黒田管理官


早く帰りたい。

今日だけで何度そう思ったことだろうか。
隣に立つ大柄な男、黒田兵衛を横目でにらみつけたが、私をここへ連れてきた当の本人はそしらぬ顔でシャンパングラスに口をつけていた。

(なによ、気づいてるくせに)

「ノンアルコールなんでしょうけど飲みすぎないでくださいよ」

私たちは今、結婚パーティの会場にいる。新郎新婦両者ともに警察官なために、招待客の半数以上が警察関係者というなんとも強面ぞろいのパーティだ。

デコルテと腕まわりがレースになったシックなデザインのワンピースだ。
店頭で、ネイビーとアイボリーの2色で悩んでいた私に「どっちも買えばいいだろ」と黒田さんは言ったが、悩みぬいた結果ネイビーを選らんだ。(こっそり値札を見たら、文字通り目が飛び出そうな値段だった。)

「そちらは管理官のお嬢さんですか?」
「…あぁ」

パーティが終わって帰りの車に乗っても、さっきのやりとりが頭から離れなかった。

「いつから私はあなたの娘になったんでしょうね?」 
「場を凌げたらいい」
「まったく」

あの人の目には、私と黒田さんは親子に見えた。
実際、私はこの人にとって何なんだろう。
部下、家族、友人、どれにも当てはまらない。
恋人のようなことは一応してるけど、向こうはそうだと思ってない様な気がするし。
恋人っていうか愛人?囲い女?

「はぁ…」

やめよう。深く考えるのは辛いだけだ。

「何を考えている」
「いえ、別に」
「」

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