北村一輝1


【刑事パロ】

馬乗りになってきた男が拳を振り上げる。その手には鋭く光るサバイバルナイフが握られていた。

「んーっ…!」

私の両手は縄で縛られて動かせない。死を覚悟してぎゅっと目を瞑る。
もう駄目だ。そう思った時、頭に浮かんだのはあの人の顔だった。

もう一度…会いたかったな。先輩。

「おい」

男が手を振り下ろそうとした瞬間。低い声が倉庫内に響く。
私が会いたくて会いたくてしょうがなかった人の声だ。

「その汚ねぇ手を…離せ!」

勢いよく繰り出された蹴りが犯人の頭を弾き飛ばす。
すかさず犯人の身体に飛び乗り、手錠を左手とすぐ近くにあった柱にそれぞれかけた。
振り返った先輩の表情は焦っているように見えた。
少し急いたような速足で私に近づく。

身動きのとれない私の体を抱き起こし、一度強く抱きしめた。
そして私の口を塞いでいたガムテープを一気に引き剥がした。

「せ…先輩…」

「遅くなった」

私の顔を見ずに、転がったナイフを拾い、それで縄を切る。
少しくらいこっちを見てくれたっていいのに…。

「先輩…来てくれて…ありがとう」

あぁ、とそっけない返事だけが返ってくる。
きつく縛られていた縄の痕を、先輩は何度もやさしく撫でる。

「先輩」

「こっち見てくれないの…?」

一瞬の間。一つ深いため息をついて、先輩が顔を上げる。
いつもはきりっとかっこいい眉が、珍しく垂れ下っていた。
初めて見る表情に、私はとんでもないことをしてしまったと気づいた。

「お前が無事で良かった」

私の無事を確かめるように手首の痕に口づけた。

「心配かけてごめんね一輝さん」

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