「全く……一筋縄じゃいかないだろうとは思ってましたけど、そう来るとは思いませんでしたよ」
「僕もまさか、あぁ来るとは思いませんでした」
疲れた様に呟くと、目の前の彼はポリポリと頬を掻きながら苦笑していた。
「それにしても、ものの見事に一杯食わされました。流石は謎の神官ですね」
「ユウさんだって負けていないでしょう」
「いえいえ、ただのしがないパシリです」
「まぁ、それを言うなら僕も同じ様なものですが……」
そこまで言って私達は顔を見合わせ、
そして笑った。
「ふふ……それじゃあ、謎のパシリ同士」
「そうですねぇ、一時腹の探り合いは休戦しますか」
言って私達は静かなティータイムを、
どごおぉぉんっ!!
…………ぇ゛!?
過ごすことは出来なさそうだった。
「おやおや、何やら物騒な事が起きたみたいですねぇ?」
「物騒って……」
「どうやら低級の魔獣が街を占拠してるみたいです」
ゼロスが指し示す方を見てみれば、通りの向こうに黒いスライムみたいな魔獣の姿がわんさかあったりする。
確かにこれは物騒だ。
いくら低級とは言え、一般人にしてみれば脅威であることに違いない。
私は横に置いてあった杖を手にすると、一も二も無く走り出していた。
それに続くようにゼロスも駆けて来る。
「折角の時間が台無しですね」
「そうですね。ユウさんとはまた今度、ゆっくりお話したいものです」
「ふふっ。今度は最初から腹の探り合いは無しの方向でね」
「考えておきましょう」
「前向きにね」
「はい……では後程」
「ん」
言って私達はふた手に別れた。
きっと彼はこの魔獣達を真面目に退治するつもりはないだろう。
それを証明するように、振り向き見た先には最早彼の姿はない。
───けれど。
それでも何故か。
何故か私の心は軽やかだった。
『ユウさんとはまた今度、ゆっくりお話したいものです』
どこまで本気か解らないゼロスの言葉に、
心踊らせて……───。
あとがき
後程=また後でお目にかかりましょう。
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