───それから暫し。
私の軽い食事と、リナさん達のいつもの食事が終わった頃。
「ところで、お二人はこれからどうするおつもりなんですか?」
「うん? あぁ、どうってのはまだ決まってないんだけど、ここで待ち合わせしてんのよ」
「待ち合わせですか」
「そ♪ もうそろそろ来ると思うんだけど……お、噂をすれば」
彼女の言葉に入り口を見やると、これまた見覚えのある二人連れが現れた。
一人はリナさんより少し幼そうな、巫女姿の黒髪少女。
もう一人は、フードやマスクで顔を覆っている白尽くめの人。
どうやら待ち人と言うのは彼女達の事だったらしい。
「アメリア、ゼル、ここよ」
「すみません、遅くなっちゃって。うちの艦隊をここの港に入れる訳にはいかなかったもので」
「おれ達だけボートで上陸させてもらったんだ」
言ってゼルガディスさんとアメリアさんはコチラに視線を移し、
「って、ユウっ!?」
「ユウさんっ!?」
「こんにちは」
驚きの声を上げる彼女達に、笑みを浮かべながら挨拶をする。
それに対しアメリアさんは律義に挨拶を返してくれ、
「って、挨拶してる場合か」
「はっ!? そ、そうですよ! さっきまではリナさん達と居ませんでしたよね? どうしてここに?」
矢継ぎ早に問われ、私は苦笑を浮かべた。
そこにリナさんがサクッと答えてくれる。
「ユウとはさっきこの食堂で、偶然会ったのよ」
「そうなんですね、改めてお久しぶりです。ユウさん」
「お久しぶりです」
そんな短い挨拶を交わす私達を横目に、ゼルガディスさんがテーブルに積み上げられたお皿を見て小さく笑う。
「それにしても、各々元気そうだな」
「まぁね。相変わらずガウリイの剣を探して西東よ」
塔になったお皿の中に、私の分は含まれていないのだけど。
食事の量で判断しないで戴きたい。
そう抗議しようかと思ったのだが、リナさんの言葉に私は首を傾げた。
───ガウリイさんの剣?
ゼルガディスさんは内情を知っているのか訳知り顔で頷いている。
「ガウリイの腕に見合う剣は中々見つからんさ」
「……あの」
「うん?」
「ガウリイさんの剣と言えば光の剣、でしたよね?」
まさか伝説の剣を目の当たりにするとは思いもよらず、前回来た時に見た時には驚いたものだが……。
それを探しているというのだろうか?
しかし、それに対する答えは斜め上を行くものだった。
「あぁ、ちょっと色々あって光の剣は異世界に返したのよ」
「………………」
何でもない事の様に、あっさり告げられた言葉に、二の句が継げられない。
ちょっとで異世界?
返した?
疑問が浮かんでは消えを繰り返す───が。
……うん、何も言うまい。
深く考えたら負けだ。
自分をそう納得させ、それは大変でしたねと口先だけで言って話を終わらせる。
そんな面倒そうな事件、巻き込まれなくてよかった。
そう思いつつ、光の剣の持ち主だった当の本人を窺い見ると、何故か頭を抱えて悶絶していた。
「あ! えぇーと、ああああっ」
「ガウリイさん?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 思い出す! 思い出すから! ここまで、ここまで出かかってるんだ!!」
出かかってるって……何が?
意味が分からずリナさん達の方を見ると、何とも言えない視線をガウリイさんにそそいでいた。
「また忘れちゃったんですか!?」
「と言うか、リナがおれ達の名前呼んでたろ。ひょっとしてお前、記憶力退化してないか?」
「単に聞き逃してただけと思いたい……」
って、もしかしなくてもアメリアさんたちの事を忘れてる?
いや、まさか……。
でもガウリイさんだしなぁ。
と、そんな失礼極まりない事を考えていると、焦れたアメリアさんが声を大にして言う。
「もう! ガウリイさんてば、アメリアとゼルガディスさんです!」
「おお! そうだった、そうだった。アメリアとゼルガディスじゃないか」
晴れやかな笑顔でポンと手を打つガウリイさんには、悪気は一切見受けられない。
それを見て、ゼルガディスさんが「お前なぁ」と疲れた声を出す。
そんな様子のガウリイさんに、これ以上何を言っても無駄だと悟ったのか、アメリアさんが矛先をこちらに向けた。
「ま、まぁそれはそれとして。ユウさんはどうしてここに?」
「家出してきたんですって」
「家出っ!?」
私が答えるよりも先に、リナさんが呆れを隠しもせず肩を竦めながら答える。
事実その通りなので反論しようも無いのだけど、アメリアさんの驚きと、これまた呆れたと言わんばかりのゼルガディスさんの視線が突き刺さり痛い。
「……えっと、なので少しの間、ご一緒させてもらう事にしたんです」
苦く笑いつつも、これからの予定を話せば、それに異論を唱えたのは先程了承してくれたはずのリナさんだった。
「まぁ、それは全然構わないんだけどさぁ」
「けど?」
「またあの二人が連れ戻しに来るんじゃないの?」
「あの二人か……」
リナさんの言葉に、ゼルガディスさんはうんざりした様に呟いた。
あー、前回来た時やりたい放題だったからなぁ、ユーリ。
ディルはディルで無関心を貫いていたし。
ゼルガディスさんは苦手意識が強いかもしれない。
そう思いを馳せていると、ガウリイさんが不思議そうな声を出した。
「あの二人って?」
『………………』
うん、今の流れから行くと覚えてないよね。
それを思うと、よく私の事は覚えててくれたなぁ。
「えっと、ディルさんとユーリさんでしたっけ?」
「はい。まぁ、あの二人に関しては大丈夫です」
アメリアさんの言葉に頷きながら、彼らの事を思案する。
私に関する余程の事が無い限り、放っておいてくれるだろう。
「……たぶん」
「それは本当に大丈夫なのか?」
「おそらく?」
訝しげな表情のゼルガディスさんに、私は曖昧な笑顔で答える事しかできなかった。
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