アンナチュラル/中堂3


「ん。」

「え、あ、ありがとうございます。」

玄関のドアが開くと同時に手渡されたのは白い小さな紙箱。箱の一番上に、お店の名前が書かれたシールが貼られていた。そのお店の名前を見て思わず箱を落としかけたが何とか死守した。

「な、中堂さん!これ、どうしたんですか!?」
「買った。」
「買ったのは分かってます!このお店すごく人気店なんです!平日だってお店の外まで行列ができるって有名なんですよ!」

靴をぬいでリビングへ続く通路を進んでいく中堂さんの後を追いかける。中堂さんは何も言わない。

このお店はテレビや雑誌でも何度も取り上げられてる超人気店だ。ケーキの販売数自体も限られてるらしく、行列に並んだって手に入らないこともあると噂だ。
私ですらあの行列は尻込みしてしまうのに…。

「あの列に並んだんですか?中堂さんが?」
「………。」

ぴたりと中堂さんの足が止まる。
きっと無言は肯定ってことでいいんだよね。

人ごみや行列が苦手な彼が、私のために並んでくれたという事実がただただ嬉しい。表情は一切見えないけど、背中から”どう答えたらいいかわからない”みたいな中堂さんの戸惑いを感じた。
彼は言葉での感情表現は苦手だけど、それ以外の部分から感情がにじみ出てる。そういう彼が愛しくてたまらない。

そっと中堂さんの背中に手を添えた。

「系さん、ありがとうございます。とても嬉しいです。」

身を寄せるとトクントクンと少しだけ早い鼓動が聞こえた。

「早く食え。」
「ふふ。はい…!一緒に食べましょうね。」

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