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「え!?その…ユウ‥さん…?」


そんな行動に動揺の色が隠せないゼロス。


「ごめんね」


「ぇっ‥‥」


力を込めて抱きしめる。


「今までこんなに冷たいところに置いてけぼりにしてごめんね」


「……っ」


「今だけは温もりを感じて欲しい、な」



‥‥‥私の体で良いなら‥‥‥



ゼロスが普段感じることの出来ない温かみを、私の体で感じられるのなら、精一杯抱きしめようって思った。


私の肩にしがみつくゼロスの手に今は不思議と気持ち悪さを感じなかった。
それは子供相手とか違和感があるからとかってシフトチェンジしたからじゃない。

ゼロスを抱きしめてるって、温かさを与えるんだって考えたら、
私は‥‥‥








  わ た し は……――



















「‥‥あれ?」




気が付けば、目の前には正真正銘のゼロスの顔と目が合った。



ぱちくりとまばたきをすれば返してゼロスもまばたきをする。


「もど‥った?」


「そー…みたいですね」


24時間なんて嘘。
実質10時間もったのかが疑われる。

「結局未完成な薬だけに、時間も効き目も未完だったみたいだね」

安心した、と付け加える前に真っすぐ見つめるゼロスの顔がそこにはあった。


「ユウさん」


いきなり呼ばれて、びくりと体が反応する。


「な、なんでしょー…?」


そう聞けばゼロスはいつもの笑顔に戻って言う。



「続き、します?」


「ハイ?!」


そうしてギュっと抱きしめられた。


「僕まだ温もりを感じてる途中だったんですけどー」


そう子供っぽく言い放つ。


(あぁ‥ほんとに子供だったわ‥)


ため息を着くより早く頭を悩ませた。

そう言えば何かしら反論なり、おちょくりなりが来るだろうと思った『続き、します?』が、実際は、彼女の対応は違った。

彼女は僕の頭をなでなでとしてから、背中に手を回し、リズムよくぽんぽんとなだめるようにたたいた。





「…………あの〜?
僕としては少し不機嫌になって頂いた方が嬉しかったりするのですが」


意外な彼女の行動にそう意地悪な言葉をかけてみた。


「もともとフキゲンだよ」


「ええ゛!??」


「でも今日だけだから」


驚きでユウを見るとむすっとした顔には似合わず、少しだけ頬を紅く染めながらそっぽ向いていた。


そんな彼女を見ていたら、なんだか居ても立ってもいられなくて…


「…、ゼロス?…」



彼女の肩に顔を埋めて今の表情で僕の気持ちを悟られないように隠れた。


愛しくて愛しくて…
温もりなんか、とっくに感じていたのに。
彼女と毎日一緒にいられるだけで、心が満たされてゆく。

僕のそんな気持ちに、貴女は気付いてくれているのかな…なんて思ったりもしたけど、今はどうでもよかった。


今この瞬間に、貴女がいる


それだけで、十分です















翌日。


「な、なんですとォオ!!?」


アメリアの悲鳴にも似た嘆きが宿中響いた。



「ど、どうした!?」


聞き付けたゼルガディス、私とゼロスは台所でたたずむアメリアを見付けた。


そこには涙目で訴える彼女のそばで見慣れた二人を見付ける。


「り、リナさんが‥リナさんが‥」


「リナがどうしたんだ!?」


肩を掴んで「しっかりしろ!」と揺さぶるゼルガディスに、ゆっくりと私とゼロスを指差した。


「?」


「僕たちに何かあるのでしょーか?」


そう言えば、アメリアは驚愕の一言を呟いた。


「リナさんとガウリイさんが、昨日のユウさん達みたいに入れ代わっちゃったんですぅうう!!!」


「「「えぇぇええぇ!!!?」」」



「誤って昨日のスープを二人して飲んじゃったみたいです…ぐすん」


「いくら腹が減ったからって盗み食いをするとは…」



そのゼルガディスの言葉にあたしの良心はチクリと痛んだ。
まさに昨日の私ではないか‥。



「あと1日はここにお泊りですね♪」


「…ゼロス?なんか楽しんでない?」


「ユウさんとまた一緒のお部屋で寝られるんだとおも…」


「そうねぇ‥体が戻ったことだし。今日から一人で寝ますか」


「そうそう一人で…ってぇえ゛!?」


「睡眠に関してはうるさいの、わたし。一人で寝ないと寝た気がしなくて」

そんなぁ、と近付こうとした瞬間にアメリアはゼロスの首襟をわしづかみにする。


「どうやって戻ったのか教えて下さい!!まだ24時間経ってませんよね!?」


「ど、どうやってって…。ユウさん、説明して下さいよォ」


「なに!?まだ24時間経ってなかったのか」


「私達に聞かなくてもだいじょーぶですよ。あと10時間もすれば効果切れますから」


そうあくびをすれば呆れたゼルガディスと困惑のアメリアの声がとぶ。


(リナさんとガウリイさんには調度良い薬になるかも、ね)


チラリとゼロスを見れば気付いた彼もこちらを見つめる。
にっこりと笑えば、彼は意外そうに笑いかけてくれる。


なんだか面白くなってしまう。
昨日、ゼロスのことが少しでも理解出来たからかな。
今のこの距離。
笑えば笑い返してくれる、
私の視線に気付いてくれる‥

‥‥‥うん、調度良い。


そんなわけで、次はリナさんとガウリイさんの苦労生活が始まるのでした。



「ユウさん!真剣に考えて下さい!!」


「…あ、はい」



end

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