僕達の視線のすぐ下で、ユウさんは静かに寝息を立て始めた。
白いビキニという、あまりにも無防備な格好で。
『………』
「…見ないで下さい」
「なっ!? 別に、俺は…」
あからさまにうろたえるゼルガディスさんが腹立たしい。
顔をすっぽりと覆っているくせに、わずかに露出している目元だけで、
その顔が真っ赤に染まっている事がわかってしまう。
「ゼルガディスさんのえっち」
「何がだっ!?」
「アメリアさんに言い付けますよ」
「だから何がだっ!?」
いや、腹立たしいのはゼルガディスさんだけじゃなく。
日頃、宿の部屋で無防備な姿を見せるのは『僕に対して』だけだと思っていたのに。
人目のある場所で、ゼルガディスさんもいる状況で、
こんなにも無防備になれてしまうユウさんにも、僕は少なからず苛立っていた。
ユウさんを挟み、顔を突き付けるようにして、言い合いをしていると、
ふいに、僕の髪と、ゼルガディスさんのフードが横から引っ張られる。
『…!?』
「……うる、さい」
どこかぼんやりとした不機嫌なその表情に。
僕は焦って、ゼルガディスさんを逆方向から引っ張った。
「すいません…静かにします」
「…ん…」
あ、危なかった。
瞳を閉じたユウさんを見て、ほう、と安堵の息を吐く僕を、
ゼルガディスさんが不思議そうに見ている。
僕は、ワザと怯えた顔をして、ゼルガディスさんにこう告げた。
「寝ぼけているユウさんは危険なんですよ」
そう。
あの表情とあの台詞。
その直後には思いもよらない行動に出るのだ、彼女は。
いきなり優しくキスしてきたり、
突然胸元に抱きしめたり。
僕が相手ならいい…と言うか、大歓迎だけど。
僕の目の前で、ゼルガディスさんを相手にそんな事をされてしまったら、
今度こそ僕は立ち直れない。
…ダメージが大き過ぎて滅びてしまうかもしれない、と本気で思う。
でも、それを知らせるつもりはないので。
敢えて『違う意味』に取れるように告げた僕の思惑通り、
ゼルガディスさんはやや身を引きながら、
「そ、そうか…」
と呟いた。
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