「……何してるんです?」
「いいんです……どうせ、僕なんか……」
「いいの? じゃあ……」
「ちょっ! ユウさぁん!」
さくっと立ち去ろうとしたユウに、ゼロスが情けない声を上げる。
コイツは……ほんとーにさっき『ヤツ』を倒したのと、同一人物なんだろうか?
いや、『人物』じゃないけど。
まだひんやりとした感触が残る背中が、妙に虚しく思えてしまう。
「冗談ですよ」
微笑んだユウはしゃがみ込み、ゼロスの顔を覗き込んだ。
「何か、私にして欲しい事ありますか?」
「……え?」
「助けてもらったようなので、そのお礼という事で」
ユウの言葉にゼロスはしばし迷った後で、ためらいがちにこう言った。
「……次の街に着いたら、一緒に買い物にでも行きませんか?」
「……え?」
驚いた表情を見せるユウに、途端にゼロスは弱気になる。
「ダメ……ですか?」
「ダメじゃない、けど……そんな事で良いの?」
「そんな事が、いいんです」
きっぱりと言い切るゼロスに、ユウは小さく微笑んだ。
「じゃあ、次の街に着いたら、ね」
にこぱっ!!
その瞬間、
ゼロスが満面の笑みを浮かべた。
いつもの『腹に一物の微笑』ではなく、
キラキラと輝くような笑顔。
例えばゼロスに尻尾があったら、
今はちぎれんばかりにパタパタと振っているだろう。
そうな風に考えて、ふと思う。
あんな顔が出来る時点で、魔族失格なんじゃないだろうか?
……と。
「まったく……」
あたしは、ガシガシと頭を掻きながら呟いた。
『ゼロスはユウを傷つけない』
何故、そう確信したのか分かってしまったのだ。
魔族のクセに。
人間のクセに。
この2人から感じる『絆』のようなモノ。
あたしの中の常識…だけじゃなく、
この世の中の常識を、覆す事になる2人の関係。
心がそれを感じ取り、
頭がそれを否定していた。
そんな事があるハズがない、と。
「どうした? 難しい顔して」
「ガウリイ……」
自称保護者を見上げると、何故か安心感に包まれる。
難しい顔を、
してたのか、あたしは。
それは…何故?
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