半日ほど……ですかね」
私が尋ねると、ゼロスは慌てたように答えた。
それには触れず、質問を重ねていく。
「リナさん達は?」
「隣の部屋に……何かあれば遠慮なく呼ぶように、と……」
「そう」
「……はい」
「……ゼロスは……」
「はい?」
「ずっとそこに居てくれたの?」
「あ……いえ。ずっと、では……リナさん達が寝てからなので、数時間ほど……です」
「そう……でも、それじゃあ疲れたでしょう。私はもう大丈夫だから、ゼロスも休んで……」
「嫌です」
微笑み告げた、その途端。
返ってきたのは、それまで歯切れ悪く答えていたとは思えぬほどの、キッパリとした即答だった。
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