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宇宙人みたいだ。
それが僕の第一印象。
細く華奢な腕。綺麗に整えられた眉と髪。唇に乗ったほんのり赤いリップ。顔を彩る化粧。高く通る声。フレグランスの香り。ワイシャツの上から分かる二つの胸の膨らみ。痣一つない膝小僧。今までこのクラスの誰も持っていなかったもの全てを持って現れた彼女がまるで違う星から来た宇宙人のように感じられた。女の子はこの学校にだっているしたまに話もするのに、何で彼女からはこんなにも不思議な雰囲気を感じるのだろう。
「初めまして、みょうじなまえです。親の仕事の都合でアメリカに住んでました。あ〜呼び方はご自由に。馴染めるか分かんないすけど頑張るんで適当によろしく」
へらり、と笑い教卓の前で自己紹介をする彼女から、僕は目が離せなかった。
▽▽
3限目の数学は担当の先生が出張で自習だった。騒がしい教室の中自習プリントを早々に終わらせた僕はみょうじさんと授業進度の確認をしていた。スラスラとプリントを埋めていた彼女はどうやら数学が得意らしい。
「ってかあたし頭悪くはないと思うよ。自分で言うのも何だけど」
ただ歴史系はねー、どうしてもねー。とパラパラ僕の日本史の教科書を捲る彼女を僕はまたじっと観察した。どちらかと言えば清楚系というよりギャルというやつなのだろう。彼女の顔にはハッキリとした化粧が施されている。また女の子らしい女の子、というよりは所々男勝りな性格が伺える。目つきは、あまり良くないと思う。くのたまみたいな女特有の怖さより気の強さと見た目の威圧感を感じる。
「……あたしの顔、なんか付いてる?」
訝しげな顔をするみょうじさんにハッとする。「何でもないよ」と取り繕えば彼女はふぅんと興味なさそうな返事を寄越してまた教科書に視線を戻した。あ、睫毛、長いな。彼女の観察は続けつつ会話をする。
「数学と英語はまぁ問題ないかな。数学は向こうのが進んでたし英語は言わずもがな。歴史も暗記系嫌いじゃないから何とかなると思う」
「凄いね。みょうじさん頭良いんだ」
「黒木クンもじゃないの?委員長なんだし」
「委員長は頭が良い理由にはならないよ」
「あー、固定観念ってヤツ?委員長イコール頭が良いっていう方程式。てかこのクラスやばいの?成績」
「みんなで総合100点取ったことあるよ」
「……黒木クンその内の何点だったの?」
「90」
「わぉ。すげぇな」
「あのときはね、流石に土井先生は泣いてたよ」
「土井ちゃんカワイソ〜。あたしがこのクラスの平均点上げてやろう頑張ろう。……黒木クンあたしのこと嫌いっしょ」
「へ?」
余りにも唐突な問いかけに間抜けな声が出た。真っ直ぐな彼女の目と視線がかち合う。周りには聞こえてなかったみたいで相変わらずガヤガヤと騒がしかった。
彼女にたまらず聞き返す。
「何でそう思うの」
「勘」
「勘って……」
苦笑いするも彼女は大真面目な顔をして「女の勘は当たるのよ」と続ける。嫌い、か。好きか嫌いかと言われれば、
「嫌いではないよ」
「でも苦手?」
「うーん……宇宙人みたいだなとは思う」
「ハァ?」
「でもそれはみょうじさんも同じでしょう」
ズバリ言い当てれば僅かにみょうじさんの肩が揺れた。
「みょうじさんだって、僕たちが宇宙人みたいに見えるんじゃない?」
今朝僅かに引き攣った彼女の頬を僕は見逃さなかった。「昔」に鍛えられた忍者の観察眼だ。他の何人かだって気づいているだろう。いくら彼女が取り繕うたって無駄なのだ。
「…………、確かにね。ヘンテコなクラスに来ちゃったなぁとは思ったわ。成る程宇宙人ね、しっくりきた」
「素直だねみょうじさん」
「黒木クンは目敏いね」
そう気だるそうに笑う彼女も、僕たちも、互いを受け入れるには時間がかかるのだろう。
「でもね、うん。嫌いじゃないよ」
そう言ってみょうじさんはまたへらりと笑った。
宇宙で僕と握手