「───っ!?」
戸惑いに目を見開くゼロス。
その間、数秒。
彼が放心しているのを確認した私は、ゼロスのうるさかったソレから指を離した。
そして彼が正気に戻る前に、私の言い分……いや、本音を口にする。
「……これ以上、ゼロスに迷惑かけたくなかったのよ」
「………………は?」
それが、私の正直な気持ちだった。
ここ最近の話だけでも、ゼロスには散々迷惑かけたのだ。
魔法が使えなくなった時に助けてもらったり、亡くなったアルフレッドさんをお城に運んでくれるよう頼んだり。
山道で手を引いてくれたり、睡眠不足の時に膝を貸してくれたり……。
上げればキリが無い程、面倒を掛けてしまっている。
そんな状況で、ゼロスにこれ以上の負担を掛けたくなかった。
「だからゼロスが嫌いとか、そんな事は一切ないの」
そう説明すれば、彼は一瞬ポカンとした後、うつ向き肩を震わせた。
怒りに震えている……という訳ではなさそうだが?
思いも寄らない反応に、心配になる。
「……ゼロス?」
「……く……っ」
「……く?」
「くっくっくっくっくっ……」
思わず声をかけると、何故かゼロスは笑っていた。
いや、笑いを堪えていた。
「あの……もしもしゼロスさん?」
「はっはははっ」
笑いを堪えきれなくなったのか、体を『く』の字に折り曲げて悶えるゼロス。
唖然とする私の傍らで、彼はなおも笑い続ける。
この状況をどうしていいか分からず、私はしばし言葉を失った。
その状況を脱したのは、ゼロスが笑いから解放されてから。
「くくっ……僕としたことが」
「……あの?」
何やら一人で解決しているみたいだが、コチラにしてみれば全く状況がわからない。
再度声をかけると、ようやく私に気づいたのか、ゼロスはいつもの笑みを浮かべて言った。
「あぁ、すみません。僕の事は気にせずユウさんは眠って下さい」
「気にせずって……いや、それよりもずっとここに居るつもりなの?」
「はい♪」
「……だから……さっきも言ったけど、これ以上迷惑をかけたくないんだってば」
「忘れたんですか? ユウさんは僕に貸しがあるんですよ?」
疲れを滲ませた私の言葉に返ってきたのは、余裕を含んだものだった。
どうやらいつもの調子に戻ったようではあるが、これはこれで気が抜けず、私は小さく溜め息をつく。
「……勿論覚えてるよ」
「ならユウさんに拒否権はありませんよね?」
「は?」
「この看病で貸しはチャラだと言ってるんです」
今度こそ、開いた口が塞がらなかった。
何を言い出すかと思えば、その理屈はどうだろう?
これが、逆の立場なら分かる。
私がゼロスの看病をするというのなら。
けれどそうじゃない。
ゼロスは私の看病をしたいと言っているのだ。
本気なのかと、まじまじと彼の顔を見るが、ゼロスは至って真剣だった。
「……ゼロスは本当にそれで良いの?」
「それが良いんです」
ニッコリと、キッパリと。
そこまで言われてしまえば、私に反論の余地は無くなってしまう。
……前にゼロスから変わっていると言われたことがあったが……。
「……ゼロスも十分変わってるよ」
言って私は苦笑を浮かべたのだった。
あとがき
異色───。
自己中な世話焼き神官。
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