01

北川第一から青葉城西へ半分以上が受験するから入学しても、あまり変わらない。
あ、でも、金田一とクラスが離れた。まぁ、部活に行けば嫌でも会うからクラスぐらい違ってもいい。

朝、教室に入れば「国見、おはよ!」と中学の時同じクラスだった人が挨拶をするので「はよ」と言って席に座る。授業を聞いて、寝て、ご飯食べて寝て、部活の時間。

「おーい、国見、部活いくぞ」
「ん」
「お前、また寝てたのかよ」

毎日クラスが違ってもわざわざ迎えにくる金田一へ欠伸で返事をして部室へ向かう。

「あーぁ、もう!岩ちゃん、なんで怒ってるの!自分がモテないからそうゆうの良くないヨっ!」
「おい、誰が校内でナンパしろって言った」
「だって、ほら、及川さ〜んって呼んでくれるの嬉しいじゃん?」

騒がしい男子バレーボール部の部室へドアをガチャっと開けて「失礼しまーすっ」と自分のロッカーに荷物を入れて着替えさっさと部室を出たい。少しでも部室に長くいると「ねぇ、どうおもう?」なんて及川さんに話を振られる。めんどくさい。

「あ、金田一!」
「っはい!」
「一年生のマネージャーもっとほしいよね?ゆりちゃん、一人じゃ大変そうだよね?」
「…まぁ、大変だけど…大半お前のせいだろう?」
「え、俺なの?」

よかった。今日は俺じゃない、金田一頑張れ。一年生のマネージャーをもっと増やしたいと言う話をしている及川さんと捕まった金田一、と怒っている岩泉さんを置いて、体育館へ向かうと、男子バレーボール部のマネージャーが練習の準備を始めていたので「こんにちは」と挨拶をして体育館の入り口へ進むと「あ、国見くん」と呼び止められた。

「うちの主将知らない?」
「…部室にいました」

そう答える「あいつぅ〜っ!!」と手に持っているスクイズボトルがボコッと音を立てて潰れた。三年生マネージャーの高柳先輩は隣にいた一年マネージャーの花篭に「ちょっと、ここお願いしてもいい?」と託して、主将を迎えに行った。マネージャーも大変だなぁって他人事のように、体育館へ入って準備をそれなりに手伝った。

「お疲れさま」
「…ありがとうございます」

練習中もスターティングメンバーで行う事が多いので三年生の高柳先輩からタオルを受け取る事が多い。何回か喋っているけど「沙織先輩、可愛いよな」って言われても俺にはわからない。矢巾さんは関わりの少ない「いや、俺は花篭のが可愛いかな」と見ていた。

部活が終わると外はもう日が落ちている。

「金田一、国見!花篭の事ちゃんと、送ってやれよ」
「はいっ!」
「…はあーい」

岩泉さん達は、高柳先輩を送って行き、二年生では花篭が気を使ってしまうといけないと言う岩泉さんの優しい配慮によって、家が近い俺たちが送って行くことになった。「ごめんね?」と謝っていたのも一週間も続ければ、「よろしくおねがいします」に変わる。俺も金田一も花篭も、先輩がいるときは三人で帰らなきゃ後がめんどくさい、と理解した。

金田一、花篭、俺と挟んで歩くと同じクラスの二人で会話が弾む。

「金田一、数学の宿題忘れないでね」
「あれ?提出明日だっけ?」
「そうだよ!また、当てられちゃうよ」
「うぅ〜、それは勘弁。当てられたらまた教えてくれよ」
「宿題やれば狙われないよ!」
「いや、やる気があっても出来ないんだよなぁ」
「…金田一、バカだもんね」
「おい、国見っ!もっと言い方があるだろう」
「私も数学得意じゃないけど教えれそうな所は応えるから連絡して?」
「まじ?助かるー、ありがとうな」

そうこうしていると花篭の家で前で「ありがとう、また明日」と言ってグレーのドアが閉まったのを確認して俺らは二人で歩いて帰った。

帰ったら風呂入って、晩飯を食べて、部屋に戻って宿題して、明日の用意を素早く済ませて、ベッドにダイブ。もう絶対動くものか、と気持ちで枕に顔を押し付けて「はぁ〜ぁ」と息を吐く。
帰ってきて部屋に荷物を置いた時にベッドにある充電器につなげた携帯を手探りで掴み、画面をみると≪21:23≫と表示されていた。まだ、か。

携帯から手を離してまた枕に顔を押し付けて、このまま寝てしまうってもおかしくないって程疲れているのに、まだ眠れない。部活の時の十分休憩に比べたら七分も短いのに…休憩よりも時計の進みが遅く感じる。長い七分も経過して、三分が経過した。つまり十分休憩と同じ時間が経過した時、携帯が鳴った。名前を確認する事なく通話ボタンを押した。


「もしもし、ちょっと遅くなっちゃた、ごめんね」
「別にいいよ」
「金田一に数学教えてたら遅くなっちゃった」
「…うん、知ってる。ねぇ、ゆり」
「な、なんですか?」
「また、敬語。慣れたら?」
「ッと、突然呼ぶのは良くないよ、国み「なに?」」
「ーーーっ、英くんっっ」

高校に入ったらそれなりに普通の恋人同士に出来ると思っていたけど、なぜか付き合っていることを言えず入学して一週間が経った。
クラスは違う、同じ部活でも関わる事が少ない。だいたいこの時間にやっと話せる。

「矢巾さんがゆりの事、かわいいって」
「矢巾さんは女の子だいたい可愛いって言うよ」

分かっているけど、何も知らないから俺の隣でゆりを舐めるようにみる目が嫌だった。

「及川さんってゆりちゃんって呼ぶよね」
「うん、前も聞いた」

部活中でも、そう呼ぶ及川さんが羨ましかった。

「次の月曜日、うちね」
「分かったよ!じゃあ、もう遅いから寝よか」
「ん」

「おやすみなさい」と言うゆりに無言を貫き通すと「どうしたの?寝ちゃった?」と慌てだすので、「足りない」と返すと、受話器で赤面しているゆりの顔が想像できる程、震えた声で「おやすみなさい、英くん」と言った。

「うん、おやすみ、ゆり」